ホリプロ/TOKYO FM『クラウディアからの手紙』 | 新・法水堂

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ホリプロ/TOKYO FM

『クラウディアからの手紙』

「クラウディア 奇蹟の愛」(村尾靖子著 海拓舎刊)から

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2006年2月21日(水)・22日(木)
愛知厚生年金会館

脚本・演出:鐘下辰男
テーマソング:溝口肇
美術:島次郎 照明:中川隆一
衣裳:小峰リリー 振付:井手茂太
音響:井上正弘 ヘアメイク:佐藤裕子
殺陣:渥美博 演出助手:坂本聖子
舞台監督:小林清隆

出演:
佐々木蔵之介(蜂谷彌三郎)
斉藤由貴(クラウディア)
高橋惠子(久子)
すまけい(吉田)
小林勝也(安岡・軍医・大本営参部・総領事)
山西惇(橋本)
池内万作(後藤・関東軍参謀)
村上大樹(青木)
久松信美(取調官)
宮島健(父・ロシア人理髪師・囚人)
植木紀世彦(ソ連兵1・囚人・抑留者)
亀田佳明(赤ん坊・裁判官・所長・農夫・囚人・抑留者)
翁長誠(朝鮮人2・ロシア人3・保安部員1・ソ連兵・囚人・抑留者)
斉藤直樹(理髪師2・保安部員4・朝鮮人・ソ連兵・囚人・抑留者)
柴田雄平(ロシア人1・保安部員3・朝鮮人・ソ連兵・囚人・抑留者)
土倉有貴(朝鮮人1・炊事場ボス・保安部員5・囚人・抑留者)
渡部紘士(ソ連兵2・ロシア人2・保安部員2・朝鮮人・囚人・抑留者)

終戦を朝鮮・平壌で迎えた民間人の蜂谷彌三郎は、妻・久子と娘とともに引揚げの時を待っていたが、無実の罪でスパイ容疑をかけられ、ソ連兵に連れ去られてしまう。
シベリアの強制収容所へ送られた彌三郎は、理髪師としての職を得る。過酷な収容所生活を終え、出所した彌三郎だったが、スパイ容疑のためにソ連出国を許されない。
そんな中、一人の女性が彌三郎に声をかける。彼女の名前はクラウディア。彌三郎と同じように無実の罪で服役していた過去を持つ彼女と、次第に心を通わせていく。彌三郎はソ連国籍を取得するためにクラウディアと結婚する。
やがてペレストロイカの時代を経てソ連邦が崩壊。
日本と連絡が取れた彌三郎は、今も久子が自分を待ち続けていることを知る。

実話を基に舞台化。
ドキュメンタリーや『奇蹟体験!アンビリバボー』で取り上げられ、大きな反響があったらしい。

上演時間は15分の休憩を含め、約3時間あったのだが、まったくもってその必然性が感じられなかった。
3時間やるんだったら、『贋作・罪と罰』の1・5倍は楽しませてくれよ。
特に約70分の第1幕。ここではクラウディアも久子もほとんどストーリーにからんでこず、彌三郎の抑留経験が語られる。もちろん、ある程度の状況説明は必要だと思うが、こんなに長くやる必要はない。
ジャン(?)を打つ音や発砲音など、舞台上はかまびすしいぐらいだったのだが、眠気を堪えるのに必死だった。

第2幕でようやくクラウディアと出会う。
そこからは多少持ち直したが、彌三郎と久子の再会シーンは頂けない。
抱き合う二人。その奥にスクリーンが用意され、実際の彌三郎さんと久子さんが新幹線のホームで抱き合うドキュメンタリーの映像が流されるのだ!
ちょっと唖然としてしまった。
斉藤由貴さんがプログラムの中で「実在の人物を演じる、ということも、あくまで演劇作品のなかでのことですから。そうでなければドキュメンタリーのほうがいいですよね?」と書いているにも関らず、やってしまった。
舞台作品なのに、最終的に実際の映像に頼ってしまうなんていうのは最もやってはいけないこと。
この鐘下辰男という人は、実は演劇の力、物語の力なんてこれっぽっちも信じちゃいないのだ。

2時間にしたらまだましな芝居になったと思うが、いかんせん無駄なものが多すぎた。
6、7人いるその他の人々も必要なかったのでは。舞台上に意味もなくいるシーンが多々あった。
また、役者陣も総じて台詞が届いてこない。これは声量のことを言っているのではない。
伝わってこないのだ、戦後の混乱期における人々の苦しみ、悲しみが。

余談になるが、私が最初にファンになったアイドルが斉藤由貴さん。
20年越しの夢が叶って初めて実物を拝見する機会を得たが、肝心の芝居がこれではなぁ。
それと高橋惠子さんが手紙を読むシーンで携帯電話を鳴らしたバカが。
ただでさえ台詞の少なかった高橋惠子さんに謝れ!笑