この記事では「不登校中の生活の仕方」についてお届けしています。今回のテーマは「スマホやゲームの時間」についてです。
特に中高生になるとスマホをの所持率が高くなります。それによって一日中触っている状態が続くことがあります。こういった状況にどのように対応すればいいかのヒントを掴んでいただけたら嬉しいです。
この記事でわかること
▶︎子どもたちの心理
▶︎親子で話すルールづくり
▶︎上級者テクニック
▶︎どうしてスマホやゲームに依存するのか
まず最初に考える必要があるのは「どうしてスマホやゲームを長時間してしまうのか」についてです。
頭ごなしに使用することを咎めたり、なんとなく長時間はダメだからという理由で叱責するのはあまり良い対応ではありません。
お子さんはどうしてスマホやゲームをしてしまうのでしょうか?
不登校中の子どもたちがスマホやゲームに依存してしまうほど利用するのは「現実の自分を直視するのが怖い」という背景があります。
私たちに置き換えて考えてみましょう。つ状態になり休職することになったとします。同僚たちは今日も頑張って朝から遅くまで仕事をしています。しかし自分は家にいて何もすることができません。
2、3日であればのんびり過ごすこともできるかもしれません。しかし1週間、2週間、1ヶ月、2ヶ月と経つとどうでしょうか。
きっと「自分は社会からはみ出してしまった」という感覚を持つと思います。起きている間ずっと社会の一員として働けていないことに直面することになります。
これは想像以上に苦しく辛いことです。子どもたちも同じ心境になります。学校に行けていない自分は勉強も遅れ、高校も大学も行くことができない。就職もできず、一生ひきこもったまま恋人も作ることができず過ごすことになる。
子どもたちがスマホやゲームを長時間使用してしまうのは、こういった現実と向き合うことから「逃避するため」だと言えます。子どもたちとて決して楽しんでやっているというわけではないのです。(むしろ楽しんでいるならば心理的にかなり元気になってきたと判断できます)。
ある方はこう言いました。「ゲーム実況の動画は楽しんで見ているわけじゃない。けれど毎日10時間以上も観るのは、そうでもしないと苦しくなってしまうから」と。
やりたくてやっているわけではないけれど、何もしないでいると考え過ぎて苦しくなってしまう。だから一日中スマホやゲームを触り続けるようになります。
▶︎ゲーム障害・ネット依存とは何か
ここで近年話題になることが多い「ゲーム障害」について説明します。ゲーム障害とはゲームに熱中することで、利用時間が長くなり、日常生活に支障が出る疾病です。
夜遅くまでゲームをすることで、朝起きられなくなり、そのことにより学校に行きづらくなることもあります。気持ちにも乱れが生じ、イライラしたり、怒りっぽくなることもあります。
またネット依存も同じように、スマホなどネットの利用時間が長くなることで、ゲーム障害と同じような症状をきたすものになります。
厚生労働省の調査によると、中高生のネット依存は2017年時点で93万人いると言われます。おそらく現在は100万人を超えていると考えられます。ゲーム障害・ネット依存により記憶などを司る前頭葉に機能障害が起こると言われています。
(出典:厚生労働省)
ゲーム障害・ネット依存が不登校に背景になっていることもありますし、不登校になることでゲーム障害・ネット依存が進むこともあります。
実際に診断を受けるのは、より厳密な定義に基づくので、ただ長時間やるだけで診断がなされるわけではありません。
ただここでも大事なことはどうして依存してしまうのかという点です。初めから依存するわけではなく、だんだんと依存状態になります。
ゲーム障害・ネット依存まではいかずとも、長時間使用してしまう背景には、子どもたちが抱えている日々のストレスをうまく消化できないことであったり、孤立感が隠されていることがあります。
ゲームを長時間やる=依存症だ、となるのではなく、どうしてその状態に至るのかという点を考えることを第一に考えるようにしましょう。
▶︎親子で考えるスマホやゲームのルールづくり
スマホやゲームのルールを作っていくにあたり、いくつか注意点があります。
1. 楽しんで取り組めているかの確認
2. お子さんの意見を聴く
3. 現実的な提案を行い、再度お子さんの意見を聴く
4. 1ヶ月ほどをかけながら修正しルールを固めていく
5. 決めたルールは守る
気持ちが落ち込んだとき「食欲」「睡眠」そして「趣味」への意欲が減退することが挙げられます。
先に挙げたように、現実からの逃避で行う場合、決して楽しめているわけではありません。没頭しないとやっていられないので、やらざるを得ない状態になります。
依存の状態とは決して楽しいわけではないのです。こんなことをやっていてはダメだと思いながらもせざるを得ないのでやってしまうのが依存状態です。アルコールや薬物依存も同じで「こんなことをしていてはいけない」ことはわかっています。それでもやめられないのが依存となります。
お子さんがスマホやゲームを「楽しんで」取り組めているのならば、趣味を楽しめる状態になっているということです。この場合であれば、ルールづくりは比較的スムーズに行うことができます。
だからといって親の一方的な思いでルールを押し付けるのは逆効果です。まずお子さんの思いを「聴く」ことから始めます。
2. お子さんの意見を聴く
お子さんがスマホやゲームに対してどのような思いを持っているのかをじっくりと聴きます。
【お子さんの話の聴き方については以下の記事を参考ください。】
オンラインで大事な友達がいて、そこで話をしながらゲームをするのがとても楽しいかもしれません。またその友達の相談に乗っているかもしれません。
将来ゲーマーになって生計を立てたいと思っているかもしれませんし、やることがないのでやっているだけかもしれません。
まずお子さんの思いを確認しましょう。親の意見は「受け止めてから伝える」が大原則です。
3. 現実的な提案を行う
じっくりと話を聴いた上で親の提案を行います。しかし注意が必要です。例えば「1日1時間まで」というのは学校に行っている間であれば必要かもしれませんが、ずっと家にいる場合は現実的ではありません。かといって4時間も5時間もやるのはそれこそ依存に近づく可能性があります。
現実的な落とし所としては2~3時間が妥当ではないでしょうか。朝起きて1時間ほど、お昼にもう1時間、夜にまた1時間くらいが良いのではないかと考えます。
「あんまり長時間はやはり良くないと思うから、まずは1日3時間までからはどうかな?」というように提案します。
おそらくこの時間数であればお子さんも受け入れやすいのではないかと考えます。
親の提案を伝えてそれを守らせるというのはあまり意味がありません。提案を伝えたら「どう思う?」と必ずお子さんの意思も確認します。
このように聞かれるとお子さんも意見を言いやすくなります。「いや4時間はやりたい」と交渉するかもしれませんし「わかった」と受け入れることもあります。
もしさらに時間を延ばす提案をしてきた場合はその場合は親御さんも条件を出して良いと考えます。例えば問題集を1ページやったら15分延ばしていい、というようにです。お手伝いを条件としても構いません。
そしてさらにそれについて確認し、合意を得るようにしていきます。
スマホやゲームのルール作りで失敗しがちなのは「一度決めたものが絶対」としてしまう場合です。
実際にやってみると3時間では足りないから、とずるずる延ばすようになることもあります。また「勉強に使っているから」とスマホの時間を無制限に長くしてしまうこともあります。
1ヶ月ほど取り組みながら、ルールを加えたり、減らしたりと調節していきます。つまり最初の1ヶ月はお試し期間で、正式なルールにするのはその期間が終わってからです。
1ヶ月も取り組んでいると習慣化しやすくなります。当初想定できていなかったことが出てきたり「昨日は1時間しかしていないから、その分を今日やりたい」というイレギュラーな条件も提示されます。
それらについて再々度話し合いながら、ルールを固めていきます。
5. 決めたルールは守る
例えば3時間以上やったら「その分は翌日から減らす」などとルールを決めたら、厳守することです。
ルールは実は守る方よりも、守らせる方が大変です。お子さんはいろんな手を使って時間を引き延ばす作戦を考えます。
ルールをその都度変更していると、形だけのものになってしまいます。決めた確定したルールは守ることです。もし破ったらその分のペナルティもきちんとその都度与えます。
これは親御さんも同じです。子どもには制限を与えているのに、親は無制限にテレビを観たり動画を観たりするのは公平ではありません。
ルールを決めたなら、親も守る。ルールを破ったら親もペナルティを受ける。その代わりお子さんがきちんとルールを守っていたらその都度声に出して「よく守れているね」と労います。
ルールを作ってもうまく機能しないと嘆かれる方も多いですが、ルールは守らせる側の方がはるかに大変なのです。ルールを破ったらペナルティ、守ったら労うを大事にしていきましょう。
▶︎どうしてもルールを守れないときの上級者対応
スマホやゲームのルールに関しては、一番大事なことは親子で話し合いながら最適な方法を見出すことです。これができるならこれに越したことはありません。
ただいくら話し合っても難しい場合があるのもまた事実です。その場合は強制的に道具を取り上げたりすることも必要になります。
しかしながら、強制的な対応はお子さんの怒りにつながります。暴力行為に発展することもあります。
できればこれはしてほしくはないけれど、どうしても難しい場合の「上級者テクニック」をお伝えします。
上級テクニック1. ゲームを「義務」にする
「勉強を1日3時間やろう」と言われたら、誰だって嫌です。どうして嫌かというとそれは「義務」になるからです。そのためダラダラとただ時間をやり過ごすだけで結果的に成績は上がらなくなります。
大人の仕事でも同じですよね。仕事が義務になると8時間の労働は途方もなく長く感じます。しかし逆の発想を持つと、スマホやゲームも「義務」にしてしまうと、嫌になる可能性があります。
そのためあえて「1日3時間は必ずスマホかゲームをやるようにすること」としてしまうのです。
最初はお子さんも喜びます。そんなの努力しなくてもできると思います。しかし「やらないといけない」となると段々と負担を感じるようになります。
これまで夢中になって時間を忘れて取り組んでいたものが「まだ1時間しかやっていない」と時間を気にするようになります。
趣味として取り組んでいたものが、仕事になると段々と楽しくなってしまう状態に似ています。
「必ず3時間はやるように。毎日やった時間をチェックするようにすること」とあえて義務化してしまうのです。そうすることで「楽しくない」気持ちを誘発し、時間を減らすことができます
上級テクニック2. ご褒美制度を導入する
お手伝いをしたら、テストで良い成績を取ったらお小遣いをあげる、という制度を設けているご家庭もあると思います。
そういったご家庭にお聞きしたいのは「もしお小遣いを無くしたらお子さんはお手伝いや勉強をするでしょうか?」ということです。
小遣いという「ご褒美」があるから頑張っていたことが、なくなったら、おそらくその行動は減っていくと考えられます。私たち大人が給料もないのに仕事をするか?というのと似ています。
これを逆手にとって考えてみるのです。毎日スマホやゲームを3時間以上やったら100円をあげる、というようにです。
楽しいことをやってお小遣いをもらえるなら、とお子さんは喜んで取り組むでしょう。その頃にこう言ってみるのです。「100円を50円にするね」と。
これまでと同じことをやってももらえるものが半分になりました。そしてさらに半分、採取的に0にします。
最初は好きでやっていたことが、ご褒美が設定されることで「ご褒美のためにやっている」にすり替わります。次にご褒美を減らし、無くすことで、「ご褒美のためにやる」という動機づけがなくなってしまうことになります。
これによってスマホやゲームへのやる気を削いでいくという方法が考えられます。
実際にアメリカのある地域では、若者等の騒音問題に悩んでいたということがありました。小売店の店主が「毎日騒いでくれたら1ドルあげるよ」と言いました。若者は喜んで毎晩騒ぎます。しかしあるとき「すまないお金がないから50セントにしてほしい」と言います。そして「ついにお金が無くなったから払えなくなった」と言います。
すると元々はただ騒ぎたかった若者が「お金がもらえるから」騒ぐようになり、それがなくなると騒ぐ意味がなくなったと、騒がなくなったということが起こりました。
ご褒美は諸刃の剣です。ご褒美があることでご褒美がないと勉強はお手伝いをしない、ということも起これば、望ましくない行動を減らすという方向にも使えるのです。
▶︎原則は話し合いを大事にしましょう
スマホやゲームのルール作りの原則は親子の話し合いです。親子の話し合いは非常に重要なものです。一方的に押し付けるルールはお子さんからの反発を招き、形だけのものになります。
しかし話し合って修正しながら作ったルールはお互いに守りやすくなります。話し合いによってルールを守ることが一番乗理想です。
どうしてもルールがうまく作れない場合においては、上級テクニックも活用してみましょう。
【親子の基本的な関わり方はこちらをご覧ください】
▶︎お子さんを受け入れることから始まる
不登校の基本原則と同じですが、お子さんがスマホやゲームをやらざるを得ない思いを受け止めることが、最初の一歩になります。
頭ごなしにやめさせようとしても、それは徒労に終わりますし、喧嘩の要因にもなります。せっかく楽しんでやっているゲームも、喧嘩の要因になるのならば心から楽しむことはできません。
お子さんの思いを受け止め、可能だったら一緒にもやってみるのです。お子さんが何を楽しんでいるのかを知ることも大事なことです。
勝手にルールを押し付けるのではなく、話し合いを繰り返しながら、「一緒にルールを作る」発想を持ってみましょう。
【不登校の対応の基本についてはこちらの記事👇もご覧ください】
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■略歴:
中学時代に不登校を経験。その後学校復帰。関西学院大学に合格する。大学卒業後、人材紹介会社にてマーケティング・人事を経験。
あるひきこもりの青年に出会ったことから、起業を決意し、専門的なカウンセリング・学習サポートを行うOFFICE NAKAGAWAを2011年2月に設立。公認心理師、産業カウンセラーの資格を有する。
ひきこもりや不登校、発達障がいのご当人、並びにご家族のカウンセリング、学習サポートを行う。PTA、学校関係、行政関係など講演も行う。
初めまして、不登校・ひきこもりカウンセラー(公認心理師)なかがわひろかです。
今このブログをお読みいただいている方は、お子さんの不登校のことで日々悩んでいらっしゃると思います。
私はあるひきこもりの青年と出会ったことをきっかけに「心の問題で悩む人たちの助けになりたい」と思い心理相談室OFFICE NAKAGAWAを2011年に立ち上げました。これまで12年以上にわたって親子のサポートや8050問題にも取り組んでいます。
学校に行けなくなったとき、お子さんも親御さんもどうしていいかわからなくなると思います。
1. 不登校やひきこもり、またそのご家族のケア
2. 心理療法を応用した学習サポート
3. 親子の関わり方今が一番辛い時期だと思います。でもきっと脱け出すことができます。どうやったらいいのかという「具体的な方法」について一緒に考えていきましょう。