空に輝く月。その姿は真円に近い。
窓から見下ろす桜が青白い光を受けて、玻璃細工の美術品のように闇夜を透過して浮かび上がる。
時折響くさざめきは、まるで聖歌のよう。凝った空気が染みるように溶けた。
静かに流れる時間。
窓辺で頬杖を突き、当てもなくぼんやりと外を眺める。
そんな夜だった。
忍び寄る睡魔もろとも虚ろな視界を切り裂いた一筋の光跡。
緩やかな軌跡を描き宙を踊るその姿に「きっと魔法使いだ!」…そう直感して、居ても立ってもいられず部屋を飛び出した。
* * *
「初めて逢った時もこんな夜だったよね?背伸びして一丁前な口をきくくせに、真っすぐ飛ぶ事もできなくて。」
踊っていると思ったのが、実は、空飛ぶ箒を制御できず暴走しているだけだった。
強がって必死に弁解する姿を思い出し、くすりと笑う。
「そうそう、あの時はゴメンね。興奮してモフルンを置いてきぼりにしちゃって。でも、そのお陰で、またリコに逢えたんだよね。」
記憶の足跡を辿るように、ゆっくりと桜並木を歩くミライ。
胸に抱かれたモフルンの瞳が、月明かりにキラリと光る。
夜が濃く遠近感が定まらない。或いは回想する記憶の密度がそうさせたのか。
突き当りの公園まで大した距離ではない筈なのに、その道はどこまでも果てしなく続くように見えた。
「お礼に願い事一つ、何でも魔法で叶えてあげる…そう言われて答えたのにあんな顔して。ホント、失礼しちゃうよね?」
翌日、この桜並木に戻りモフルンを見つけたところで、偶然、箒に跨るリコに再会した。
最初は相手にしてくれなかったけど、しつこく後を付いていったら失くした帽子を探しているんだって話してくれた。
黒い三角帽、本当に魔法使いの正装なんだって、ちょっと可笑しかったっけ。
昨晩リコに出逢った森を二人で探して、木にひっかかっている帽子を見つけた。
『私と友達になって下さい』
願い事を聞いて一瞬キョトンとした後、困ったような照れたような、でもどこか嬉しそうな表情を見せて、慌てて背けた顔。
そうして頬を赤らめたまま杖を一振りすると、リコは無言で空に舞い上がっていった。
「確かにお願いしたけどさ…リコったら、いきなり私と同じ学校に来ちゃうんだからビックリだよね。
『十六夜(いざよい)リコ』なんてなんちゃってな名前、思わず笑っちゃった!」
新学期に突然現れて転入の挨拶をするリコ。サプライズのつもりだったんだろうけど、一言くらい先に言ってくれてもいいのに。
容姿端麗・成績優秀。でも、体育で魔法使ったらヤバイって、普通分かるでしょ?
授業で積極的に挙手する姿。いきなり魔法界の話されたら、そりゃみんな戸惑うでしょ?慌てて不自然なフォローするこっちの身にもなってよ。
世界が元に戻ってリコがいなくなった日。みんなの記憶からリコの存在が消えている事を知って、スゴク寂しいと思った。その時の私の気持ち、分かる?
リコと過ごし笑いあった日々。私だけは忘れない。
でもそれは救いでも何でもなく、残酷な喪失感を痛感させる以上の意味はなかった。
…確かにリコはこの世界からいなくなった…
その実感は、寂しいと思う以上に、悔しいと思う気持ちを膨らませて、いつまでも心を圧迫しつづけた。
「ずっとずっと…いつまでも友達だ。そう思ってたのに…」
桜並木を歩きながら辿った記憶の道程。
出てくるのは何故か、愚痴めいたものばかり。
『記憶は美化され、絶対化される』
でも、そんな記憶はきっと、気持ちの整理がついたものに限るのだろう。
気持ちの整理。
それは、“記憶の中の存在”が死を迎え、単純な情報へと変化する事を指すに違いない。そして、記憶の中だけに生き、“日常”からは姿を消した存在に、懐かしさ以上の感情は起こらない。
でも、そんな風に割り切る事なんて到底できない。
ミライの中の“リコの存在”は、今でも活き活きとしている。眩い景色の中で呼びかければ、リアルな躍動感を持って振り返った。
「私の中のリコは、今でも…笑いかけてくれてるよ…」
癒されぬ寂しさと、若干の八つ当たりの色を帯びた追憶は、目の前に立ちふさがった大きな桜の木によって中断された。
寂しさを迎えるように、夜の孤独な空気が辺りを取り囲む。
花はとうに散り、伸びた枝に茂った葉が夜に一層深い影を落としている。
蒼穹は群青に変わり、落花の無常は錯覚の定常へと姿を変えた。だが、薄闇に浮かぶシルエットは、リコの姿を欠いたまま。
巨木を前に、祖母から聞いた言葉を思い出す。
…このソメイヨシノは、人との共存により自らを保存する道を選んだのかもしれないね…
多くの桜がそうであるように、ソメイヨシノにも自家不和合性がある。
他家受粉…異なる品種としか種子を作れないため、自然繁殖した場合には“ソメイヨシノ固有”の美しさが損なわれる恐れがある。
だから人は、この美しさを保存するため、オリジナルのクローンを人為的に広げた。
「満開の花を咲かせた美しいあなたにまた逢いたい。皆がそう思うから、あなたはここにこうして在るのね?」
自家不和合性は種の繁栄における一戦略に過ぎない。
原種を絶えさせないため、ソメイヨシノ自身が生存戦略の一環として、人の美的価値に訴えかけた。そう見るのは傲慢なロマンチシズムと言えるだろう。
だが、短命なソメイヨシノにあって、実際に200年の時を生き続けている事実…
『一緒に生きたい…そう願う心に寄り添った生』、それくらい迂遠な表現であれば許されるのではないか。
「…一緒に生きたい…そう願う心…」
意識が現実に戻り、何ともなしに心中に浮かんだ考えを、確かめるように口中で呟く。
木々の擦れる音さえ聞こえない、静まった夜気が耳に痛い。
…カランっ…
長い沈黙を破る乾いた音。
頭上から落ちてきたのだろう、俯いたミライの視界の端に桜の枝が映った。
さして疑問にも思わず無心のまま手に取り、何の変哲もない枝を見つめること数十秒、おもむろに振りかざす。
「キュアップ・ラパパ!今ここで、魔法界のみんなに逢える‼」
… … … …
「なんて…そんな事、ある訳ないよね?」
寂しい笑顔を浮かべて指の力を緩めると、地面に落ちた枝が再び乾いた音を響かせた。
「バカみたい。もう、魔法の力なんてないのに。」
振り向き、来た道を戻る。
「バカみたい。そんな奇跡、ある訳ないのに。」
モフルンを抱く腕に力を込め、顔をうずめるように目を伏せる。
僅かでも期待を持った自分に苛立ちを覚え、自然と足早になる。
「バカみたい。もしかしたら…」
もしかしたら…、人間界のみんながそうだったように、魔法界のみんなも…リコでさえも…私の事、忘れてるかもしれないのに。
更に歩調を早めようと大きく踏み出した時、足がもつれ、前のめりに転んだ。
こみ上げる思い。倒れた姿勢のまま地面に顔を伏せ、溢れ始めた涙を隠した。
「バカみたい…バカみたい…!!」
消え入りそうな声が夜の闇に吸い込まれる。
自分の馬鹿らしさがいたたまれず、堪らない気持ちになる。惨めさと悔しさ、奇跡に裏切られたと逆恨みするような苛立ちがない交ぜになった気持ち。
自分自身の気持ちもよく分からないぐちゃぐちゃの胸中に、唐突に祖母の言葉が蘇った。
『逢いたいって願う純粋な気持ちを失くしてなければ、きっと奇跡は…魔法は起こる筈よ?』
… … … …
「そんなの…嘘だよ…」
地面に突っ伏したまま、身動きができなかった。
夜気に冷やされた地面が体温を奪う。
…そんなの嘘だ…
何も考えられなくなった頭の中で、そう否定した筈の祖母の言葉が何度も胸にこだまする。
『いつか何処かでって漠然と思っていても、それはきっと叶わない。そうして心が疲れて、いつか自分の世界を飛び越える力を失っちゃうの』
『誰かの事を強く思って、繰り返し言葉にすれば、きっとそれは届くんじゃないのかな?』
『そうして手を取り合うように結ばれた心…一つになった心が叶える奇跡を魔法と呼ぶ…そう信じてるの』
顔を上げると、涙で景色が煙った。
止めどなく涙が零れた。
祖母が最後に告げた言葉が激しく胸を抉る。
『…お婆ちゃんみたいに、後悔だけはしてほしくないから…』
瞼を強く閉じると、腕に力を込め、強く地面を蹴った。
整理の付かない気持ちに突き動かされるように。
涙を拭う事も忘れ、何度も躓きそうになりながら、花を落とした桜の巨木に向かって走る。
無我夢中で走り続けると、煙る視界に溶けた闇の色彩は消え、目の前を幾重もの花弁が過った。
穏やかな日差しを浴びた無数の切片。終わらぬ桜吹雪。
幻と否定する理性よりも、懐旧の念が勝る。いつか二人で歩いた桜のアーチ。
巨木の前に辿り着くと、息を整える間もなく、無造作に転がったままの桜の枝を手に取った。
思いを握りしめるように拳に力を込めると、身体を起こすと同時に迷う事なく右腕を振りかざす。
「キュアップ・ラパパ!魔法界のみんなに逢いたい!!」
何度も振るう。
何度も叫ぶ。
「キュアップ・ラパパ!魔法界のみんなに逢いたい!!」
「キュアップ・ラパパ!魔法界のみんなに逢いたい!!」
「キュアップ・ラパパ!魔法界のみんなに逢いたい!!」
腕が上がらなくなるまで、何度でも。
「キュアップ・ラパパ!みんなに逢いたい!!」
声が枯れるまで、何度でも。
「キュアップ・ラパパ!みんなに逢いたい!!」
この気持ちが届くまで、何度も、何度も…
「キュアップ・ラパパ!みんなに逢いたい!!」
「キュアップ・ラパパ!みんなに逢いたい!!」
「キュアップ・ラパパ!……!! ……‼」
もう腕を上げる力はない。声を上げる事さえ叶わない。
それでも枯れる事のない涙は、今尚降り止まぬ幻想の花弁を映し続けた。
木々の隙間から零れる光と戯れる散り桜。風に揺れる枝が落とす影と交差する粒子。この一瞬という時が織りなす刹那の舞踏。
淡くも眩い世界は、その美しさ故に、どうしようもなく儚い存在感を一層際立たせた。
…気持ちの整理…
消えない記憶がこうまで人を苦しめるのか。
塗り替わる事のない現実が、棘の刺さった心に沁みた。
「キュアップ・ラパパ……、この気持ち…届かないの?
…逢いたい…
…リコに…リコに、逢いたいよ……」
俯き、呟く。
“現実”を受け入れた涙。
それでも願う事を止めない、純粋で真っ直ぐな気持ちが零した一粒の滴。
月明かりを反射しながら、重力に抗うようにスローモーションで落ちる。
空気抵抗を無視して球体を保ったままの表面に、湾曲して映し出された月と木々…ブルームーンに深緑のビロード。
自らを欠く他方の糧となる…相互包含の太極図を思わせる映像は、やがて境界が曖昧になり、一つに溶けあい、その色彩を徐々に薄桜の淡色に変える。
『一粒の涙に世界を感じ、一輪の花に天国を見る。
キミの掌の内に無限を、一刻の内に永遠を握る』
遥か彼方の世界に誘われるように、重ねられた遠い記憶。
煌めく涙の結晶の中で、桜のアーチを潜るミライとリコの背中が、今はっきりと、像を結んだ。
落下した涙が、ミライが手にする桜の枝に触れた瞬間、内側から迸った強烈な光。
四方に弾けた涙滴の欠片が舞い散る桜に姿を変えると、次の瞬間、凄まじいつむじ風が立ち上がった。
天に立ち昇る桜吹雪の螺旋。再び動き出す刻。
「何が起こっ…!?」
思わず庇うように両手を顔の前にかざしながら、固く目を閉じるミライ。
全身を叩きつける風。身体を貫く加速度。
四肢に浮遊感を感じながら、突風に慣らすように薄っすらと片目を開けた。
「…… … … っっ!?!?」
眼下の闇に広がるオレンジ色の灯り。
人の営みを感じさせる暖かな光に、遥か下方に街があると直感した。
一瞬訳も分からず思考停止に陥った後、ハッと視線を巡らせて、ようやく自分が空高く舞い上げられたと気付く。
落下している様子はない。一瞬の驚きはあったが、不思議と恐怖は感じない。
疑問が頭をもたげる前に手に握られたものを確認し、起こっている事態を確信した。右手に輝く魔法のステッキ。
「これってやっぱり、魔法…だよね?
…あ、あれっ!?ってゆーか、モフルンはっ!?!?」
慌てたように手足をバタつかせるが、宙を舞う身体は思うように動かない。
突風に煽らる中、無意識にモフルンを離してしまった迂闊な自分を呪った。
「う、うそっ!!見つからない?やだ、どうしよ…!?」
忙しく首を巡らすが、モフルンの姿はどこにも見えない。
無理な姿勢のまま背後の死角に視線を飛ばそうとすると、突然勢いよく身体が回り始めた。
身体を持ち上げる突風は弱まる気配を見せず、回転は更に速度を増す。
「わ…わわわ…っっ!?」
攪拌された視界に飛び込む月と街の灯り。
尾を引く残像の光が真っ暗な視界を塗りたくり、モフルンを探すどころではない。動揺して無理やり姿勢を立て直そうとすると、あらぬ方向に身体が回転する悪循環を招いた。
気が動転しかけたその時、回転する身体が突然ピタッと止まった。
まるで、“魔法”にでもかけられたように。
「こら!モフルンは大事な友達でしょ?
どんな時も離しちゃダメじゃない!」
解放されたばかりの身体を射抜くように、頭上から投げ掛けられた声。
反射的に全身が硬直し、目が見開かれる。
大人びた声。懐かしさで胸がいっぱいになる。
間違いない。間違える筈がない。
見開いた目がゆっくりと細くなり、目尻にうっすらと優しい笑い皺が寄る。
…逢いたかった…
目の端から、新たな涙が溢れ始める。
…ホントに逢いたかった…
風に煽られ、零れた涙が頭上に散った。
きっとその滴には、まだ見ぬ未来の風景が刻まれるのだろう。
今度は二人を引き離すものは何もない。
かつて別離の痕跡となった宙を舞う涙は、今度は二人の奇跡の再会の証跡に変わる筈だ。
くるりと身体を反転させ、枯れた喉で力いっぱい叫んだ。
「ずっと…」
「ずっとずっと…逢いたかったんだからっ!!」
…ん? (つд⊂) ゴシゴシ
…んんっ!? (つд⊂)ゴシゴシ
よかっ……たぁぁぁ~~~~~っ!!!!ε-(´∀`; )ホッ
一瞬、リコが武者ドルに見えて焦ったよ!?
気のせい、気のせい!⊂(^ω^)⊃ セフセフ!!
∧_∧ パーン
( ・∀・)
⊂彡☆))Д´) <…って、なるわきゃねぇーだろっ!?(爆)
つか、クライマックスに使うこのイラストは、CG彩色前提で敢えてラフじゃなく線画を意識して書いたのに、これを素のまま上げるってどういう了見よ?(;´Д`)
これを「完全版」と言い張れるなら、もう世の中の少年漫画から、ボス格キャラの完全体への変身なんかもほぼほぼ不要になっちゃうよ(謎)
まぁ、イラストのクオリティ推移を、「私は後、3度変身します」的なセリフとのアナロジーと見れば、ある意味「武者ドル」を「最終形態」と見做す事もできると言うものか?…(ヾノ・∀・`)ナイナイ
…という事で、これも気が向いたら、イラスト差し替えします(´-ω-`;)ゞ
「敗走兵アイドル」に…って、結局差し替えるのそっちかいっ!?( '-' )ノ)`-' )ペチン❤(爆)
- Epilogue -
この夜、奇跡の再会を果たしたミライとリコ。
この再会が、かつてリコが唱えた一夜限りの魔法の力だったのか、それとも再び世界が一つになった…二人の絆が叶えた永遠の奇跡だったのか、それは分からないもふ。
もしも、いつかまたお別れの瞬間が訪れるなら、それはきっと悲しい事もふ。
でも、どんなに離れ離れになっても、心は繋がっているもふ。色褪せる事のない大切な強い思いは、何度でも奇跡を起こすもふ。
だからモフルンは、悲しい未来を想像する代わりに、今ここにある喜びを全部残さず受け止める事にしたもふ。
『大切な人がここにいてくれる。ただ、それだけの喜び』
…ミライ、リコ…
…ありがとうって言える喜びをくれて、本当にありがとうもふ…
* * *
これは二人の少女と、命を宿したぬいぐるみが描いた「絆の物語」。
そして「Book of Principle Cubed/ Astral Stream」…三人の<プリキュア>が生み出した「奇跡の物語」。
この物語は、これで終わりではない。
きっと、この限りなく純粋で、どこまで強い心が途絶えない限り、この終わりなき物語はいつまでも続くのだろう。
その心はきっと誰かの心を打ち、誰かの心に響き、そうして再び新たなページが綴られていく。
そして、新たな物語を紡いでいくのは、もしかしたら、今ここで三人の絆に触れた目の前にいる誰かかもしれない。
だから、この物語の締め括りとして、まだ見ぬ最後のページに一文を書き加え、一旦筆を置く事にしたい。
『大切な人を強く思う心があれば、きっと奇跡は起きる。
そしていつか、二人の世界は必ず結ばれる。
そう、魔法をかけたから!』
『キュアップ・ラパパ!!』
Principle Cubed - Everlasting Friendship(完全版)
[Chapter.III] Last Episode <記憶に咲く桜の思い出に埋もれて>
Happily ever after.
...and This is a Never-Ending Story!!
【関連】Principle Cubed - [Chapter.I] Episode.1 <厄災>
【関連】Principle Cubed - [Chapter.II] Episode.1 <混沌>
【関連】[9Tの新年会2017] 6日目 ~魔法~(後編)
※新年会コンテンツ公開時の総括文。
【関連】Pretty Cured Good Things - Road to The Grand Princess -
※『Go!プリンセスプリキュア!』をモチーフにしたショートストーリ。
今回ここで付けたオチは、物語を成立させる上ではあってもなくてもどちらでもいい。
つか寧ろ、物語のクオリティを追求するならば、ない方が遥かにマシである事に疑いはない(爆)
だが、それではただの物語だ。
ネットという不特定多数を相手にするメディアでの公開…ブロガーと言われる人物像の平均値として、相応の自己顕示欲があると思われるかもしれないが、実際のところ自分には公開する事自体に対する美徳はない。
ならばこの文章にはどんな意義がある?…せいぜい独り言が思わず漏れた程度が関の山だろう。
だから、この“人と人の絆”を描く物語のエンディングをどうするか、本当に迷った。
そして結果的に、今回もこの終わりを選んだ。
最も、ただ同じ事を繰り返すだけでは芸がない。だから今回は徐々にイラストの完成度が向上していく中で最後にまさかのアレが再登場という落としどころにした(苦笑)
思い返してみるとこのカテゴリ…「ショート・アソート」は、全てのコンテンツにおいて“人との繋がり”が背景にあったと言える。決して狙ったわけではないが、結果的にそうなった。
ここで繋がりを持とうとした相手は架空の人物ではない。実在する生身の人間だ。
これまで公開してきた物語が何らかの役割を果たしたか?良好な関係性構築を助ける連結子として機能したか?
そこは決して重要ではない。活字にできる程度の言葉の存在など、相対的に小さくはないが、かと言って大きくもない。
結局は言葉…物語などきっかけに過ぎず、最終的には人そのものの魅力に集約されるのだろう。
今となっては現実に果たした成果など知る由もないが、ただ少なくとも、自分の中では決定的に意味は変わる筈だ。そんな風には感じている。
特定多数という“場や空間”に相当するものを相手取る形態は変化し、指向性も必ずしも内から外ではなくなる。
そうして、忘れられるだけの独り言に過ぎなかった物語も、形ある大切な記録になる。
だからこそ、今回も懲りずに、この終わりを選んだ。
Short Assort | Shut or Sort
人の生は、総じて周囲の人間との集合体の内に語られる。
思うに、そんな中で身辺を…とりわけ心の在り様を整理するには、何かを拒絶するか、何かを分類して受け入れるか、どちらかしかないのだろう。
ボク達が生きる、時に短く時に長い人生において、ふと浮かび上がる物語は余りにも雑多だ。
その全てが万人にとって耳障りがいいなんて事はありえないだろう。
だから、拒絶されても構わない。
ただ、いつも真剣な事を語る時には照れ隠しのように笑いを交えていた奴がいた…そんな風に“分類”し記憶の片隅にでも留めていただけるのであれば、これ以上の僥倖はない。



