最近、動画注意事項に「色数が多い時は硬質ピンクやオレンジも使用可能」というのを見かけるようになりました。
硬質ピンクやオレンジって、二値化したら赤になっちゃうんじゃない?大丈夫なの?という不安を感じるので、検証してみました。
(硬質ピンクは、正しくは「硬質ももいろ」、硬質オレンジは「硬質だいだい」と思われるので、表記が混ざることがあります。ご了承ください。)
このように、手持ちの色鉛筆を並べてスキャンしました。
(硬)は硬質、三菱色鉛筆7700のシリーズ。
ひらがなは、同じく三菱色鉛筆880のシリーズ。
カタカナは三菱ユニカラー&アーテレーズシリーズ。

それを、とりあえず、黒・赤・青・緑すべての数値を100で二値化したのがこちら。

こうして見ると、面白い事がわかってきます。
硬質みどりとか、ふかみどりはやはり黒が混じります。これは想定内。
おうどいろは、濃く塗ると赤と認識されるけど、薄く塗ると緑と認識されます。
だいだいも、薄く塗ると緑と認識されてしまうようです。
きいろが緑なので、そっち寄りになるのでしょう。
意外なのは、てっきり赤と認識されると思っていた「ももいろ」が透明になってしまったこと。
うすむらさきやヘリオトロープも同様。
「うすだいだい」は、もともと色が薄いので、認識されないようです。
色を塗ってあっても見づらいので、動画の裏塗りにはまず使わないでしょう。
とりあえず、緑に黒が混じらないよう、数値を変えてみます。
今回は、黒103、赤110、青106、緑114としました。
それがこれ。

ふかみどりに部分的に出る部分はありますが、硬質みどりは綺麗に出るようになりました。
とはいっても、硬質みどりはすでに生産されてないので、今後、使われる機会はないでしょうが。
ついでにいうと、硬質ももいろも生産終了してるので、注意事項に使っていいと書かれていても、手に入れにくいでしょう。文房具屋さんの在庫がなくなったらそこまでです。
さて、この透明になってしまった「ももいろ」です。
ももいろを認識させるためには、カスタム設定が必要になります。
赤、青、緑の他にもう一色、ピンクを設定してみました。
(カスタム線の設定は、色相が300、色相の幅が37、線幅が106)
それがこれ。

ももいろの二値化に成功。
赤とは別色(ピンク)で表示されてます。
むらさきは青のままですが、あかむらさきやラズベリーもピンクになりました。
「硬質ももいろ」もピンクになってます。
さきほどは透明になってしまった「うすむらさき」もほんのりピンク。
でも、ヘリオトロープは透明のまま。
ピンクと認識してほしい色相の幅をもう少し「青」寄りにすれば、濃く塗った部分が、かすかにピンクに表示されましたが、そうすると、むらさきが「青」になり、それはいいとして、あかむらさきに「赤とピンク」が混ざるようになりました。
実をいうと、この「ももいろをピンクとして表示できるようにした状態」でも、硬質や軟質のあかにピンクが混ざってしまってます。
わかりやすいように、ピンクになった部分を緑で表示させてみます。
こんな感じ。

しゅいろなど、他の赤系にはピンクは混じってないのですが、数値を変えるとまた変わってくるかもしれません。
実際に「硬質ももいろ」や「硬質だいだい」を使った場合、仕上げ時に、赤とは別色に設定するのは、かなり大変そうです。
ももいろは何とか出来ましたが、だいだいは、どうしても赤が混ざってしまい、上手く出来ませんでした。
また、その影響で、赤に出てた色にピンクが混ざってしまったり。
なので、動画注意事項に「硬質ピンクやオレンジも可」と書かれていても、避けた方が良いでしょう。
特に、オレンジは無理。
ピンクの方がまだまし。
どうしても4色目を使いたいなら、硬質ではなく「軟質ももいろ」の方が良さそうです。
軟質は線を引きにくいけど。
ただし、その場合でも、赤は「しゅいろ」がお勧め。
赤系…しゅいろ
青系…硬質みずいろ
緑系…硬質きみどり
4色目…軟質ももいろ
がベストとは言えないまでも、ベターかな。
赤は、ピンクとオレンジの間に存在するので、赤とピンク、赤とオレンジは隣り合った色になってしまいます。
赤、オレンジ、黄色(きいろ)、黄緑、緑、青、紫、ピンク、赤、オレンジ…という感じ。
むしろ、ピンクとオレンジは少し色味が離れてるので、4色目としてピンクを使う場合は、赤ではなくオレンジを使った方が、二値化する時、きれいに色を分けられるかと思います。
つまり、私としてのベストは
赤系…硬質だいだい
青系…硬質みずいろ
緑系…硬質きみどり
4色目…軟質ももいろ
となりますが、硬質だいだいを赤系として使っていいとされてる注意事項はほとんど見かけないので、声を大きくして薦めることはできません。
というわけで、せめて、オレンジに近い朱色などを使うのが、抵抗が少ないかと思います。
大抵は色鉛筆は2色まで。
それで足りない場合は3色目として緑系を使いますが、さらに4色目を使う場合という限られた用途での参考と考えてください。
と、色々検証してはみたけれど、スキャンやドライブのバージョン、筆圧、鉛筆の先の汚れなどなど、状況によって違ってくるでしょう。
ちなみに、今回使ったスキャンはEPSON DS-G20000です。
それから、色トレスがクロスするところが黒くなる問題は…しょうがないかな。
縦線を優先するとして、そちらを先に描きました。
大体は、縦線が強く出てますが、黒はやっぱり、あとから描いても強く出ますね。
意外なのは、水色の後に描いたきみどりが強く出たこと。
赤には弱いけど、水色には強い。
(何かのゲームの属性みたい…。)
色んな色鉛筆を使って二値化してみましたが、実際、裏塗りにしか使わない色は二値化とは関係ないのですが、
仕上げがデジタル化された時、どうして影指定を表に描けなくなったのかを知りたくて、実験したのがきっかけでした。
二値化するとき、緑のチェックを外したものがこちら。

黄色も黄緑もえめらるども見えません。
「黄色も黄緑もえめらるども緑になるなら、色トレスは赤と青だけで、影塗り指定は表から緑系で塗ればいいのに。」と思いました。
デジタル黎明期にどのような実験が行われて、そして今に至ったのか、その現場に居合わせなかったのでわかりませんし、すでに「影指定は裏から」というのが業界内では当たり前になってるので、今更変えるのは難しいでしょう。
仕上げに使われるソフトが変われば、使える色鉛筆の種類も変わってくるでしょうし。
でも、「軟質ももいろ」が、赤にも青にも緑にもならないのなら、これだけでも表塗りに使えたら…と思ってしまいました。
ただ、表塗りに使うのは状況的に無理だとしても、色トレスの4色目として使うのはアリかも…と思ったので、今回の「色鉛筆対決 その2」としてまとめてみました。
まだまだ紙による動画作業の現場は多いです。
仕上げにRETASを使う現場もしばらくは続くでしょう。
そんな中でも、何かしらの参考になればと思います。