PARCO Produce 2021『首切り王子と愚かな女』 | 新・法水堂

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PARCO Produce 2021

『首切り王子と愚かな女』

 

 
【東京公演】
2021年6月15日(火)〜7月4日(日)
PARCO劇場
 
作・演出:蓬莱竜太
美術:松井るみ 照明:吉川ひろ子 音楽:阿部海太郎 音響:原田耕児
衣裳:西原梨恵 ヘアメイク:河原陽子 演出助手:須藤黄英 舞台監督:弘中勲、林和宏
宣伝:ディップス・プラネット 宣伝美術:東學 宣伝写真:渞忠之
プロデューサー:尾形真由美 制作:冨士田卓、大迫彩美、徳永のぞみ 製作:川瀬賢二
 
出演:
井上芳雄(第二王子トル/第一王子ナル)
伊藤沙莉(ヴィリ)
若村麻由美(永久女王デン)
高橋努(兵士長ツトム)
入山法子(王女ナリコ)
太田緑ロランス(近衛騎士、ヴィリの姉リーガン)
石田佳央(大臣ドーヤネン)
和田琢磨(兵士ロキ)
小磯聡一朗
柴田美波(召使)
林大貴
BOW
益田恭平
吉田萌美(召使)
 
STORY
雪深い暗い王国ルーブ。英雄であり人格者であった先王バルが早くに没して20年。女王デンは「永久女王」としてルーブを統治していたが、溺愛していた第一王子ナルが病に倒れてからは国のことを見なくなり、魔法使いを城に招き入れ、閉じこもるようになった。ルーブ国は統治者を失った国になっていた。国は呪われ、民は貧しさに疲弊し、反乱の気運が高まっていく。そこで城に呼ばれたのが第二王子トルであった。トルは幼い頃から「呪われた子」とされ城から遠ざけられていたが、反乱分子を鎮圧するために再び城に戻される。使命に燃えたトルは、反乱分子の首を次々に落とし「首切り王子」として恐れられるようになる。リンデンの谷に住む娘、ヴィリは死ぬことにした。これ以上、生きる理由が見当たらなかったからだ。最果ての崖にたどり着いたヴィリが目にしたものは白い空と黒い海と首切りの処刑であった。首切り王子トルは死を恐れないヴィリに興味を持ち、召使いとして自分に仕えるように命令する。城に連れられていくヴィリが耳にしたのは王子の歌であった。美しくも悲しい歌。ヴィリはトルに深く暗い孤独を見る。こうしてヴィリは召使いとして首切り王子に仕える日々を送り始める。そこに見たのは野心や愛憎、陰謀が渦巻く人間たちの姿であった。【公式サイトより】

蓬莱竜太さん、5年ぶりのパルコ・プロデュース作品。
 
劇場に入るとまず、舞台上がまるで稽古中のような装いで驚く。
中央には木組みの台が積み重なり、その周囲は透明なアクリル板で仕切られたブースが並び、各キャストの化粧台となっている。
 
決して悪い作品ではない。特に二幕に入り、身を挺してトルを守ったヴィリが第二王女になってからの展開は引き込まれるものがあったが、終盤にトーンダウン。蓬莱さんにしては粗い脚本で、井上芳雄王子の“世界中の呪いを消すような歌声”の持ち主という設定が活かしきれていないのが惜しい。
ちょっと何を描きたいのか、整理しきれてない印象も。
 
キャストは総じてよかった。
初めて出演舞台を観る伊藤“さりではなくさいりです”沙莉さんは身体能力も高く、小柄ながらも存在感があり、井上王子とのコンビネーションもバッチリ。
太田緑ロランスさんは、ヴィリの姉にして第一王子ネルとの出逢いがきっかけで近衛騎士となるも、トルに対して反旗を翻すという役どころをカッコよくも切なく演じ、ヴィリに対して嫉妬の炎を燃やす王女ナリコ役の入山法子さんもしっかり見せ場を作っていた。
若村麻由美さんの女王っぷりも期待通り。母親としての可愛らしさも垣間見せていた。
 
上演時間2時間29分(一幕1時間9分、休憩20分、二幕1時間)。