コトリ会議『セミの空の空』 | 新・法水堂

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演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

コトリ会議 演劇ツアー公演3回め

『セミの空の空』

 

【東京公演】

2019年12月11日(水)~16日(月)

こまばアゴラ劇場

 

作・演出:山本正典

舞台監督:柴田頼克(かすがい創造庫)  音響:佐藤武紀

照明:石田光羽  演出助手:要小飴  美術:竹腰かなこ

小道具:伊達江李華(小骨座)  衣装:松崎雛乃  

宣伝美術・撮影:小泉しゅん(Awesome Balance)

イラスト:牛嶋千佳  制作:若旦那家康

 

出演:

中村彩乃[安住の地/劇団飛び道具](小泉雪子)

浜本克弥[小骨座](雪子の夫・小泉多喜男)

三村るな(雪子の妹・三田万智)

牛嶋千佳(雪子の母)

若旦那家康(雪子の父)

野村有志[オパンポン創造社](葬式男・佐々木武)

まえかつと(多分死にの男・古村淳)

 

STORY

ヒトが“二つめの月”をつくり、本格的に光り出す3日前。雪子は2日前に知り合った武(たけ)に頼み、自分の墓を掘ってもらう。雪子の夫・多喜男は3日前から行方不明になった妻を探すため、線路を捜索する。そんな多喜男に死んでいると自称する淳が声をかける。一方、雪子の妹・万智は帰宅早々、両親から自分たちはセミになったと告げられる。

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コトリ会議、3回目のツアー公演。

 

前説で若旦那家康さんが、コトリ会議は照明が暗く、台詞を言う声が小さく、更に話もSF的な設定で分かりにくく眠くなるのも仕方ないなどとやや自虐的に解説。確かに前作『しずかミラクル』は睡魔との戦いで内容もほとんど覚えていないけど、本作はまったくそんなことはなく、非常に面白かった。

 

まず本作は二つめの月が出来たことにより、ヒトは眠る必要がなくなり、感性が研ぎすまされて亡霊も見えるようになるという設定が秀逸。

雪子はどうやら電車に投身自殺したようなのだが、自ら見知らぬ男・武(たけ)に依頼して墓を掘ってもらう。更には線路で雪子を探す夫・多喜男の前にも死んでいると称する淳が現れるなど、生者と死者が混然一体となる。

 

加えて、雪子と万智の両親がセミになるという突拍子のなさ。

頭にセミを乗せていて、それが取られると動けなくなってしまう。

雪子が子供の頃、200匹ものセミを集め、一つ一つに名前をつけて墓に埋めたことがあるというエピソードが挿入されるが、ここでセミに仮託して感じられるのは、どのように死を迎え、どのように見送られるかがいかに大切かということ。

終盤、暗闇の中での「土の中での3000日。楽しかったね。温かかったね」という群読は少年王者舘っぽかったな。

 

キャストでは牛嶋千佳さんの台詞回しが圧巻。クワガタや樹液を啜るなど、台詞以外のセミ演技でも異彩を放っていた。

中村彩乃さんは佇まいが目を引き、「蛍の光」の替え歌が楽しい。

『あ、カッコンの竹』同様、照明もカッコよかった。

 

上演時間約63分。