《豊岡演劇祭2020》Q『バッコスの信女―ホルスタインの雌』 | 新・法水堂

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演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

Q『バッコスの信女―ホルスタインの雌』

 

 

2020年9月11日(金)~13日(日)

城崎国際アートセンター

 

作・演出:市原佐都子

音楽:額田大志(ヌトミック/東京塩麹)  舞台監督:櫻井健太郎  舞台美術:中村友美

照明プラン:魚森理恵(kehaiworks)  音響プラン:稲荷森健

映像プラン:浦島啓  ドラマトゥルク:野村政之  制作:山里真紀子
 

出演:

兵藤公美[青年団](主婦)

川村美紀子(獣人)

永山由里恵[青年団](主婦の飼い犬・ハワイ)

中川絢音[水中めがね∞](コロス)

コロス:Eri Liao、勝田智子、小口舞馨、塩澤嘉奈子、中西星羅、はぎわら水雨子、藤本しの、三島早稀、村上京央子、渡邉智美、渡邊悠視


STORY

一見ふつうの主婦、人工授精によって生まれた獣人、 去勢された犬、雌ホルスタインの霊魂たちによる合唱隊(コロス) が歌い上げる音楽劇。現代を彷徨う魂が奏でるドラマが、 ヒトと動物の境を揺さぶり、私たちの秘めた欲望を刺激する。【「Q」公式サイトより】


《あいちトリエンナーレ2019》で初演され、岸田國士戯曲賞を受賞した作品。

《豊岡演劇祭2020》での公演を収録したものをauスマートパスのマルチアングル配信にて。

 

広々した舞台の一部にリビングと奥にキッチン。リビングは下手側にテーブル、上手側にソファが置かれ、セットの左右にコロス用のパイプ椅子がずらり。

舞台奥には様々な画像や歌詞などを映し出すスクリーン。

 

何となく評判は耳にしていたけど、確かにこれは独特な作風。

多少手垢にまみれた表現で言えば、脳みそをかき回されるような感触。

冒頭、一見ふつうの主婦がテーブルにつくと、マスターベーションをさせなくするためにコーンフレークを発明したケロッグ博士や牛の人工授精のやり方、ハプニングバーでの経験、デンマークから10万円で取り寄せた精子の話などを30分近くも語り続ける(客席に向かって話しかけている体)。

その後、パピヨンのハワイを探しに主婦がはけると、12人の牛…もといコロス(白のトップスに黒のスカート)が現れて一列に並んで合唱を始める。

 

ここまではいわば長いエピローグで、その後、近所でパピヨンを見つけたというコート姿の女性がやってきてから本格的に物語が展開する。

その女性は女性同士の共同体で暮らし、神様から精子をもらって人工授精をしていると言い、主婦が牛に恨まれていて、牛を癒すためにバターマッサージをした方がいいと勧める。

主婦は宗教の勧誘かと警戒するが、その女性がコートをはだけると股間には巨大なペニスが。女性いわく、それはペニスではなく大きくなったクリトリスということで、このあたりから徐々に奇妙な世界観が繰り広げられていく。

エウリピデスのギリシャ悲劇が基になっているとのことだけど、どうやってこの作品の着想を得て発展させていったのか気になるところ。

 

川村美紀子さんはサイドを刈り上げにして、合唱隊とともに歌も歌えばダンスも披露(本職はダンサーだそうで)。カッコよろしいなぁ。

兵藤公美さん&永山由里恵さんの青年団コンビも、こういういつもとは系統の違う作品でもきちんと演じ切るからすごいよなぁ。

 

上演時間2時間25分。