モーパッサン短編集で読み残していたもの。
古本で買ったら昔の新潮文庫のフォント。
出張に行く新幹線車内で読んでいたら気持ち悪くなってしまった。
でもやっぱり面白い。
Ⅱは都会編でパリを舞台にした作品集。
相変わらずの後味の悪さ。
「家庭」「馬に乗って」は読み終わって居ても立っても居られない気持に。
「家庭」のお母さん、ゾラの「テレーズ・ラカン」のお母さん並みの生命力。
「ポールの恋人」は1880年の作品らしいのだが、同性愛についてはっきり描かれていて驚いた。
プルーストの「ソドムとゴモラ」の40年早い。
さすが、イギリスと大違いのフランス。
ただ、夕日の美しさを味わっているポールの横で、流行り歌をがなり立てている恋人の対照の、なんと哀しいことよ(p55)。
恋人の名前がマドレーヌなのも意地が悪いし(貝殻のように「くっついている=仲がいい」、あと貝なのでもちろん性的ニュアンスも)、同性愛相手の名前がよりによってポーリーヌ。ポールの女性形。
でもマドレーヌのことが好きなんだよね、ポールさん。
さすが、愛の国フランス。
河出か岩波で読んだ「野遊び」も私が好きな<取り返しがつかない>系。
「父親」も取り返しがつかない状況だけど、自業自得でもっといやーな感じ。
その女性版の「待ちこがれ」も同様。
艶笑譚(コキュものを含む)も相変わらずで「勲章」「宝石」「夫の復讐」はザ・モーパッサンだし、「墓場の女」は似ているけどちょっとコミカル。
「クリスマスの夜」「かるはずみ」「蠅」もセクシャルなコメディもの(と思うけど)。
驚いたのが「かるはずみ」。
訳文はもっと上品だけど、要はあらゆる”プレイ”に飽きてしまった夫婦という設定。
妻は情婦の振りをし、お互いに初対面という体でキャバレーに出かける。
オチもどうかしているが、設定もどうかしている。
さすが、愛(と性)の国フランス。
何度読んでも面白い「マドモワゼル・ペルル」も<取り返しがつかない>系(でいいのか?解説では「かすかな望み」と書いてあるけどp378、二人を待ち受けているのは地獄のような状況だと私は思う)。
あと岩波では”四角く話すと丸く話す”は論理性の違いと思ったけど、新潮文庫で読むとニュアンスが違った。
話の冗長さ愚鈍さと変転する速さの違いのことらしい。
「オルタンス女王」は物悲しいのに可笑しく、笑っていいのかよくわからないし後味も悪い。
本当に人が悪い、モーパッサン(喜んで読んでいる私は、もっと性格が悪い)。
今回の収穫は「肖像画」。
モーパッサンらしくない静謐さで、私は美しいと感じた作品。
こういうのももっと書こうよ、モーパッサン。
あと、岩波だったかで読んだ「シモンの父ちゃん」(岩波は邦題が「シモンのパパ」だったかも)も何度読んでもほっこりする。
頑張れ!シモンくん!
青柳瑞穂訳:モーパッサン短編集Ⅱ 新潮文庫、東京、1971