古井戸のラスト・スタジオ・アルバム「サイド・バイ・サイド」(1978)が奇跡の初CD化 | マジカル・ミステリー・ミュージック・ツアー

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1960年代から1980年代の洋楽・邦楽の雑記帳です。

1970年代前半、庶民的な日常や、恋人との生活、出会いと別れを歌にした等身大の楽曲が、若者を中心に人気を博したフォーク・デュオ”古井戸”。

 

 

パワフルな歌声で聞く者を魅了したバンマスでメイン・ボーカルの加奈崎芳太郎と、卓越したソング・ライティング・センスとテクニカルなギターで古井戸を支え、その後、RCサクセションでも活躍した仲井戸”チャボ”麗市が奏でた音楽は、多くの若者の心を捉えました。

 

1970年に加奈崎芳太郎の歌声に感動した仲井戸麗市が、加奈崎に声をかけ、古井戸を結成。複数メンバーが存在するも、1971年のレコード。デビュー以降はアコースティック・デュオとして、当時の所属していたレコード会社「エレック・レコード」の盟友、泉谷しげるやケメ(佐藤公彦)などとともに、音楽イベント「唄の市」で活躍。

 

 

1972年5月にリリースされたシングル「さなえちゃん」は、ラジオの深夜放送でも話題を呼び、オリコンでは最高位17位とスマッシュ・ヒットしました。

 

 

ライヴ活動とともに、オリジナル・アルバムも「古井戸の世界」(1972年3月)「オレンジ色のすけっち」(1972年9月)、「ぽえじー」(1973年7月)、「古井戸ライブ」(1974年3月)、「fluid vol.4 四季の詩」(1974年10月)と順調にリリース。

特にエレック・レコード最終作品となった「fluid vol.4 四季の詩」は、「love song」「四季の詩」「セントルイス・ブルース」「ひなまつり」「熊野神社を通って」など、それまでの古井戸の集大成となる歌詞・サウンドと、新たな可能性を秘めた楽曲により、フォーク・デュオ古井戸の頂点ともいうべく名盤となりました。

 

【fluid vol.4 四季の詩】

【四季の詩/古井戸】

【love song / 古井戸】

 

この後、所属をしていたエレック・レコードの経営悪化とともにソニーに移籍。

しかし、時代はフォーク・ブームからニュー・ミュージック・ブームへと移り変わり始め、1975年10月には、ジャズピアニストの山本剛を迎え、ジャズ、ブルース、フォークをベースとした名盤「酔醒(よいざめ)」をリリース。

 

 

今でこそ再評価され紙ジャケットCDで再発されるなど、名盤として誉れ高いアルバムとなりましたが、発売当時の評価は、それまでのフォーク・グループ古井戸とのイメージが変わったことにより、レビュー等でも酷評され売り上げも低迷。

二人はライヴハウスで充実した活動を継続しつつも、ニューミュージック全盛となった1970年代後半は、注目されることも少なくなりつつありました。

 

その後、古井戸としてソニーから1977年4月にシングル「ローリング・ストーンズが鳴ってた/20才になったら]をリリース。

 

 

大野雄二をアレンジャーに迎えた「ローリング・ストーンズが鳴ってた」は、時代に合わせたニュー・ミュージック・サウンドで挑むも、ヒットには至りませんでしたが、B面に収録された「20才になったら」は、シンプルなアコースティック・サウンドで、従来の古井戸のイメージを復活させた名曲となりました。

 

その後、CBSソニーを離れ、「酔醒(よいざめ)」発表から2年以上たった1978年5月、結果的には最後のスタジオ・アルバムとなったアルバム「SIDE BY SIDE」とシングル「チャンピオンが負けた日/抱かれた後で」をリリース。

 


 

同時発売となったシングルの裏ジャケットには、アルバムの告知も掲載されています。

 

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【古井戸 SIDE BY SIDE】

Side:A
01.DATE SONG Vo.加奈崎芳太郎 作詞・作曲/仲井戸麗市
02.大都会 Vo.仲井戸麗市 作詞・作曲/仲井戸麗市
03抱かれた後で Vo.仲井戸麗市 作詞・作曲/仲井戸麗市
04.恋唄 Vo.加奈崎芳太郎 作詞/門谷憲二 作曲/加奈崎芳太郎 
05.さよならマスター Vo.加奈崎芳太郎 作詞・作曲/仲井戸麗市    
Side:B
01.星空ダンスホール Vo.加奈崎芳太郎 作詞/門谷憲二 作曲/仲井戸麗市
02.Morning Soup Vo.仲井戸麗市 作詞・作曲/仲井戸麗市
03.Rhythmic Lullaby Vo.仲井戸麗市 作詞・作曲/仲井戸麗市
04.チャンピオンが負けた日 Vo.加奈崎芳太郎 作詞/門谷憲二 作曲/加奈崎芳太郎
05.雪便り Vo.加奈崎芳太郎 作詞・作曲/加奈崎芳太郎
06.夜奏曲 Vo.加奈崎芳太郎 作詞・作曲/仲井戸麗市

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【古井戸 SIDE BY SIDE】

 

ニュー・ミュージック・サウンドを古井戸なりに消化し、古井戸らしさも感じられるポップなフォーク・ソング集となっています。

私がリアルタイムで初めて聞いたのは、ラジオから流れる「さなえちゃん」でしたが、初めて購入したアルバムは、この「SIDE BY SIDE」でした。

音楽雑誌のレビューでは、”古井戸らしくないアルバム”として、酷評されていましたが、美メロでシンプルなアコースティック・サウンドは、とても聞きやすく、長い間、フェイバリット・アルバムとして聞き続けた1枚でした。

 

この後、古井戸は、ソロ活動にも力を入れつつの活動でしたが、1年後の1979年11月16日に久保講堂で9年間に及ぶ活動に終止符を打ち、加奈崎芳太郎はソロ活動、仲井戸麗市はRCサクセションに加入、1979年12月にラスト・ライヴの模様を収録したライヴ・アルバム「ラスト・ステージ」が2枚組アルバムとしてリリースされました。

 

LP「ラスト・ステージ」の歌詞カードには、「長い間、「古井戸」を愛してくれたすべての人々に感謝します。ーどうもありがとうー」というメッセージが添えられています。

 

久保講堂で行われたラスト・ライヴは当時、東京12チャンネル(現テレビ東京)系列の30分音楽番組で放送されましたが、現在はYouTubeに完全版がアップされており、リストアして商品化が望まれます。

 

 

古井戸解散直後は、加奈崎さんとチャボの交友関係も続き、解散後に開催された「唄の市ライヴ」では、加奈崎さんのステージにチャボが出演、また、加奈崎さんのソロアルバムにもチャボが曲を書き下ろし、レコーディングにも参加していましたが、その後、交友は途絶え、チャボが古井戸の作品のCD化を拒む等、1970年代のアーティストのCD化が続く中、古井戸の作品はCD化されず、中古レコードが高騰化する状況が続いていました。

 

1990年に「酔醒」、1991年に「ラスト・ステージ」のCD復刻、1993年に新編集のベスト・アルバムが2枚組CDとしてリリースされた後、2005年以ようやく待望のエレックレコード時代のオリジナル・アルバムのCD化が実現しましたが、ラスト・スタジオ・アルバムとなった「SIDE BY SIDE」だけは、CD化が実現しませんでした。

 

2002年には、日本の黎明期のロックをCD化するプロジェクトが「ハガクレレコード」で企画され、「SIDE BY SIDE」の初CD化が発表され、古井戸ファンを喜ばせましたが、結果的にはCD化されることはありませんでした。。。

 

 

一番下に「古井戸 サイド・バイ・サイド(初CD化)」と記載されています。

 

この後、「SIDE BY SIDE」のアナログ盤は中古市場で高騰し続け、1万円を超える価格となると同時に、多くの古井戸ファンもLPは持っているが、CD時代となりプレーヤーがなく、聞くことが出来ない。。等の声が多く聞かれました。

 

長い間、そのような状態が続いていましたが、昨今のシティ・ポップ・ブームが続く中、過去のシティ・ポップ・アルバムが注目され、UNIVERSAL MUSICから<CITY POP Selections>として、2022年6月29日に、大橋純子/泰葉/濱田金吾/山本達彦/ハイ・ファイ・セット/マザー・グース/りりィ/西郡よう子/上田正樹/フライング・キティ・バンド/GORO SPECIAL BAND/和田加奈子/林 哲司/古井戸の全25タイトルがリリースされ、リリースから44年、ついに「SIDE BY SIDE」が初CD化されました!

 

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<CITY POP Selections> By UNIVERSAL MUSIC
《第一弾》2022年6月29日発売/全25タイトル/税込¥1,650/限定盤
https://www.universal-music.co.jp/jp/city-pop/

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タワーレコード新宿店でも、山本達彦、泰葉などの作品とともに、紹介されていました。

 

 

限定盤ですので、古井戸ファンの方は、早めのご購入をお勧めします♪

 

古井戸は、2015年、チャボののデビュー45周年記念ライブ「MY NAME IS CHABO」で加奈崎さんと共演し、古井戸の楽曲を演奏した後、同年9月6日、東京・東京キネマ倶楽部、10月18日に長野・諏訪市文化センターにて「古井戸『再会』」と題し、ふたりきりのライブが開催されました。

私は、長野のライヴに行きましたが、二人きりで3時間以上にも及ぶライヴで、加奈崎さんが「自分にとってのご褒美ライヴ」と発言されていたのが、とても印象深かったです。

 

 

また、2019年10月に札幌で開催された「加奈崎芳太郎50周年記念コンサート」でもチャボと再び共演しています。

 

根強いファンが多い、古井戸ですが、シティ・ポップという切り口で、新たなファンが生まれ、再評価/アーカイヴが進むことに期待です。