先日、「あにつく2024」でAnimeCanvasという新しいアニメ作画用のソフトの開発進捗状況発表のセミナーに行ってきました。
これは、原画/動画用(KEY/DO)と仕上げ用(COLOR)の2つを開発してるそうで、COLORの方はすでにベータ版を今年度内に関係各所に配布したいとのこと。
社内でテストしてみて、既存のソフトと比べてもスピードが若干遅いくらいで、使い方に慣れればスピードの点ではすぐに追い越せそう。
tga出力したデータを読み込んでも主線と彩色レイヤーに分かれた状態にするようです。
ただ、「それが難しい」とも話してたので、まだ実装はされてないようですが、おそらくこれが実装されないと仕上げ検査はやりにくいし、仕上げさんもソフトの移行には至らないと思うので、頑張って欲しいところです。
作画用のKEY/DOの方はまだベータ版の前のアルファ版だそうで、こちらはまだまだ先になりそうです。
逆に言えば、こんな機能が欲しいと言うのは今こそ!なので、ここに私の希望を書いておきます。
先日、AnimeCanvasの公式X(Twitter)アカウントに送ったものと同じです。
ただ、私が近々鍵垢にする予定なので、ここにも載せておこうと思いました。
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AnimeCanvasへの要望
紙での動画作業を数十年続けた後、5年くらい前からClipStudioEX(クリスタ)を使って動画作業することが増えました。(今はクリスタonly)
使い勝手のいいアニメ作画ソフトとしてAnimeCanvasに期待してますが、先日のあにつくのセミナーでは作画用のKEY/DOについてはほとんど紹介されなかったので、どのような使い勝手なのか全く分かりませんでした。
クリスタはアニメ専用のソフトではないため、不便を感じることも多いですが、紙では出来なかったことができるようにもなりました。
また、イラストなどで使われる機能を便利に取り込むことも出来てます。
せっかくなら、これらの便利機能も搭載していただけると嬉しいです。
まず、実線や色トレスには[0.0.0][255,0,0][0.255.0][0.0.255]などの黒、赤、緑、青を使われることが多いです。
けれど、青は黒との見分けがつきにくく(特にライトテーブルで重ねてる時など)、緑は妙に明るすぎて、線が重なってると、今描いてる線が見えません。
なので、青ではなく空鮮[0.165.255]や、緑ではなく黄緑-鈍[101.153.51]や緑-鮮[33.228.63]を使ってます。
また、実線も黒ではなく、髪、目や眉、服などで黒に近い別レイヤーにすることで作業しやすくしてます。
最初は黒のレイヤーを増やすだけでしたが、それだと、今自分が描いてるレイヤーがどれなのか分かりにくいので、紅黒、緑黒、紫黒など、Tracemanで二値化する時に同じ太さになる黒系の色を使ってます。
クリスタでの二値化なら同じ太さになりますが、黒とこれらの色を一緒に使ってTracemanで二値化すると太さが変わってしまうので、あえて黒は使わずに。
最近はハイライト、影、2号影だけでなく、リムライトやグラデーション、髪を色トレスにするなど、3色では足りないケースも増えてきたので、Tracemanのカスタムカラーで二値化できるよう、このような使い方をしてます。
AnimeCanvasでも、黒、赤、青、緑に限定せず、作業時は見やすい色を使い、後工程に渡すときに指定された色に変換できるようにして欲しいです。
現在は、二値化した時に指定色になっていればいいケースが多いので、作業時は見やすい色を使ってます。
二値化せずにclipデータで渡す場合は、レイヤー選択でblueという名前のレイヤーの色を全て青に変えるなどして渡してます。(ちょっと面倒ですが、作業時に見辛い色を使うよりはマシです)
シンプルなUIにするとの話でしたが、特定の色を非表示にしたりできるようにはして欲しいです。
例えば、自転車に乗ってる人物の時、自転車を描く時は人物の線は非表示にしたい。
模様のある服を描く時、一旦、模様を非表示にして描きたい、など。
クリスタでならできるけど、TVPaint(以下TVP)では出来なさそうです。
また、塗り分けに関して。
服の塗り分けと影やハイライトが重なる時、それぞれ違う色で塗ると見づらくなります。
ピンクの影部分にオレンジを塗っても、ぱっと見でどちらが影なのか分かりにくかったり。
それは紙動画の時にも感じてたことですが、私は塗り分けが多い時はトーンを使ってます。
トーンは元々イラストや漫画用の機能ですが、これを使うことで塗り分けと影を重ねても見やすくなりました。
このトーンの機能は是非入れて欲しいです。
大前提として、アンチ有りでも描けること。
最近はアンチ無しの線で動画を描かされることもありますが、アンチありで描けるようにもしておきたいです。
クリスタ3.1以降、大幅にアニメ機能がアップデートされました。
色トレスの数が3色から7色へ。
ACで塗るなら色トレスの扱いも変わってくるかと思いますが、別のソフトの書き出しデータを使うことも考えて、指定色への変換機能があると助かります。
タイムラインにもパレットカラーを反映できるようになったので、原画、中参考あり、動画でタイムライン上でも原画なのか中割りなのかがわかるようになりました。
これらのように、現在のクリスタにある機能はAnimeCanvasでも使えて欲しいです。
現在、一番欲しいと思ってる機能は指パラに関しての機能です。
中割りをする時、クリスタではライトテーブルの機能を使ってます。
A1とA5の中割り(A3)を描く時、A1とA5を重ねます。
位置が離れてる時は、それらを近い位置にずらして、間にA3を置いて描きます。
これだけなら今の機能でも問題ないのですが、髪のなびきのように4枚以上の絵をパラパラして動きを確認しながら描きたい時、いちいち編集中の絵を選択し直さなくてはなりません。
次のコマへ送る機能が使えればいいですが、例えば、1、3、5、7、9のようにとりあえず1枚おきに描く場合、まだ描いてないレイヤーがいちいち空白として現れてしまいます。
TVPでは、チェックを入れたコマのみセル送りできるようですが、クリスタは非表示にしてても空白のセルが表示されてしまいます。
また、TVPではライトテーブルではなく、その絵自体の位置をずらして、後で元の位置に戻ることができるそうなので、位置を揃えた状態でセル送りもできるし、描画もできますが、残念ながらクリスタでは描画後に位置を戻すことができません。(私が使い方を知らないだけかもしれませんが)
デジタル作画での指パラのしづらさは、「絵をパラパラしながら描画しづらい」ということにあります。
これに関してはTVPが一番使いやすそうですが、特定の色を非表示にするとか、トーンの機能などはTVPにはありません。
双方のいい部分が合わさったようなソフトができると嬉しいです。
また、いずれはiPad版もできるとなお嬉しいです。
私は基本的にiPadなので。
クリスタは色ごとにレイヤー分けして使ってますが、レイヤーが増える分、作業が煩雑になること、データが重くなることがデメリットではあります。
Opentoonzはパレット方式なので、レイヤーが増えるのではなくパレットで線色の優先順位なども決まるようです。(Stylosもこれに似てると思います)
特定の色のみを非表示することもできるようですし、この点に関してはStylosやOpentoonzが良さそうです。
Opentoonzですが、読み込んだ画像の線もパレットで色分けできるので、他のソフトで描いた線も分けることができそうですし、ACもそのスタイルだと良いかもしれません。
AC KEY/DOの使い方がわかりませんが、まだまだ開発途上のようですので、要望だけでも届けておきたいと思いました。
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AnimeCanvasに限らず、日本の商業アニメの作画作業に適したソフトを作ろうとしてる方には知って欲しいです。
OLMさんや東映さんでもアニメ作画用のソフトを開発中と聞きましたが、そちらの進捗状況が気になるところです。
色ごとに表示/非表示/色替えができて、「指パラしながら描ける」という機能が使いやすいものが出てくるといいのですが。
あと、iPad版も出して欲しい!