唐組『ビニールの城』下北沢公演 | 新・法水堂

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演劇と映画の日々。ネタバレご容赦。

唐組 第64回公演
『ビニールの城』
 
 
【下北沢公演】
2019年10月18日(金)~20日(日
下北沢特設紅テント
 

作:唐十郎  演出:久保井研+唐十郎
絵:合田佐和子  作曲:北村早樹子、安保由夫

宣伝美術:及部克人、海野温子  
舞台美術:紅美術団子  照明:福本雄樹
衣装:安楽きわ  音響:岡田悟一
舞台監督:全原徳和  人形美術:足利浩平

 
出演:
稲荷卓央(相棒の夕ちゃんを探す元腹話術師・朝顔)
藤井由紀(ビニールの城に閉じ込められた女・モモ)
久保井研(モモの夫・夕一)
岡田悟一(夕一の叔父・引田)
全原徳和(引田の連れ・河合)
福原由加里(モモの妹分・リカ)
福本雄樹(もう一人の腹話術師)
影山翔一(「カミヤ・バー」のマスター・バーテン)
川崎勇人(ただの腹話術師・鳥丸)
戸辺俊介(同・水丸)
加藤野奈(同・糸丸)
栗田千亜希(腹話術師)
升田愛(同)
藤森宗(同)
竹岡直紀(同)
 
STORY
月光さし入る浅草・神谷バー。腹話術師の朝顔は、8ヶ月前に別れた相棒の人形・夕顔を探し続けていた。人形を「遠くからきた人」と思う朝顔は、他人との「なま」の関わりを持てずにいる。そんな中、アパートの隣に住んでいたビニ本のモデル女・モモと再会する。モモは朝顔にこう告げる。「あたし、あなたが忘れられない人形と同じ名の人と結婚しました。いつまでも、あなたの体の半分と暮らしていたかったから」それを知った夫・夕一は「人形の夕ちゃんにならなければ、モモという妻に喰い込んでゆくことはできない」と思いはじめる。【当日パンフレットより】

                                        

唐十郎'85名作選第二弾。
下北沢に紅テントが建つのは43年ぶりだとか。
 
本作は劇団第七病棟のために書き下ろされた戯曲で、初演では石橋蓮司さんが朝顔、緑魔子さんがモモを演じた。
3年前にはシアターコクーンで上演され、演出予定だった蜷川幸雄さんが亡くなって追悼公演になったのも記憶に新しいところ(ついでにそこでの共演がきっかけで森田剛さんと宮沢りえさんが結婚したことも)。
 
シアターコクーン版のチケットが取れずに涙を飲んだ私、今回は下北沢と鬼子母神の前売券を購入して意気込んでいたのだけど、到着が開演時間ぎりぎりになって立ち見の憂き目に。
雨が時折強く降る中、テントに水が溜まってだんだん下がってきて、二幕はかなり視界が遮られて怪しげな世界を覗き見るような感覚を味わいつつの鑑賞となった。
 
唐さんの芝居は何かを探し求める人物が主人公になることが多いが、本作の朝顔は腹話術の人形・夕顔を探す中でモモに出会う。
モモは朝顔が見ていたビニ本のモデルとなっていた女性だったが、モモ本人には興味が示せない。うわ、これ今で言うところの二次元恋愛ではないか。ビニ本こそ死語になっているが、扱っているテーマは極めて今日的。
座長代行の久保井研さんが演出をするようになってからだいぶ台詞が聴き取りやすくなったけど、その中でも本作は物語自体が分かりやすく、唐作品初心者にもオススメ。
 
稲荷卓央さんが久々に唐組の本公演に出演されるのは嬉しかったけど、不在期間に主役を張ることが多かった福本雄樹さんがチョイ役になってしまったのが惜しまれる(休憩中、初演も観ていると思しき年配の女性が「あの子どうしたのかしら、辞めちゃったのかしら」と心配していた←実際は一幕の冒頭に出演)。
さ、次は鬼子母神で今度はしっかり座って観るぞ。笑
 
上演時間約2時間8分(休憩時間18分)。