『Mank/マンク』 | 新・法水堂

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演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

『Mank/マンク』

Mank

 

 

2020年アメリカ映画 132分

監督:デイヴィッド・フィンチャー

脚本:ジャlク・フィンチャー

製作:シーアン・チャフィン、エリック・ロス、ダグラス・アーバンスキー

共同製作:ウィリアム・ドイル、ピーター・マヴロメイツ

撮影:エリック・メッサーシュミット  美術:ドナルド・グレアム・バード
キャスティング:ラレイ・メイフィールド  音響監修:レン・クリス

音楽:トレント・レズナー 、アッティカス・ロス
衣裳:トリッシュ・サマーヴィル  編集:カーク・バクスター 

出演:ゲイリー・オールドマン(ハーマン・J・マンキウィッツ)、アマンダ・サイフリッド(マリオン・デイヴィス)、チャールズ・ダンス(新聞王ウィリアム・ランドルフ・ハースト)、リリー・コリンズ(秘書リタ・アレクサンダー)、トム・ペルフリー(弟ジョーゼフ・L・マンキウィッツ)、アーリス・ハワード(MGMルイス・B・メイヤー会長)、タペンス・ミドルトン(妻サラ・マンキウィッツ)、モニカ・ゴスマン(家政婦フリーダ)、ジョゼフ・クロス(チャールズ・レデラー)、サム・トラウトン(プロデューサー・ジョン・ハウスマン)、トビー・レオナード・ムーア(デイヴィッド・O・セルズニック)、トム・バーク(オーソン・ウェルズ)、フェルディナンド・キングズリー(MGMプロデューサー・アーヴィング・タルバーグ)、ジェイミー・マクシェイン(シェリー・メトカーフ)、ジャック・ロマノ(シドニー・ペレルマン)、アダム・シャピロ(ジョージ・S・カウフマン)、ジョン・チャーチル(チャールズ・マッカーサー)、ジェフ・ハームズ(ベン・ヘクト)、デレク・ペトロポリス(エディ・カンター)、ショーン・ペルソード(ハーマンの友人トミー)、ポール・フォックス(監督ジョーゼフ・フォン・スタンバーグ)、ジェイ・ヴィルウォック(エキストラ俳優C.C.)、ルー・ジョージ(門番エド)、ジョン・リー・エイムズ(C.C.の仲間グレイディ)、ビル・ナイ(作家アプトン・シンクレア)、レヴェン・ランビン(シェリーの妻イヴ)

 

STORY

1940年、24歳のオーソン・ウェルズはRKOから映画製作権を与えられ、脚本家にハーマン・マンキウィッツを指名する。自動車事故で脚を骨折したハーマンはヴィクターヴィルの保養施設に滞在しながら、60日間で初稿を書き上げるように言われる。口述筆記を担当するイギリス人のリタは主人公のモデルが新聞王ウィリアム・ハーストだと気づく。1930年、パラマウントで弟ジョー、シドニー・ペレルマン、ジョージ・カウフマン、チャールズ・マッカーサー、シェリー・メトカーフ、ベン・ヘクトとともに新作のアイディアを練っていたハーマンは雑誌ライターのチャールズ・レデラーを呼び寄せる。そんな折、チャールズの誘いでMGMの撮影現場を訪れたハーマンは、チャールズの叔母でもある女優マリオン・デイヴィスと再会、そこでマリオンの愛人ハーストに紹介されたのだった。プロデューサーのハウスマンはハーマンの書いた脚本が詰め込みすぎで分かりづらいとダメ出しし、ジョーは脚本の内容について兄を心配する。


デイヴィッド・フィンチャー監督が父ジャック・フィンチャーさんが書き遺した脚本を映画化。

Netflixにて鑑賞。

 

タイトルのマンクは主人公ハーマン・J・マンキウィッツの愛称。

『三人の妻への手紙』『イヴの総て』で2年連続アカデミー監督賞を受賞したジョゼフ・L・マンキウィッツ監督は実弟。ハーマンの方は本作でも描かれている『市民ケーン』で脚本賞を受賞している。

 

物語は1940年、ハーマンが『市民ケーン』の脚本を書く過程を軸にして、主人公のモデルとなった新聞王ハーストとその愛人マリオンとの過去を回想で描く。

1930年代のハリウッドの様子なども垣間見ることができるが、脚本家チームがアイディアを出し合うあたりはニール・サイモン作『23階の笑い』を思い出させる。

1933年、MGMのメイヤー会長の誕生パーティーがハースト・キャッスルで開かれた際には、ナチスドイツの話題とともにカリフォルニア州知事選に出馬した作家アプトン・シンクレアが批判の対象となる。ハーストやメイヤーは社会主義者のシンクレアを毛嫌いしており、後日、ハーマンも反シンクレアのための寄付を迫られる。ハーマンの仲間であるシェリーもシンクレア落選を狙ったプロパガンダ映画を作らされるのだが(シェリーは創作上の人物)、こういったあたりもハーマンがハーストを主人公にした『市民ケーン』を書こうとしたきっかけなのかもしれない。

 

デイヴィッド・フィンチャー監督にとっては父の脚本を映画化することは念願だったのであろう。こういう題材をやれるのもNetflixだからこそ。

当時の雰囲気を出すためにモノクロにするだけではなく、フィルムチェンジのためのマーク(右上に表示される●)をわざわざ入れているあたりにもこだわりが感じられた。

 

一つ注文をつけるとすれば、ゲイリー・オールドマンさんは現在62歳で、55歳で亡くなったハーマンを演じるには年を取りすぎだろう。『市民ケーン』執筆時で43歳、1930年で33歳だからねぇ。