伊東由美子 還暦記念公演
『楽屋―流れ去るものはやがてなつかしき―』
2019年11月21日(木)~12月1日(日)
OFF・OFFシアター
作:清水邦夫 演出:西沢栄治
舞台美術:田中敏恵 照明:小木曽千倉
音響:飯嶋智 舞台監督:森下紀彦、神永結花
衣装:柿野彩 宣伝美術:verabo
演出助手:春はるか 制作:落合直子
出演(✿花組):
伊東由美子[劇団離風霊船](戦前の女優)
みょんふぁ(戦後の女優)
伊藤弘子[流山児★事務所](女優)
桜井ひとみ(新人女優)
STORY
楽屋。亡霊になった戦前の女優と戦後の女優が楽屋で念入りに化粧をしながら、永遠にやっては来ない出番にそなえている。今上演中なのはチェーホフの『かもめ』。主役のニーナ役の女優が楽屋に戻って来ると、プロンプターをつとめていた新人女優がパジャマ姿でマクラを抱えて現れる。新人女優は精神を病み入院していたが、すっかりよくなったから、ニーナ役を返せと女優に詰め寄る。言い争いになり、女優は思わず新人女優の頭をビール瓶で殴ってしまう。新人女優は起き上がってふらふらと出て行くが、女優が楽屋を出ていった後に戻ってくる。今度は亡霊の女優2人が見えている。打ち所が悪く死んでしまったようだ。ニーナ役が欲しくて精神異常になった若い女優がまた一人死んだ。3人になった楽屋の亡霊は、何かの拍子にやって来るかもしれない出番のために稽古を始める。「わたしたちだけがここに残って、またわたしたちの生活を始めるのだわ。生きていかなければ、…生きていかなければ…」(WEB「清水邦夫著作リスト」より)
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劇団離風霊船の主宰の一人、伊東由美子さんの還暦を記念しての公演。名作『楽屋』のキャストをシャッフルして5つのバージョンで上演するうちの今回は花組。
舞台は横に細長く、客席は対面式。
下手の壁に姿見、その隣に鏡の置かれた机。方々に椅子。
この作品を観るのは今年8月の新宿梁山泊での公演以来2度目。
同じ戯曲でも当然のことながら、演出やキャストが異なってくればおのずと印象は変わってくる。
西沢栄治さんは今年2月、やはり清水邦夫さんの戯曲を演出した流山児★事務所『雨の夏、三十人のジュリエットが還ってきた』がとてもよかったのだけど、今回もこの戯曲の新たな魅力に気づかせてくれた。
本作に登場するのは4人の女優のみ。
優れた「女優論」ともなっていて、「女優って仕事は残酷よ、たしかにいろんなものを犠牲にするし……なにより残酷なのは、いつまでも若くはないってことよ」といった女優と新人女優(原作戯曲では女優C、D)の対話を聞いていると、どうしても沢尻エリカさんの顔を思い浮かべずにはいられなかった。
まぁ沢尻さんももし芸能界に復帰することがあるなら、この作品で初舞台を踏むというのもいいんじゃないの?
4人の女優陣もそれぞれの持ち味を発揮していた。
残念ながら他のバージョンは観る余裕はなさそうだけど、今回の組合せがベストじゃなかろうか。伊藤弘子さんの歌も聴けるし(伊東由美子さんが新人女優を演じるのも、それはそれで面白そうだけど)。
上演時間は約65分。