『許された子どもたち』 | 新・法水堂

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演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

『許された子どもたち』

 

 

2020年日本映画 131分

脚本・監督・編集・プロデューサー:内藤瑛亮 
脚本・制作:山形哲生 
プロデューサー:田坂公章、牛山拓二
撮影監督:伊集守忠  照明:加藤大輝、山口峰寛

録音・整音:根本飛鳥  録音:小牧将人、南川淳、黄永昌、川口陽一

編集:冨永圭祐  音楽:有田尚史  サウンドデザイン:浜田洋輔、劉逸筠
助監督:中村洋介  制作:泉田圭舗、佐野真規

 

出演:上村侑(市川絆星)、黒岩よし(市川真理)、名倉雪乃(櫻井桃子)、地曵豪(樹の父・倉持武彦)、門田麻衣子(母・倉持絵梨夏)、三原哲郎(絆星の父・市川祐司)、相馬絵美(付添人・四宮美紀)、大嶋康太(加害者グループ・小嶋匠音)、茂木拓也(同・松本香弥憂)、住川龍珠(同・井上緑夢)、阿部匠晟(倉持樹)、野呈安見(樹の姉・倉持茜)、春名柊夜(蓮見春人)、池田朱那(宮台莉子)、津田茜(いじめグループ・佐々木円)、西川ゆず(同・村田鈴)、矢口凜華(同・三浦凛)、山崎汐南(同・藤野結)、清水凌(匠音と香弥憂の手下・高橋蒼空)、日野友和(動画配信者キャロル)、美輪ひまり(ボクシングを習っている小学生・丸山寧々)、山口友和(転校先の学校の担任)、岡本裕輝(裁判長)、宮田亜紀(刑事)、茶円茜

 

STORY

とある地方都市。中学一年生で不良少年グループのリーダー市川絆星(いちかわ・きら)は、同級生の倉持樹(くらもち・いつき)を日常的にいじめていた。いじめはエスカレートしていき、絆星は樹を殺してしまう。警察に犯行を自供する絆星だったが、息子の無罪を信じる母親の真理(まり)の説得によって否認に転じ、そして少年審判は無罪に相当する「不処分」を決定する。絆星は自由を得るが、決定に対し世間から激しいバッシングが巻き起こる。そんな中、樹の家族は民事訴訟により、絆星ら不良少年グループの罪を問うことを決意する。果たして、罪を犯したにも拘わらず許されてしまった子どもはその罪をどう受け止め、生きていくのか。大人は罪を許された子どもと、どう向き合うのか。【公式サイトより】


内藤瑛亮監督、『先生を流産させる会』以来の自主制作映画。

 

構想8年、しかも自主制作というだけあって(もちろん長ければいいわけではないけれど)、ワンシーンたりとも無駄にしていない。現代日本を語る上で避けては通れない重厚なテーマを扱いつつ、映画としての面白さにも満ちている。

 

タイトルは「許された子どもたち」だが、もちろん彼らは許されていないし、むしろ不幸なことに「許されてしまった子どもたち」とも言える。

バッシングは時とともに薄れていくだろうが(なんせ日本人は忘れやすいからねっ)、絆星はこの先も変わることはないだろうし、一生、樹の亡霊から逃れられることもないだろう。

それは、髪を短くして初めて樹の両親に謝罪に訪れた後も、現場で花を手向けていた緑夢(ぐりむ)に絡み、新たな標的を相手にしていた匠音(しょーん)と香弥憂(かみゅ)にも突っかかるあたりからも窺える(ところで不良少年グループが揃いも揃ってキラキラネームなところに監督の悪意を感じるな…笑)。

 

バッシングと言えば、加害者家族だけでなく被害者家族の家も同じように落書きをされ、張り紙をされているのが何とも日本的。

結局、彼らにとっては加害者だろうが被害者だろうが関係ない。事件の真相もどうでもいい。ただ、自分たちが叩いても許される人間を見つけ出し、叩くだけ叩いて鬱憤を晴らしたいだけなのだ。しかも正義を振りかざしているからタチが悪い。

最近、鴻上尚史さんと佐藤直樹さんの対談本『同調圧力』を読んだばかりなので、尚更そういった日本社会の歪みを感じずにはいられなかった。

 

中学生役、小学生役のキャストはワークショップを通じて決められたそうだけど、とりわけ主演の上山侑さんのふてぶてしい表情、眼光鋭い眼差しが素晴らしく、今後の活躍が大いに期待できる。

母親役・黒岩よしさんも『MOTHER マザー』の長澤まさみさんとは一味違った毒親っぷりで惹きつけられた。

 

エンディングクレジットを見ていて、撮影監督がロロの《いつ高》シリーズで撮影・編集を務めている伊集守忠さんでびっくり。昨日、vol.4『いちごオレ飲みながらアイツのうわさ話した』を観たばかりだったので。