日本の会計制度が最初に構築されたのは昭和20年代に成立した証券取引法と、これに伴って制定された企業会計原則であった。当時存在した会計原則は唯一これのみだったので、上場企業はここから逸れないようにすればよかった(現在よりも企業会計に費やすコストが低かったらしい)。
その後、企業会計原則は何度かの改正を経て、昭和57年の改正を最後に、現在ではあまり影響を持つものではなくなっている。昭和57年以降に制定された会計基準により、(上書きではないが)覆されているものが多く、ほとんどが死文化している。反面、今なお残っているものとして引当金に関する会計基準がある。

平成9~10年頃の金融ビッグバン。これは橋本内閣の下提唱された、free fair globalな金融市場の構築を目指すというもの。しかしこの目標と当時の会計制度が衝突。ここで会計ビッグバンがおきる。キーワードは会計の透明化と国際調和。ここで多くの会計基準が導入された。金融商品、キャッシュフロー計算書、R&D(研究開発費会計)、退職給付会計、税効果会計、減損会計、企業結合などが導入され、また連結会計基準の改正が行われた。

平成13年にASBJが創設された。これ以降に検討を開始した全ての会計基準はASBJが担当。平成13年以降に施行された会計基準であっても、ASBJ創設前から検討していたものであれば、ASBJ作成の会計基準ではない。

平成16年6月、EUが日本の会計基準とIFRSの同等性評価を開始。日本の会計基準とIFRSとの差異が大きなものであるならば、EUに上場している日本企業に対してIFRS適用によるディスクローズが義務付けられる可能性が高まった。当時は(株式の他に社債などの債権も加えて)約200社の日本企業が上場していた。このままでは200社がEUでの上場が維持できなくなるおそれがあった。

コンバージェンス(収斂)。日本の会計基準と国際会計基準との差異を縮小する動き。これにより日本基準の会計報告であっても(IFRSとの決定的な差異を解消すれば)EUでの上場を維持できるように目論む。
ここで新たな会計基準の制定、または当時の基準の改正が行われる。現在もコンバージェンスの流れの中にあるが、差異の縮小が大方終了しているものとして、企業結合会計(持分プーリングの廃止)、棚卸資産(LIFOの廃止)、リース(所有権移転外ファイナンス・リースの賃貸借処理が売買処理に変更)、投資不動産、工事契約、資産除去債務など。

さて、日本の概念フレームワークはコンバージェンスの開始と同時期に公表された。会計基準のメタ原則を制定して、各規準に矛盾を生じさせない狙い。


会計ビッグバンまでは企業会計原則の全盛。このときの企業会計は収益費用アプローチに完全に基づいている。収益費用アプローチと資産負債アプローチは、利益観の違い、何を中心に利益を導き出すかの違いと捕らえられていたが、現在では会計観の違いとされる。

資産負債アプローチの利益は、期首と期末の純資産の差額、つまり資産負債を正しく求める。資産=経済的資源、負債=支払義務。包括利益

収益負債アプローチは収益と費用の差額。このため収益と費用を重要視
収益=費用活動の成果、費用=成果獲得のための犠牲。こちらが企業会計原則。引当金など。純利益

現在の日本はこれらのハイブリッド構造。その中でもやや純利益を重視。しかしIFRSでは包括利益を重視している。

資産負債アプローチと収益費用アプローチの生み出す会計処理の違いの例として引当金の認識について考えてみよう。仕訳は次のようになる。
(借)引当金繰入額 (貸)引当金
負債を先に決定し、それに基づく費用が計上されるのが資産負債アプローチ。費用を純粋化して、これに負債が追随するのが収益費用アプローチ。どちらのアプローチによるかで認識、測定に差異が生じる。

例えば修繕引当金。修繕が必要な機械がある。しかし当期は時間が足りずに修繕を時期移行にまわした。これは収益費用アプローチの下では計上は必須。当期の利益を生み出すために貢献したための劣化であるため、修繕費は当期の収益と対応させなければならない。このように費用を純粋化するのが収益費用アプローチ。

対して資産負債アプローチ。引当金に確実な負債性があるのかを検討。負債、つまり計上しようとしている引当金は本当に支払義務なのか。まだ修繕もその契約も行っていない。100%修繕が必要だとも断言できない。こうした案件を負債として計上することはできない。


次の例として損失性引当金。これは企業会計原則の下では、債務保証損失引当金、損害補償損失引当金。製薬会社が薬害をおこして訴えられており、敗訴が濃厚な状況である。このときに損害補償損失引当金を計上すべきかどうか。敗訴が濃厚である=相当程度の蓋然性で支払義務がある状況である。しかし収益費用アプローチのもとでは計上はできない。敗訴した場合の支払は特別損失なので。収益との対応関係はない(適正な期間損益計算=伝統論)。利益獲得のために損害を前提とすることはありえない。しかし実際の企業会計ではおそらく引当金を計上する。この場合の根拠は保守主義。なので理屈から導かれた引当金ではない(収益費用アプローチの場合=現行)。


会計ビッグバン(平成8年)の時代、矢継ぎ早に新会計基準が制定された。脆弱だった会計基準を改正し、free fair globalな金融市場を構築を目指したものである。
fair=透明性の高いディスクロージャー制度、例えば金融商品の時価評価の導入(それまでは原価評価)、キャッシュフロー計算書の導入
global=国際的な会計基準との調和。退職給付会計の導入(隠れ債務の解消)

日本基準とIFRSはあまりにも内容に差があった。

・国際的な会計基準
1米国基準:FAS(Financial Accounting Standards)
2国際会計基準IAS(International Accounting Standards)=
のちのIFRS(国際財務報告基準)=ヨーロッパ

現在は日本、FAS,IFRSの3つが独自性を保っている。

FASとIAS(IFRS)は1990年代前半に資産負債アプローチへ以降済み。会計ビッグバンの下で制定された日本の会計基準はglobal、つまり国際調和を念頭に置いた会計基準となっている。これは基本的に海外の模倣(FASやIASに倣ったもの)であって、これにより日本基準に資産負債アプローチの考え方が注入された。以降は日本の会計基準は収益費用アプローチをメインとしつつもハイブリッドな構造になっている。

次にコンバージェンスの時代。
2001年(平成13年)7月、ASBJ(企業会計基準委員会)が創設された。会計基準の設定主体が企業会計審議会から民間団体へ。民間へ移行したのは優れた会計基準の設定のため。公が設定主体だと政治的な力がはたらきかねないため。
例えば減損会計。これは平成13年のASBJ創設前である、会計ビッグバンの時期に制定された会計基準。設定主体は企業会計審議会。しかし減損会計の導入をしても損失があがるのみなので各企業は当然反発する。これにより導入が2年延びた。また日本の現存会計は海外と比べて損失があまりあがらない仕組みとなっている。これでは海外との比較が難しく、また海外の投資家が信用して利用できるFSとは言えない。実際ASBJが創設されたあとの会計基準は、何かに阿るような設定をしていない。例えばリース会計。リース会社が強い力を持っているにも関わらず、賃貸借処理の認められていたリース会計の処理を、全て売買処理とすることを断行した。
2002年、EUがEU域内に上場しているEUの加盟国にIFRSを義務化を決定(2005年から)。
IASBとFASBが(ヨーロッパとアメリカが)コンバージェンスに関する合意を発表。これによりEU域内に上場しているEU加盟国以外の企業にもIFRSが適用されることが確実視される。
2004年、EUが日本アメリカ、カナダの会計基準とIFRSとの同等性評価を開始。EU域内のの第三国企業にIFRSまたはIFRSと同等の基準の使用を義務化することを見据えたもの。このままではEU上場の日本企業は日本基準を使えなくなる。このため、日本基準がIFRSと同等であると認められるように会計基準を改正するという動きが活発化。この流れがコンバージェンスである。このとき改正ではなく日本におけるIFRS導入は困難であると判断された。例えば日本では商品の売上の認識は出荷基準が多いが、IFRSを導入すれば出荷基準は使えなくなり、検収基準に代わることになる。こうなると経理の問題では済まなくなり、全社的な業務フローが全て変化させざるをえない。こうした背景からIFRSの導入よりは、日本基準の改正(国際調和)の方が低コストと判断。

2005年、ASBJとIASBがコンバージェンスに関する合意を発表。目的は日本基準とIFRSとの差異を埋めること。

さらに現在はアダプションの時代。アメリカがその会計基準を放棄することはないと思われていたが、IFRSに大きく寄ったため、日本が取り残されかねない状況となった。これにより日本でもIFRSを採用する流れに。2015年には義務化されるのではないかと予測されている。

もういちどコンバージェンスの時代について。
ASBJのスタンスは日本基準の独自性は捨てないというもの。日本の独自性とは純利益の重視である。つまり収益費用アプローチは放棄しない方針。しかしコンバージェンスによって資産負債アプローチが日本に次々と流入。これによりIFRS(資産負債アプローチ)との差異を埋めつつ独自性(収益費用アプローチ)を保持するのは困難な状況に。個々の基準を個々に制定(ピースミール)すれば必ず矛盾が生じる。しかし会計基準の設定にあたり、よりどころとすべき「概念的基礎」が日本には存在しなかったため、(IASB,FASBには概念書、フレームワークが存在していた)。このため各会計基準の上位概念である概念フレームワークが設定(2004年7月)
された。
数多ある会計基準の設定主体は誰なのかについて。

以前は金融庁の管轄組織である(つまり公的組織である)「企業会計審議会」が会計基準を設定していた。そしてこの会計基準をどのように適用するかを具体的に「実務指針」として公表するのが「日本公認会計士協会」である。

現在では会計基準を作るのは「企業会計基準委員会(ASBJ)」となっている。ASBJは企業会計審議会とは異なり「民間団体」である。ASBJが設定する会計基準を実務レベルに落とし込んだ「適用指針」。これを作成するのもASBJである。以前は企業会計審議会が会計基準の設定を、その実務指針の作成は日本公認会計士協会が担っていた。現在では会計基準、適用指針ともにASBJが担当している。また、適用指針以外にもASBJは「実務対応報告」も作成している。こちらは会計基準として設定するほどではないような、やや細かな基準のような位置づけである。例としては「繰延資産」。繰延資産に関しては会計基準こそ設定されていないものの、これを実務対応報告によって対処している。
[設例1]
本店は仕入先に対する買掛金25000を支払う為、仕入先を指図人、支店を名宛人とする為替手形を振り出した。

[解答]
本店:(借)買掛金 25,000 (貸)支店 25,000
支店:(借)本店 25,000 (貸)支払手形 25,000

まずは「買掛金が支払手形となった」事実をおさえる。本支店を抜きにすれば、全社的には買掛金の減少と支払手形の増加である。この買掛金は本店のものなので本店側で減少させ、本店は為替手形を引き受けた支店に対して債務を負う。支店では手形を引き受けたので支払手形が増加。ただしこれは本店の債務を代行したものなので、本店に対する債権を借方で認識。

[設例2]
本店は得意先に対する売掛金6500を回収する為、支店を指図人とする為替手形を振り出し、得意先の引受けを得た。

[解答]
売掛金が受取手形となっている。この売掛金は本店のもの。ただし手形の指図人は支店なので、受取手形の増加を認識するのは支店側。

本店:(借)支店 6500 (貸)売掛金 6500
支店:(借)受取手形 6500 (貸)本店 6500