朴裕河(パク・ユハ)教授、日本記者クラブで大沼保昭教授とともに記者会見。
(2015年2月23日)
記者会見の動画。
https://www.youtube.com/watch?v=llipwYlkbIY&list=UU_iMvY293APrYBx0CJReIVw
朴教授の著書 「帝国の慰安婦」 は日韓で話題になっていました。
日本での出版は朝日で、毎日新聞のようなリベラル紙も度々記事にして推薦していました。
しかしおそらくリベラルだけでなく、日本では多くの人に受け入れられる内容だったと思います。
(一部の、慰安婦問題を完全否定すべく極論に固執する人は別でしょうが)
しかし朴教授が韓国検察から在宅起訴されました。
フジの映像ニュース。
韓国検察、「帝国の慰安婦」著者の朴裕河教授を在宅起訴
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20151119-00000917-fnn-int
記事引用
いわゆる「従軍慰安婦問題」を取り扱った、韓国の研究書が、慰安婦だった女性の名誉を傷つけたとして、韓国の検察が、この本を書いた、朴裕河(パク・ユハ)教授を在宅起訴した。
在宅起訴されたのは、世宗(セジョン)大学の朴裕河教授で、2013年に出版した「帝国の慰安婦」が、慰安婦になった経緯について、「日本政府による強制性」という、韓国での一般的な見方と異なる記述を含んだことで、韓国と日本で注目を集めていた。
その後、この内容に抗議した、慰安婦だった女性らが刑事告訴し、一部表現を削除したうえでないと出版を認めないという、裁判所の決定も出されていた。
韓国の検察は、19日までに、強制連行の事実を否定し、元慰安婦らの名誉を傷つけたなどとして、朴教授を在宅起訴した。
引用終わり
朝日の記事もリンクだけ貼っておきます。
http://www.asahi.com/articles/ASHCM347THCMUHBI00Y.html
いま慰安婦問題、それなりに山場です。
日本政府は韓国に対して、少女像の撤去を求めていると報道されています。
(16日神奈川新聞一面をはじめ、その後、朝日等の大手紙も)
一方で韓国側がそのような話があったことを否定、との報道も。
ライブドアニュース。
http://news.livedoor.com/article/detail/10852892/
個人的に政府対政府の交渉で民間がやってる慰安婦像の撤去を求めていいのか、やや疑問はありますが、元慰安婦の支援団体は韓国の政界にも浸透してるそうなので、それを前提とした落としどころを探っているのかもしれません。
朴教授の著書では、少女像を様々な慰安婦の実際から「一部を切り取った象徴」として解説しています。
今のタイミングで教授が在宅起訴されたことは、そのような見方が許されないという韓国社会の意思が働いたということでしょうか?
憶測は置くとして、韓国の検察が正常でないことは確かな様に思います。
韓国社会全体が正常でないと認識すると、早とちりになるかもしれないので、念のため11月20日の読売新聞朝刊から、一部引用しておきます。
あちらのメディアは多様性があり、それほどおかしくはないようです。(たぶん)
以下、引用
朴教授の学術書を巡っては、元慰安婦らが出版差し止めの仮処分を申請した昨年6月から、慰安婦の歴史研究をめぐる自由をどこまで認めるべきか社会的な論争になっていた。
保守系主要紙、朝鮮日報は昨年8月21日、「慰安婦問題の解決をめぐる日韓の葛藤の責任を韓国側に押しつける朴教授の主張には首をかしげる」と報じた。
左派系のハンギョレ新聞は昨年3月13日、強制連行された慰安婦が平均的な姿ではないという主張は「著者のものだけでなく常識になって久しい」と指摘した。
韓国日報は昨年7月18日、朴教授の著書が「我々社会の知的寛容と学問の自由を喚起させた」と評価した上で、「異論があれば学問的論争を通じて解消、対比されて当然だ」と主張して刑事告訴に疑問を呈した。
引用終了
さて朴教授の著書 「帝国の慰安婦」 ですが。
(私はちょうどいま読んでいて、7割8割くらい読み終わってる)
帝国としての旧日本にある道義的責任を繰り返し問いつつ、戦後の両国間での正式解決については1965年の日韓基本条約があり、韓国側の追及に無理があること。その中で日本側も謝罪や責任を果たそうとアジア女性基金でできる範囲のことをしていると、理解を示してもいます。
しかしこの内容が韓国では物議をよび、日本に有利なるような内容であると批判的にとられたり、慰安婦の女性が自ら献身したような内容が名誉棄損になると反発があったようです。
朴教授は、当時の帝国日本に強いられた「愛国」にこそ、慰安婦問題の本当の悲しさがあると書いているのですが…。
(本の中で繰り返し繰り返し、日本の道義的責任には言及しています)
帝国の一部であった朝鮮出身の「日本人」慰安婦が、内地の民族的な意味でも「日本人」である慰安婦と比べると待遇に違いがあり差別されている一方で、帝国に属さない占領地域の人々に比べると上の位置づけであったこと。
当時の支配構造、階級構造のなかで、強いられたとも誇りをもって自発性があったとも言える「愛国心」によって兵士との間である種の連帯のようなものが存在したケースもあること。
そしてやはり、どうしようもなく悲惨な体験をした方もいたことにも触れています。
別に、慰安婦否定論の本じゃないのですよね…。
韓国の慰安婦運動の中で受け入れられなくなった元慰安婦の方々の声(中には支援団体のやり方に明確に抗議した方もいる)を、原点に立ち返って拾い上げた内容なのだと思います。
ここ数日読んでいたら、ちょうどニュースになったので、ちょっとびっくりしています。