『カセットテープ・ダイアリーズ』
Blinded by the light
2019年イギリス映画 117分
脚本・監督・製作：グリンダ・チャーダ
原作・脚本：サルフラズ・マンズール 脚本・製作総指揮：ポール・マエダ・バージェス
撮影：ベン・スミサード 美術：ニック・エリス 音楽：Ａ・Ｒ・ラフマーン
編集：ジャスティン・クリシュ 衣裳：アニー・ハーディング
出演：ヴィヴェイク・カルラ（ジャベド）、クルヴィンダー・ギール（ジャベドの父マリク）、ミーラ・ガナトラ（ジャベドの母ヌール）、ネル・ウィリアムズ（イライザ）、アーロン・ファグラ（ジャベドの友人ループス）、ディーン＝チャールズ・チャップマン（ジャベドの幼なじみマット）、ニキータ・メフタ（ジャベドの妹シャジーア）、タラ・ディヴィナ（ジャベドの従姉ヤスミーン）、ロブ・ブライドン（マットの父）、ヘイリー・アトウェル（クレイ先生）、デイヴィッド・ヘイマン（隣人エヴァンズ氏）、マーカス・ブリグストック（イライザの父ロバート・フランシス）、オリヴィア・プーレ（イライザの母）、スコット・フォラン（校内新聞アラン）、フランキー・フォックス（校内放送DJコリン・ハンド）、サリー・フィリップス（アンダーソン校長）、キット・リーヴ（マットの恋人エマ）、ジェイムズ・バランジャー（入国審査官）、ロナク・チャーダ・バージェス（10歳のジャベド）、ビリー・バラット（10歳のマット）
STORY
1987年。イギリスのルートンの小さな町で暮らすパキスタン系少年のジャベドは16歳。夏のアルバイトを終え、SONYのウォークマンで流行のペット・ショップ・ボーイズを聴きながら自転車を走らせる彼は、この9月からハイスクールに入学する。誕生日が同じ、幼なじみの少年マットは恋人ができ、日々充実した青春を楽しんでいる。だがジャベドは孤独に鬱屈を募らせていた。保守的な町の人からの移民への偏見や、パキスタン家庭の伝統やルールから抜け出したくてたまらない彼。特に古い慣習を振りかざす父親マリクには内心強い反発を感じていた。人種差別や経済問題、不安な政情に揺れる時代をジャベドなりに反映させた詩を書いているが、まだ本当の“自分の言葉”を見つけられずにいた。だがそんなある日、モヤモヤをすべてぶっ飛ばしてくれる、ブルース・スプリングスティーンの音楽と衝撃的に出会い、彼の世界は180度変わり始めていく―。【公式サイトより】
パキスタン出身のジャーナリスト、サルフラズ・マンズールさんの回顧録Greetings from Bury Parkを『ベッカムに恋して』のグリンダ・チャーダ監督が映画化。
回顧録のタイトルはブルース・スプリングスティーンさんのファースト・アルバム『アズベリー・パークからの挨拶』のもじり。その１曲目が「光で目もくらみ（Blinded by the Light）」で本作の原題となる。
舞台は1987年、サッチャー政権下のイギリスはロンドン郊外の町ルートン。
パキスタン移民の家庭に育った16歳のジャベドは、人種差別、父親が絶対の家父長制、不景気で退屈な田舎町といった現実から逃れるべく、作家を目指して詩を書き溜めている。
そんなジャベドが出会ったのが、ブルース・スプリングスティーン。
最初は“ボス”という愛称さえ知らなかったのだが、ループスから借りたカセットテープを聴いて衝撃を受ける。それが雷雨の夜というベタな演出ではあるが、大袈裟でも何でもなく、彼にとっては雷に打たれたようなものだったのだろう。
ジージャンを着たり、シャツの袖を切ったり、部屋中にポスターを貼ったり、パキスタン人の少年がアメリカ人のボスに染まっていく様は微笑ましいが、幼なじみのマットが「シンセは未来だ」と言うのに対し、マットの父とは意気投合するあたりも面白い（ロブ・ブライドンさんが橋本じゅんさんのよう）。
イライザという恋人もでき、クレイ先生からも文才を認められ、地元新聞に署名記事が載り、更には小論文がコンテストに入賞して、憧れのブルース・スプリングスティーンの故郷ニュージャージー州へと向かうジャベド。
順風満帆である一方、父親との対立を深めていき、従姉の結婚式を抜け出してゲットしたライブのチケットも破られてしまい、反対を押し切ってアメリカへと向かうのだが、最後には目がくらんでいた（blinded）自分に気づいて父親とも和解。
ブルース・スプリングスティーンさんの楽曲は好んで聴いてこなかったが、改めて音楽の力の凄さを感じさせてくれる作品だった。
ちなみに少年時代のジャベドを演じたのはグリンダ・チャーダ監督と脚本・製作総指揮を務めたポール・マエダ・バージェスさん（日系アメリカ人）の間に生まれた男女の双子の一人。