ポストゼロ年代演劇の新潮流
セミネールin東京
2019年12月16日(月)
SCOOL
レクチャー担当:中西理(演劇舞踏評論)
ゲスト:天野天街(少年王者舘)
中西理さんが数ヶ月に1度開催しているセミネールin東京、今回は天野天街さんがゲストということで初参加。
スクリーンに動画やサイトを映し出しながら、中西さんが天野さんに質問をしていくという形で進行。
まず最初に感想を述べると、貴重な話を聞けたり映像を見られたりした一方、あれこれ不満も残るイベントであった。
はじめに中西さんが少年王者舘について語るのだけど、その前に天野さんに一言もらいましょうよ、というのが最初の綻び。
以前、筒井康隆さんのトークイベントでも日下三蔵さんが挨拶も抜きに本題に入ったのに対し、筒井さんが「今回もたくさんお越し頂けありがとうございます」と挨拶し、「まずここから始めないと」とおっしゃったことを思い出す。
その後、ポストゼロ年代演劇との関わりということで、柴幸男さんの名前が挙げられ、ままごと『わが星』の冒頭部分を見ることに。
ところがYouTubeにアップされている音声のみのもの。いやいや、市販もされているんだから映像を用意しましょうよ、そこは(現在は品切れのようだけど)。
まぁその後、熊本で上演された天野さん演出版の『わが星』を見られたのはよかったけども。
あと、柴さんが王者舘の『夢+夜』に影響を受けて『わが星』を書いたという話の中で、「ゆめじゅうや」と読んだこともね……。即座に天野さんに指摘されていたけど。ちなみに天野さん自身の感想としては『それいゆ』の方が近いとのこと。
いちばん不満だったのは、結成当初のことを話していた天野さんの口から長谷川久さんの名前が出たとき。内心おおっ!と思っていたのだけど、中西さんは長谷川さんをご存知なく、どういう漢字を書くのかと聞く始末。いやいや王者舘を25年も観ていて長谷川さんを知らないなんてモグリもいいところですよ。
しかも天野さんが長谷川さんのことを「大きい存在」とおっしゃっていたのに、何の興味もなさそうにスルー。私も長谷川さんが活躍されていた頃を知らないので、もっと話を聞きたかったのに……。
維新派との合同公演『高丘親王航海記』の映像も流されたけど、ちょうど火田詮子さんが出ているシーンでねぇ(涙)。
澁澤龍彦さんの原作を使用することは七ツ寺共同スタジオの二村さんからの依頼だったとか。本物の牛を使って、臭いが強烈だったとも。
休憩を挟み、稲垣足穂さんの話題に。
小学校6年生の時、星新一さんのファンだった天野さんは文庫本巻末のリストに「元祖ショートショート」と紹介されていた稲垣足穂
さんの『一千一秒物語』を読んだんだとか。
足穂作品に感じた根源的郷愁が一番出したいものだとのこと。
ちなみに同じ小6の時、チャップリンのリバイバル特集「VIVA!チャップリン」があり、最初に『独裁者』を観てファンになったそう。これはちょっと意外かも。
2時間ほどでトークは終了したけど、終盤も何か意図があるのかないのかよく分からないまま王者舘のYouTubeチャンネルにアップされている映像を垂れ流していたし……(天野さん自身も見たことがないそうな)。
最後に天野さんが北村想さんを怒らせた話が聞けたのがちょっとした救いではあったけど、チラシにあった通り、もう少し天野さんの「演劇哲学を徹底解剖」して欲しかったところですな。