谷賢一×徳永京子×田中大介「シモキタでフクシマと演劇を思う夜」 | 新・法水堂

新・法水堂

演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

戯曲『福島三部作』(而立書房)刊行記念

谷賢一×徳永京子×田中大介

「シモキタでフクシマと演劇を思う夜」

 

 

今年の8月、東京、大阪、福島で上演されたDULL-COLORED POPの『福島三部作』。谷賢一さんによる戯曲が一冊の本として刊行されたことを記念して下北沢の本屋B&Bにてトークイベント。

 

演劇ジャーナリスト・徳永京子さんは、『福島三部作』の「手法について」熱のこもったツイートを連投し、谷さんがそれをいたく喜んだことで今回のトークのお相手に。田中大介さんは徳間書店に勤める傍ら、演劇ライターとしても活躍されている方。

『福島三部作』は長塚圭史さんがアフタートークする日に隣でご覧になっていたそうで、つまりは私の斜め前で観ていたのだね。笑

 

前半はその徳永さんのツイートの話から、作家と批評家の関係、谷さんが戯曲を書く上で枷にしていることの話へと。

谷さんは上演時間を先に考えて書くということで、上演時間が100分から120分弱になるようにしている。『福島三部作』はどれも同じような上演時間だったが、第三部が取材量に対してもっともカットした部分が多かったそう。

パンフレットに書いてあったかアフタートークで話していたか忘れたけど、第三部は福島を自転車で旅をしながら、誰かれ構わず雑談をしかけて色んな話を聞きだしたとのこと。

その中で原発反対派から一転、町長となって原発を推進していく岩本忠夫氏のことを知り、取材を進めていったとか。

なお、再演については「毎年やった方がいい」という人もいたが、現実的には困難。長塚圭史さんは自分が演出するなら第一部がいいとおっしゃっていたけど、再演するならそれぞれ別の演出家がやった方がいいという案も。

 

その後、『従軍中の若き哲学者ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタインがブルシーロフ攻勢の夜に弾丸の雨降り注ぐ哨戒塔の上で辿り着いた最後の一行「──およそ語り得るものについては明晰に語られ得る/しかし語り得ぬことについて人は沈黙せねばならない」という言葉により何を殺し何を生きようと祈ったのか? という語り得ずただ示されるのみの事実にまつわる物語』という谷さん自身も覚えられない9月刊行の本の話題から、紙媒体とデジタル媒体の話、ダルカラや阿佐ヶ谷スパイダースなど劇団員を増やしていくここ数年の傾向、学校教育と演劇等々の話。

 

ここで休憩に入り、後半は先ほどの話の続きで、出演者募集の広告を出すと2、3日で200~300人ぐらいの応募がある一方、劇団員募集だとほとんど来ないとのこと。

あちこちに1回客演しただけではスキルが身につかないと谷さん。作り手からしても1回仕事をしただけでは、その役者さんの持つ力を引き出せない。ナイロン100℃や大人計画など、長年やっている劇団からはいい役者が育っているという徳永さんの指摘も。

 

ダルカラの次回公演、KAATで上演される『マクベス』については、18シーン中、ラスト以外はアウトラインが出来たとのこと。

谷さんが『マクベス』に関わるのは4回目で、最初は大学生の時、2回目はマクベスとマクベス夫人のシーンをフィーチャーした『ふたりマクベス』、3回目は佐々木蔵之介さん主演の一人芝居『マクベス』に演出補として参加(これは私も観た)。

「『マクベス』をカットさせたら日本一」というだけあって、今回の『マクベス』も6人で上演。何でも今回は「衝撃のラスト」が待っているそうで、最後の一行の台詞でそれまでの風景が違って見えるようなものになっているそう。その台詞は有名な言葉からの引用だそうだけど、一体どんな台詞なんだろう。気になるわー。

 

なお、最近は作品のお尻から考えて戯曲を書いているそうで、そのきっかけとなったのはデイヴィッド・ルヴォーさんと一緒に仕事をした時。脚本の第一稿にダメ出しされて全部書き直しを命じられ、家に呼ばれてプロットの作り方から教わったそう。ハリウッドの脚本術も勉強し、今のスタイルになったとか。

 

その後、質疑応答。

やはり再演を望む声や第四部を期待する声が多いようですなぁ。

ちなみに谷さんがシェイクスピアを読むようになったのは、柳美里さんのエッセイがきっかけだったそうだけど、柳美里さんと平田オリザさんが来年開催するという「浜通り演劇祭」は行きたいなぁ。前線開通する常磐線の電車内で演劇を行うという企画もあるとか。潮騒のメモリーズは出ないのか。笑