青年団『眠れない夜なんてない』 | 新・法水堂

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演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

青年団 第84回公演
『眠れない夜なんてない』
A LONG NIGHT IN THE TROPICS


【東京公演】
2021年1月15日(金)~2月1日(月)
吉祥寺シアター

作・演出:平田オリザ
舞台美術:杉山至
舞台監督:中西隆雄、小川陽子  舞台監督補佐:三津田なつみ
照明:井坂浩  照明操作:高木里桜
音響:泉田雄太  音響操作:秋田雄治  衣裳:正金彩 
宣伝美術:工藤規雄+渡辺佳奈子、太田裕子  宣伝写真:佐藤孝仁
宣伝美術スタイリスト:山口友里
制作:太田久美子、赤刎千久子、金澤昭

出演:
猪股俊明[客演](入居者・磯崎健一)
羽場睦子[客演](健一の妻・磯崎郁子)
たむらみずほ(健一の娘・磯崎好江)
岩井由紀子(同・磯崎保奈美)
山内健司(古くからいる入居者・三橋明)
井上みなみ(明の娘・三橋恵美子)
永井秀樹(入居者、現役ビジネスマン・杉原幸三)
能島瑞穂(幸三の妻・杉原(旧姓・清水)千寿子)
小林智(見学者・中岡誠司)
松田弘子(誠司の妻、千寿子の同級生・中岡(旧姓・高木)直枝)
村田牧子(ガイド・野間ひかる)
島田曜蔵(短期入居者・沼岡勇人)
井上三奈子(勇人の妻・沼岡まゆみ)
吉田庸(ビデオの配達人・原口充)
堀夏子(入居施設副支配人・町田弥生)

STORY
1988年、マレーシアの架空の日本人用保養地。定年移住をしてきた中高年の夫婦たち、父と母を久しぶりに訪ねてくる姉妹。退職後の安住の地を探しに来る夫婦と、それを迎える高校時代の友人。妙に明るい短期滞在者。娘と二人で暮らす寂しげな初老の男。様々な人々がここに集い、静かな時間を過ごしていく。熱帯のジャングルの中、聖域に住む蝶のように、死を待っている日本人たち。思い出される長い長い過去と、思いを馳せる残り少ない未来。リゾート施設のラウンジを舞台に、そこを通り過ぎていく人々の、砂上の楼閣のような生活を淡々と映し出す。【公式サイトより】

昨年、豊岡演劇祭2020でも上演された2008年初演作。
一部、キャストを変更してのツアー公演。

舞台はマレーシアの日本人向け入居施設のロビーのようなところ。段差のついたウッドデッキの下手側と真ん中に木製のテーブルに籐椅子セット、上手側はローテーブルに長椅子等。
奥の壁の中央部分がくりぬかれ、植物が生い茂る他、あちこちに観葉植物が置いてあり、南国の雰囲気を醸し出す。下手、上手サイドには白のカーテン。上手手前は張り出していて、プールなどがある場所へと続く。

今回、再演にあたって昭和の終わりの日々という設定が足された本作。それによって、一挙に現在の状況に似た作品として生まれ変わった感があるが(設定自体は1年半前には構想があったとか)、それだけではなく戦争の影もつきまとう。
還暦を迎える三橋の兄が戦地に赴いていたという話が出てくるけど、昭和の終わりなら戦争を体験した人がざらにいたんだよなぁ、当たり前だけど。かつて日本軍が占領した土地に日本人向けリゾート施設が作られているというのも何だかなぁという気がしてしまう。

固定された場所に行き来する人々の人間模様を描くという点では『東京ノート』に似た構造だが、特に大きな事件が起きるわけでもないのに飽きずに観られるのは脚本とキャストの力があればこそだろうなぁ。
初演から唯一同じ役の松田弘子さんと同級生にはとても見えない能島瑞穂さんが特によかった。新婚旅行ならぬ離婚旅行でなぜかイチャつく島田曜蔵さんと井上三奈子さんも楽しそう。笑

ところで配役表、杉原夫妻とか中岡夫妻とか妻の方が役どころが大きい場合でも夫の名前が先に来ているのはなぜなんだろう。

上演時間2時間。