英検の受験者数はなぜ増加しているのか
【質問】
英検受験者数は近年急激に増加しているようですがその理由は何でしょうか?
それではまず、実際に英検の受験者数が増加しているか以下の日本英語検定協会が公表している受験者数データを見てみましょう。
1.実際の英検受験者の過去5年間の推移
上記から見てもわかる通り、2023年度の英検全受験者数は約450万人で、受験者数はコロナ渦こそ減少していますが、軒並み上昇しています。
特にコロナ渦以降では、中学高校の受験者数が堅調に推移しています。因みに2015年の英検は約320万人超が受験しているので、その当時から比べても既に130万人近く増加しています。
この数値で一つ気が付いたことがあります。それは、「その他」に分類される受験者層が2019年と比較すると2023年には約25万人増加しているというところです。これにより、英語が教科として導入された小学校以下の受験者数を抜き去り、中学高校の次に来る層へとランクアップしています。
この顕著な増加(4年の間に64%激増している)は、一体何を意味しているのでしょうか。こちらについては後述します。
2.英検受験者が急激に増加する期間にあった教育制度変革
- 小学校での英語教育の必修化: 小学校での英語教育が必修化されたことにより、早期から英語学習に取り組む人が増加し、英検受験者数の増加に繋がっていると考えられます。
- 大学入試における英検の活用: 大学入試において、英検のスコアが優遇措置として活用されるケースが増加しており、受験者数の増加を後押ししていると考えられます。
3.英検の社会人受験者層の顕著な増加
先ほど言及した「その他」の分類ですが、一体この層は具体的に何の層に該当するのでしょうか。これは学生層ではありません。いわゆる社会人層です。この社会人の層には、就労している人の層、主婦(夫)層、シニア層及びその他の層が含まれます。
これらの層の受験者が英検を受験する理由は、おそらく間違いなく、国内の国際化の影響が一因であると思われます。現在コロナ渦が終了して、観光客、就労者含め外国人の数の流入が激増しています。街を歩いても、コンビニに行っても以前では考えられないほど外国人と思われる方々に遭遇します。
先日、京都に旅行に行きましたが、金閣寺方面に歩いている大勢の行列は私を除いてほぼ全員外国人でした。つまり場所によっては、日本人が既に少数派、マイノリティになっているということを意味しています。
彼らの多くは、日本語を理解しません。
聞こえて來るのは、流暢な外国語の言葉です。その中で私が唯一ピックアップできるのが英語です。そういう日常に暮らしているという現実を日本人の多くは今感じていると思います。そしてこのトレンドはもうリバース不能だと思われます。
この内なる国際化が、英検受験者数の伸びとなって顕著に反映されていると思われます。
第二に、ITの進展は留まるところを知らず、既にオンライン教育は、完全に日本に普及浸透しています。場所や時間に拘束されることなく、これまでと同等以上の質の教育が受けられるということがそのトレンドを後押ししていると推測できます。現金を使っている人が少なくなっているのと同じで、技術は慣習を凌駕し日常を変化させています。
上記の変化に伴い、米国公認会計士試験同様、英検でもCBT(Computer Based Testing)試験が採用されており、これもフレキシブルな試験日程を組むことが可能なため、社会人層の受験者数を増やしている要因であると思われます。
英検は、リーディング、リスニング、スピーキング、ライティングというコミュニケーションに必要なすべての能力(英語4技能)を対象にしています。国内の国際化により、これらの全てが求められる時代に入って来ているこを改めて再認識されたことが英検受験者のその他分類の増加に繋がっているのでしょう。
要因の考察まとめ:
- 社会人の受験者の増加:グローバル化が進む社会情勢の中、キャリアアップや自己啓発の為に英検を受験する社会人が増加していると考えられます。
- コロナ禍でのオンライン学習の普及:コロナ禍においてオンライン学習が普及し、自宅でも学習しやすい環境になったことも受験者数増加の要因の一つと考えられます。
4.2025年4月東京証券取引所プライム市場に英文財務諸表開示義務化
本件の詳しいことはまた別の機会に詳述致しますが、教育制度の英語教科への導入や、外国人の流入による内なる国際化だけでなく、その他の受験者層を増やしている要因として考えられるのが、プライム市場に上場している全企業に対する英文財務諸表の開示義務化です。
いよいよ、本当にこの時代がやってきてしまいました。
というのも、日本国内において政府行政機関以外の組織が英語で公式文書を作成し、公開するということが法制化(上位法の金融商品取引法に委譲された根拠規定は有価証券上場規程第445条の8)されたのが、歴史上初めてではないかと思われるからです。この社会的なインパクトは、江戸時代、横浜港沖にマシュー・ペリー提督が黒船の米国艦隊を率いて開国を要求した歴史と同じ状況を連想させます。
証券市場は、上場している企業をランク分けして分類しています。その頂点にあるのが、プライム市場であり、所謂超有名企業やグローバルカンパニーが犇めいています。企業は会社法や、金融商品取引法などの法定規則に準拠するだけでなく、伝統的に頂点に君臨するプライム市場の企業組織形態や財務報告プロセスを模倣する傾向があります。従いこの英文開示は、東証スタンダード市場、東証グロス市場、他の国内証券市場から非上場の日本国内の企業に隅々にまで財務諸表の英文開示が浸透していくものと思われます。
この東証プライム市場上場企業に対する英文開示義務化は主に海外投資家からの要請です。では、海外投資家というのは誰なのかという問題ですが、これは一言で言って海外機関投資家、いわゆる黒船です。
金融庁はこの黒船の正体を2024年12月20日に開かれた「第1回 有価証券報告書の定時株主総会前の開示 に向けた環境整備に関する連絡協議会」の事務局説明資料の中で、以下の通り明かしています。重要なのは資産規模の総額です。良いでしょうか、覚悟して見てください。
※ICGN(International Corporate Governance Network)の概要 • 世界の主要な機関投資家等から成る国際団体(本部:ロンドン)。1995年設立。 • 中心メンバーは、ブラックロック、フィデリティ等の運用機関や、CalPERS(カリフォルニア州職員退職年金基金)等の公的年金。会員は45 か国、300以上の団体(資産規模計77兆ドル超)
資産規模計77兆ドル超
これは日本円換算で軽く1京円を超えているということです。
この単位を会計の世界で見ることも、現実の世界で見ることもでもほぼありません。せいぜい数百兆円くらいじゃないでしょうか。因みに日本の国家予算(約500兆円)、GAFAMの時価総額(各社数百兆円)です。というか現実に存在する資産規模としては初めて見ました。
日本の国家予算の凡そ20倍を超える資産規模を有する投資機関団体。
これが黒船の正体です。
つまり黒船の来航により開港を余儀なくされた顛末と同様に、外部圧力によって再び今日本が変革する時だということです。
このことをネガティブに捉えてはならないと思います。
これをきっかけにして明治時代が幕開けし、日本は近代国家への礎を築いてきました。
話が少し逸れましたが、この2025年4月東京証券取引所プライム市場に英文財務諸表開示義務化
このインパクトは、既に多くの特に企業やそこで働く人々、社会人層、英検のその他の層に少なからず影響を与えているというのが私の考察です。
-ご紹介-
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