小学生の頃住んでいた土地はそんな土地だった。
背後には、なだらかな稜線の山。畦道、空き地、野原、小川。そのどれもまだ手付かずであり、野生の片鱗を覗かせていた。そんな土地だ。
父は朝起きると野原に止めた車の窓にやかんで沸かしたお湯をかける。フロントガラスが霜でやられるのだ。僕は弟と朝ご飯を食べる。窓からの陽光に白い湯気。塩胡椒のベーコンエッグ、ココア、マーガリンとジャムのパン。
きんきんとした冬がくると、こんな日々を振り返ることがある。特に聖なるひかりがまだ跳ね回る午前中に。
また確実に歳をとる。