『銀河の果ての落とし穴』刊行&著者来日記念トークイベント エトガル・ケレット、大いに語る | 新・法水堂

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『銀河の果ての落とし穴』刊行&著者来日記念トークイベント エトガル・ケレット、大いに語る
現実の裏にあるシュールな真実
エトガル・ケレット(作家)×倉本さおり(書評家・ライター)

 

 

紀伊國屋書店新宿本店イベントスペースにて、『銀河の果ての落とし穴』(広岡杏子訳/河出書房新社)の刊行を記念したエトガル・ケレットさんと倉本さおりさんのトークイベントへ。

 

エトガル・ケレットさんは1967年イスラエル・テルアビブ出身の小説家、映像作家。ご両親はホロコースト経験者という経歴の持ち主。

日本で初めて小説が刊行されたのが、2015年の『突然ノックの音が』(母袋夏生訳)。著者略歴に映画監督としても活躍しているとあったので、ひょっとして…と調べてみたら映画『ジェリーフィッシュ』を妻シーラ・ゲフェンさんとともに監督し、カンヌ国際映画祭のカメラドールを受賞された方だと分かり、小説も読み始めた次第。

 

金曜日にシーラ・ゲフェンさんと来日したエトガル・ケレットさん、東京の他、京都と神戸でもイベントや映画祭が予定されているのだけど、実は2週間前にお母様が亡くなったとか。イスラエルの風習では1ヶ月は旅をしてはいけないそうだけど、今回は特別に台風の祝福も受けつつ、来て頂いたとのこと。

そのお母様は子供が出来た際、夫に本を買ってきて子供に読み聞かせるのは怠惰な親のすることであり、夕食を作る代わりにピザを買ってくるようなものだと言い、物語を買ってくるのではなく作ることを求めたそう。ファンタジー色の強いお母様の物語に対し、お話を作るのが苦手だったお父様は現実に起きたことを幼きエトガルさんに話したんだとか。

このように育てられたエトガルさん(ちなみにエトガルはヘブライ語で「挑戦」とのこと)にとって、物語は生きていく上で欠くべからざるもの。母親を喪った悲しみの中においても、ユーモアを忘れないエトガルさんの人柄がびしびし伝わってくるトークイベントだった。

倉本さんお勧めの『あの素晴らしき七年』も読まなくては。

 


1時間半ほどのトークの後、サイン会。

ケレットさんは一人ひとり撮影に応じたり質問に答えたりと実に丁寧な対応。倉本さんも待っている人たちに話しかけてええ人や…。