金融資産を譲渡する契約を結んだ。しかし契約上、金融資産の構成要素の中でも支配が他に移転している部分と、支配が他に移転していない部分がある。これらの法的実態にもとづいて構成要素ごとに消滅や存続を認識する。いわゆる財務構成要素アプローチである。


[資料]
・簿価3000の貸付金を次のような条件で第三者に3200で譲渡した。なお、当該取引は支配の移転のための条件を満たしているものとする。
?譲渡人は譲受人から当該貸付金を買戻す権利を有する。
?譲渡人は延滞債権を買戻すリコース義務を負う。
?譲渡人は譲渡資産の回収業務を行う。
・回収サービス業務資産の時価は300、買戻権の時価は500、リコース義務の時価は400である。

[解説]
資料の一行目から、「簿価3000を3200で売却したので200の売却益」と考えるのは間違い。
また条件?に買戻特約がある。これは支配の移転の三要件(倒産隔離および法的保全、利益享受、買戻特約)を満たさないため、貸付金の消滅を認識できないように思えるが、文中に「支配の移転のための条件を満たしているものとする」とあるので、これに従い貸付金の消滅を認識する。

さて、上の?~?の条件にはそれぞれ時価が付されている。ここで「新たに生じた金融資産」または「新たに生じた金融負債」、もしくは「支配が他に移転せず、残存する部分」を判断しなければならない。
まず?の買戻権を考えてみよう。これまでの自社と債務者との間には金銭の貸し借りがあるだけの関係であった。ここに買戻権の介入する余地はない。買戻権とは貸付金を第三者に売却したからこそ生じたものである。さらに買戻「権」とあるからには当然資産である(少なくとも負債=支払義務ではない)。この時価が資料より500である。

次に?の延滞債権を買戻すリコース義務(※リコースとは原債務者のデフォルトがあった場合の債務保証)。債務者が倒産した場合、売却した貸付金は当社が返済義務を負う。これはもちろん負債であり、時価が400となっていえる(貸引のようなものだろうか)。

最後に?の回収業務。元利金の回収は貸付金を譲渡しようがしまいが行われる。つまりこれは残存する部分である。回収にはコストが生じるため負債のように感じるが、元々は「貸付金なる資産」の残存部分である以上、これは資産である。資料の文中にある「回収サービス業務資産」との単語から判断してもいいし、あるいは覚えてしまってもいいかもしれない。
回収サービス業務資産とは、具体的には元利金の回収、エスクロー口座での管理、延滞状況のモニタリング、二次債権者への元利金の送金などを指すらしいが、重要なのはこれが財務構成要素アプローチにおける支配が他に移転していない部分であるという認識。

また更に重要なのは計算上の原則。
新たな金融資産および負債は時価で、残存部分は消滅部分と残存部分の時価の比率により按分することになる。

ここまでのまとめ
・新資産=買戻権
・新負債=リコース義務
・残存部分=回収サービス業務資産

上の3つの右側は勘定科目。ひとつ注意点として、残存部分は貸付金として残存するわけではないということ。支配の移転を満たすということは、貸付金は簿価の全額の3000でオフバランスされる。また残存部分は借方で貸付金として新たに認識するのではなく、回収サービス業務資産として(勘定科目を改めて)認識される(ただし実態は貸付金の残存部分

新たな資産や負債はそのまま時価で計上するため、この時点で以下のところまで仕訳できる。

(借)現金預金 3200、 買戻権 500 (貸)貸付金 3000、 リコース義務 400

これに残存部分(回収サービス業務資産)を加え、差額を債権売却損益として計上する。問題はもちろん残存部分の測定(残存部分は時価をそのまま計上するわけにはいかない)。

ここで一旦、全てを時価評価する。貸付金の売却による現金収入は3200だが、その他に買戻権500、回収サービス業務資産の時価300を得て、リコース義務400という負債が生じている。つまりこの貸付金の時価=3200+500+300-400=3600である。貸付金の時価3600に対して回収サービス業務資産は300。したがって貸付金の時価3600のうち8.333...%は回収サービス業務資産によって構成されている。

ここでもう一度、残存部分の計上額は『消滅部分と残存部分の時価の比率』である。そして本来の貸付金の簿価3000のうち、幾らが残存するのかについてが問題となっている。したがって3000×0.08333...が元々の貸付金のうち、回収サービス業務資産が占めていた価値である。よって250を回収サービス業務資産として計上する。先程の
(借)現金預金 3200、 買戻権 500 (貸)貸付金 3000、 リコース義務 400
の借方に250を加えて貸借差額を債権売却損益とすると、その金額は550となる。
(借)現金預金 3200、 買戻権 500、 回収サービス業務資産 250 (貸)貸付金 3000、 リコース義務 400、 債権売却損益 550
?有価証券のトレーディング取引を行わないこととしたため、売買目的で保有している株式800株(簿価合計23400)をその他有価証券に振り替えた。振替時点の当該株式の時価は1株当たり29.7円であった。

(借)有価証券 360 (貸)有価証券評価損益 360
(借)投資有価証券 23760 (貸)有価証券 23760

?A社株式500株(簿価34000)を売買目的有価証券として保有していたが、当期において700株を1株当たり80円(時価)で追加取得し、A社を子会社とした。

・追加取得
(借)関係会社株式 56000 (貸)現金預金 56000

・区分変更
(借)有価証券 6000 (貸)有価証券評価損益 6000
(借)関係会社株式 40000 (貸)有価証券 40000

?過年度よりS社発行済株式の60%(6000株、簿価75000)を保有していたが、当期において4500株を1株当たり10円(時価)で売却した。これに伴い残存部分をその他有価証券とした。

・売却
(借)現金預金 45000、 関係会社株式売却損益 11250 (貸)関係会社株式 56250

・区分変更
(借)投資有価証券 18750 (貸)関係会社株式 18750

?有価証券のトレーディング取引を開始したため、その他有価証券として保有していた株式800株(簿価56000)を売買目的有価証券とした。なおこのときの当該株式の時価は1株当たり65円であった。

(借)投資有価証券評価損益 4000(貸)投資有価証券 4000
(借)有価証券 52000 (貸)投資有価証券 52000
貸倒懸念債権におけるCF見積法は理解が浅いのでじっくり考えて見たい。


貸付金10000を期首4月1日に保有しており、1年後の期末に5%の利息を上乗せした10500を受け取るとする。この貸付金から生じる将来CFは当然10500である。しかし期首段階では利息が生じていないので、割引後の現在価値は10500÷1.05=10000である。

次にこの金利を3%に減免したとしよう。これによって1年後に受け取る利息は300となる。このとき、普通の感覚からして差額の200は損失として差し支えないかと思う。

ではこの減免後の貸付金を期首時点で評価するとしたら幾らが妥当なのだろうか?もし減免後の金利、すなわち3%で将来CF10300を割り引いたとしたら10300÷3%=10000である。貸付金から得られる将来CFが低下したのに相変わらず10000で評価するのは道理に悖るだろう。ということで、1年後に損をすることが確実となった200。これを認識時点で評価に反映させることになる(今は期首を想定しているけど)。


もう一度整理してみよう。簿価10000の貸付金、当初の将来CFは10500であった。しかし金利の減免により将来CFが10300になってしまった。それではこの時の簿価は?という部分を問題にしている。

将来CFが200減少してしまったので簿価も200を差し引いた9800だろうか?

※つづき