『Time value of money(貨幣の時間価値)』とは何か? | 米国公認会計士(USCPA)のサイド・ファイア

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  1.Purchasing Power of Money(貨幣の購買力)とTime Value of Money(貨幣の時間価値)

貨幣というものには、消費者が、経済社会において物品を買うPurchasing power of money(貨幣の購買力)を与えるだけでなく、もうひとつの物的・時限超越的な価値としての強力な側面がある。

 

一言で言ってそれは、貨幣の時間価値である。

 

米国公認会計士だからといって、ここで何か取り分け複雑な理論を用いて割引現在価値とかNPVメソッドとかを小難しく説明しようとしているわけではないので安心していただきたい。

 

要は、貨幣の時間価値とは、貨幣には時間的な価値がありますよという根本概念のことをお伝えしたいのである。

 

もう一度言うと、貨幣には、時間的な価値がありますよなのだ。

 

これを究極的に簡潔に説明すると、貨幣を持っているとその価値は時間とともに増大していきますよと。

 

つまり、貨幣×時間=貨幣の価値増加という図式が成り立つ。同時に貨幣の時間価値は、貨幣≠時間という概念も包摂している。したがって完全に貨幣が時間と入れ替え可能ということではもちろんない。

 

問題は、完全にではないとすれば、どれくらい入れ替え可能な価値があるのだろうか。

 

たとえば、あなたが1000万円を現金で今持っているとする。

 

そこにもう一人の一文無しのあなたがいて、1000万円のあなたに必死で追いつこうとする。手段として、選んだのは時給1000円で一日8時間働くということだ。勿論休息も必要だろう。なので、週二日は休むことにする。

 

さて、無一文のフリーアルバイターなもう一人のあなたが、リッチな1000万円を持っているもう一人のあなたに追いつくことができるのはどれくらいの時間が必要だろうか。

 

答えは、4.78年。

 

なんだ、大したことないじゃんと思うかもしれないが、これを時間に換算すると、なんと10000時間に相当するのだ。

 

人は何かひとつのことに10000時間を投入すると、最早誰も追いつけない神レベルの無双状態に到達するらしいが、正にその時間を全身全霊でバイトに投入することになるのだ。

 

しかし、この4.78年は余暇はおろか、飯も食わず、健康保険や年金、税金も家賃も、光熱費も携帯電話代も交通費も一切払わず全額を全力で貯めた場合の理論値であり、現実は、その半分にも余裕で届かないのではないかと推測する。

 

そこで、この理論値に現実的なファクターを加え考察すると、すれすれ、かつかつの最低限の社会生活を営むために、この年月を2倍してみることにする。

 

すると9.56年。つまり、ざっくりと、1000万円を持っているあなたに、一文無しのあなたが追いつくのは約10年かかるのだ。

 

1000万円というお金の価値を時間的尺度で表した場合、1000万円≠10年という時間価値が生まれることになる。

 

この図式からは、時間×労働力=貨幣の発生が成り立つ。

 

つまり、貨幣を得るためには、働かないと稼げないので、時間がかかりますよ。でも1000万円が今必要なのに、10年以上もかかるので、誰か貸してくれませんかねとなる。だから、貨幣には時間的に価値があるのですよということである。

 

その時間的な価値を測る尺度が金利なんですよ。ということだ。

 

これはあらゆる貨幣を仲立ちにしたあらゆる取引に共通して作用する万物普遍の法則だ。

 

  2. Exchange Value of Money(貨幣の交換価値)とTime Value of Money(貨幣の時間価値)

現代人は、お金には価値があるという。それは、当たり前だが、必要なモノ、欲しいモノを手に入れるためにはお金が必要であり、それを手に入れるためには、お金を使う(金銭消費する)必要がある。だからお金には価値があると考えている。

 

この図式からは、貨幣=交換価値が成り立つ。

 

敷衍していうと貨幣には購買力と交換価値があって、さらに時間価値がある。

 

先ほど簡単に説明したように、貨幣にはそれを手に入れるために必要な時間が掛かるため、時間的な価値があると説明した。

 

人は労働(時間とエネルギー)の対価としてお金の価値を経験的に把握しているから貨幣が時間的にも価値があると言われればなるほどと思われるだろう。

 

実は、本当の貨幣の時間価値というのはこれで終わりではない。

 

先ほど、単純比較計算で、10年分の時間価値が生まれると申し上げたが、正確に言うと10年ではないのだ。

 

貨幣には、すでに存在し、保有している貨幣自体(先の例では1000万円)にも、貨幣の時間価値が生じている(貨幣×時間=貨幣の価値増加)ためである。

 

貨幣の時間価値は金利で測られる(Expansion Factor)。その基本利率を決定しているのは国であり、発行された国債の金利がベース(Risk Free Rate)となって、その他あらゆる金利が決定されてゆく。(Risk Free Rate + Risk Premium)

 

例えば、先の例の1000万円を銀行預金に入れておくとする。そうすると預金の適用金利が年利2%であれば、銀行口座に預けた1000万円は、1年後1020万円になっている。この1020万円は、翌1年後に、1040.4万円に、さらに翌1年後に1061.208万円にと、更にその1年後に1082.432万円となり、やがて10年後に1218.994万円に膨れ上がっている。

 

合計額が1200万円でないのは、元本が稼いだ金利を、また元本に組み込み、増大した元本からまた金利を稼ぐという複利計算を適用しているからだ。

 

こうしてみると、先の例の一文無しのあなたが、10年後のあなたに追いつくのに、11.721年掛かるということになり、更に約2年近くプラスして働かないと追いつかないことになる。労働時間が、1.721年延びた理由は、元の1000万円が貨幣の時間価値を生み出し、お金がお金を作り出したということになるのだ。

 

本当のことを申し上げよう。一文無しのあなたが11.721年掛けて、最初に1000万円持っていたあなたに会いに行くと、先の1000万円持っていたあなたは、この間に、100万円の自己投資をして、必死に勉強して専門的な資格を取得し、正社員となり、給料が上がり、ボーナスが支給され、更に残りのお金を全部投資に注ぎ込んだ結果、実は資産がもう5000万円になっていたのだ。

 

ただ黙々とフリーターとして、11.721年間も働いて、貯めたお金を箪笥預金していた元一文無しのあなたにとってはこれは痛すぎる状況だ。

 

これが貨幣の時間価値に対する私の本質的な考え方だ。

 

単純にもっていた1000万円に金利がついたというだけでなく、貨幣の時間価値はそれを加速度的に増大させる機会を与えるということである。

 

資産そのものの増大率(資本収益率)は労働対価の増大率(経済成長率)に勝るというトマ・ピケティのr>gの法則にも似ている。

 

次に、お金の使い道という基礎的な習慣にについて考えてみたい。

 

消費のために、お金を物に転換してしまうと、このTime value of moneyの連鎖が断たれることが分かる。

 

もちろん物に価値はないとは言わないが、減価償却の会計原則からも、物理的な経年劣化の観点からも、物は所有することによって、その価値を時間とともに低減してしまう。

 

減価償却というのは、土地のみを例外として無形資産も含めたすべての物品について回るが、経済的便益や用益潜在力、超過収益力のないものはそもそも資産に計上できない。

 

因みに、都内の新築マンションは30年で価値が70%下落すると言われている。これは建物の価値が時間の経過と共に減価しているためである。

 

だが、お金というものそれ自体に、減価償却や経年劣化による価値の低減という概念はない。

 

物は、いったん所有してしまうと、半永久的に、保管費、維持費などの付随費用が延々と発生してゆく。物を所有(しすぎる)という経済行為は、リスクなのだ。

 

しかし、お金(現金)を金融資産で保有していれば、貨幣の時間価値によって、その連鎖はいずれ、お金がお金を生み出すという好循環を作り出していく。

 

さらに、現代は、既にキャッシュレスの時代に突入した。

 

キャッシュレスの時代では、現金は物的に所有したり、持ち歩いたりする必要がなくなり、スマホ一つで電子的に転送(電子送金)したり、決済することも可能な一方で、物体を転送する技術は今のところ生み出されていない。

 

そして、オンラインバンクは保管費・維持費も発生しない。回数制限はあるが送金や引出しも無料であり、超優秀なバンカー達が重厚な保安セキュリティーシステムを駆使して日々あなたの現金をただで守ってくれているのである。

 

最近巷では、レンタルボックスと呼ばれるものを至るとことで目にするが、あれは確実に保管費が掛かっている。保管費だけでなく輸送費も掛かる。家の中ではモノがあふれ返り、手狭になったのでもっと広いところに引っ越そうとなる。引越しは輸送費であり、広いところに引っ越すというのは保管費である家賃コストが上昇することを意味する。しかし肝心の中身(モノ)は、時間の経過と共に価値が低減していく。

 

貨幣には、時間価値があるので、このような時間の経過による減価が起こらない。逆に時間の経過と共に価値が増えていく。

 

いやそう言ったって、お金にはインフレという弱点があるでしょう、あれは、時間の経過と共に貨幣の相対的価値が下がっていくということでしょう?

 

確かにそうである。ただ、一つ言えるのは、あなたはどこからモノを買っているのか?ということである。

 

それは、モノを供給している企業のはずだ。その企業或いは産業全体が価格決定権を握っている。

 

インフレによって仕入れコストが上昇すれば、当たり前のように企業は価格を上げる。価格(売価)を上げているのだから、利益が減るということは理論上はあり得ない。だから、インフレを回避する方法は株式に投資するか、そのまま銀行口座に入れておくかそのどちらで良いのではないだろうか。

 

一番良いのは、株式投資だと思う。

理由は左記の通り、投資した企業は、インフレを価格に反映させるため、それ自体で損失を蒙ることは避けられる。そこから得られる配当や株価の上昇で補えば、インフレ分を減殺可能だ。ただしインフレ時には政府が利上げ介入してくるため、景気後退局面に陥る可能性があり、その場合株価は下落していく。

 

インフレ時に第二に取るべきベストな選択肢は、銀行口座に入れたまま何もしないである。その理由は嘗て日本に猛烈なインフレが襲った高度経済成長期、しかもオイルショックの渦中に銀行の普通預金金利は4%台、定期預金金利は7%台をたたき出していたからだ。これはインフレ率を押し下げるためにFRBが何度も利上げしている現在のアメリカの状況(2022年)を見れば明らかである。

 

皮肉なことに、金融市場では、金利が上がれば、債権が買われ、株価が下がるという逆相関があるが、実は株価が下がっていくその時こそが絶好の株式投資に於ける買い場なのである。

 

私はここで、投資を推奨しているわけではないし、お金の稼ぎ方を指南しようとしているわけでもないが、貨幣の時間価値と物の特性を理解すれば、次に取るべき選択肢もまた見えてくるのではないでしょうかと言いたかったのである。