表紙買い。
内田さんのお顔に惹かれました。
お二人とも特殊な家族環境(内田さんは有名ですが)で、かといって本書はタイトルから想像されそうな単純な家族否定論ではないです。
家族を病気扱いする本などもありますが、その点、本書は一線を画します。
一言で要約すれば、家族のあり方は多様なのが普通だよね、という本。
家族といえども人の集団で、そうなると血の繫がりなどとは無関係に、様々な関係性の嵐の中に放り込まれるわけですよね。
それを、一々、家族は病だとか、ナイーブ過ぎやしないですか?と私なんぞは思います(除・あまりに暴力的な家族関係)。
その点、本書は大人な内容でした。
というか内田さんのちょっとした言い回しがかっこよかった。
頭のよい方なのだろうなあと思わせます。
対談なので、私がへーとか、おおっと思ったところのみ、ご紹介です。
非言語的コミュニケーションは主に嗅覚からなるらしい。
だから「なんだか相性がいい」というのは匂いで感じている可能性がある(p48)。
非言語的コミュニケーションでは、まずは声色が重要と思い込んでいました。
勉強になるなあ・・・・
話は変わりますが、<我が家のGoogle>(私命名)またの名を<我が家のWikipedia>(子供1命名)またの名を<雑学王>(妻命名)子ども2が、「お父さんさあ、フェロモンの匂いって、油性ペンの匂いに近いんだって」と教えてくれました。
ええ、シンナーのあの匂い?!
確かにちょっとうっとりするけど・・・・(← 若干、危険)
真偽のほどは不明です。
彼の情報ソースはもっぱら「コロコロコミック」なので。
大脳新皮質の形成には母親由来、内臓系は父親由来の遺伝子が大きく影響しているらしい(p54)。
中野先生によれば、だから新皮質が関わる知能は母由来、主に内臓系といってもよい感情は父由来、とのこと。
少し乱暴な意見ではないかと思いますが、話としては面白い。
樹木希林さんの箴言。
家事でもなんでも「自分がしたいからすると思えば楽」(p65)。
さすがロケンロール&ピースな人と添い遂げた方だけのことはあります。
夫婦長持ちの秘訣は、相手に期待しないこと。
しかし、単に期待しないでも長く続かない。それでは一緒にいる意味がなくなってしまう。
清水ミチコさんの名言を思い出します。
「諦めと信頼は紙一重」
あるいは能町みね子さんの名作も思い出します。
中野先生、別の本でも違った表現でおっしゃっていたことですが、「学校で団結しよう!」となると「なぜ団結しなければいけないのだろう」と思ってしまい、そういう自分を「落伍者」だと感じていた(p80)。
わかる。
私もそういうタイプでした。
問題は、そういう自分を許せるようになるのが、やっと40過ぎてからという点です。
そうなるって誰か先に教えておいてくれよーと思ったものです。
なので、子供達にぼっちがどうとか気にするな、そんなことが気になる期間は人生の半分にも満たない、無理してしんどい思いをせずに自分が何をしたいのかをまず考えろと、ずーっと話しているのですが、誰も耳を貸してくれません・・・・・
親の心、子知らず。
へーっと思ったのがDLPFCは30歳まで成長しているらしい(p114)。
だから、臨機応変さ、複線併行処理、自分を突き放してみることが必要な子育てに適した状態は、実は40代かもしれない(p128)。
私が、やっと40代も半ば過ぎて人様のいろんな事情がちっとは見える(ような)気がした理由が分かりました。
てか、もう少し成長してくんないかなあ。
もう無理か。
内田さんのご発言。
人間は、様々な課題を乗り越えて、逆説的に安心な状態に到達する。
だから家族もほどほどの逆境が必要(p187)。
深く同意。
これは個人でも集団でもきっと同じ。
中野先生のご意見。
幸福というのは絶対値で表せないのではないか。むしろ変化量なのではないか(p190-202)。
だから幸福の頂点で却って不安になることがある。
この点で面白かったのが内田・本木ご夫婦の話。
本木雅弘さんは、中野先生と同様にネガティブ志向で、マイナスから物事を考え始めるのだそうです。
ところが内田さんはポジティブな状況を素直に受け取るので「なんで喜ばないの?」と夫婦ですれ違いが生じ、一時別れ話があったと(!)。
食事で内田さんが「これ美味しいね」と言っても、本木さんは「でも、XXを入れればもっとおいしいよ」と呟いてしまう。
本木さんの考え方、実は向上心と繫がるのだけれども、内田さんからすれば「なぜ喜びを分かちあえないのか」と思ってしまう。
で、中野家の旦那さんも内田さんのように「え、なんで今楽しまないの?」という人らしく、中野さん≒本木さん、内田さん≒中野さんの旦那さんと、お互いに似た夫婦関係のようです。
最後。
美と正しさを感じるのは内側前頭前野(p209-213)。
これは面白い。
端正な風貌の人が話すと、なんだか「正しいことを言っている」と思ってしまう。
逆にいわゆる「見るからに怪しい」という表現がありますが、あながち的外れあるいはポリコレに反しているとは言えないのですね。
この話を聞いた内田さん、本木さんが執拗に外見に気を配ることを不思議がっていたのですが、納得されます。
本木さんにとって、容貌だけでなく立ち振る舞いとか佇まいも含めた美は、ご自分の人生観や仕事観と結びついているのだろうと。
いろいろ学びになりました。
内田也哉子、中野信子「なんで家族を続けるの?」
850円+税
文春新書
ISBN 978-4-16-661303-8