エレファントカシマシ『RAINBOW』に渦巻く混沌としたエネルギー | ラフラフ日記

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主に音楽について書いてます。

ロッキングオンジャパン最新号(2019年2月号)の宮本浩次のインタビューを読んで、過去に書いたこの『MASTERPIECE』についての記事を思い出した。

バンド幻想を超えた先に

『MASTERPIECE』はエレファントカシマシの最高傑作だ!とそのとき思った。

私たちはいよいよ『MASTERPIECE』の先の景色を見ることができるのか!?

いやいや、『MASTERPIECE』(2012年)の後には、『RAINBOW』(2015年)も『Wake Up』(2018年)もあったじゃないか。それは、その先の景色ではなかったのか?

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エレファントカシマシ、2015年のアルバム『RAINBOW』。

タイトルトラックである「RAINBOW」は、2015年の野音で初披露され、もうその瞬間からファンの間で凄い!凄い!と大絶賛だった。大絶賛というより、大興奮という感じだったか。そしてそれはファンも飛び越えていったと思う。



私もこの「RAINBOW」の持つ只ならぬオーラやエネルギーに圧倒されたけど、どこか手放しで絶賛できない自分がいた。なんてことは、おそらく今日はじめて告白する。

というのも、周りもみんな絶賛していたし、曲が凄いのもわかったから、乗れない自分が少し悲しくてそんな自分に少し失望して、そのままやり過ごしていたから。

だから今、宮本の最新インタビューを読んだからといってこのことを書くのは後出しジャンケンのようだけど、あのときの私のかすかな戸惑いはこれだったのか?と思うところがあったから。

2015年の私的年間ベストアルバムでも、『RAINBOW』は 7番目にそっと挙げてるし(RAINBOW だから 7番目にしたんだけどね)、どこか腰が引けてるのがわかる。
かろうじて、「洗練に向かった音」とだけ書いている。

「RAINBOW」およびアルバム『RAINBOW』、素晴らしい、素晴らしいけれど、

これはもはやエレカシのサウンドなのか?

そんな思いが私の心のどこかに生まれたんじゃないか。私はその戸惑いに蓋をしてしまった。だから今日まで(宮本のインタビューを読むまで)考えないようにしてきてしまった。

『MASTERPIECE』と『RAINBOW』の間には、エレカシにとってとても大きな出来事であり大きな変化があった。

●宮本浩次の耳の病気
●さいたまスーパーアリーナ25周年記念スペシャルライブ
●プロデューサー、村山☆潤との出会い


だからこれは、プロデューサーが変わったことによる音の変化、そして、宮本の耳の病気があったこと、それらによる変化なんだと思った。思おうとした。そしてそれはおそらく間違ってはいないだろう。さいたまスーパーアリーナでの25周年ライブも、あのとき確かに新たな扉が開き、何かが生まれたと思った。

これまでと違うエレカシ。それがこの『RAINBOW』なんだと思った。

けれどやはりそれは、エレファントカシマシの覚醒ではなく、宮本浩次の覚醒だったのではないか。

もしかしたら、宮本の中ではじめて「エレカシを想定していない音」が生まれはじめているのではないか。または、「エレカシを想定しない」ことがはじめて起こっているのではないか。
これまでは、打ち込みだろうが何だろうが「エレカシでやる」という大前提があったけど…。

それらのことを否定的に感じていたとかではなく、ただ何かが今までと違うことに戸惑っていたんだと思う私は。

『RAINBOW』に渦巻いていた混沌としたエネルギー。

それは虹の始まりか終わりか。

これからどんな景色が生まれるのか。

(次の『Wake Up』は、覚醒した宮本浩次と “演者” としてのエレファントカシマシというアルバムなのかも知れない。でも、「いつもの顔で」は何か・・・)