その5 クミ線について | 一本のネジ(アナログからデジタルへ〜手描き動画部)

一本のネジ(アナログからデジタルへ〜手描き動画部)

どの作品にも共通してる「動画作業において気をつけて欲しいこと」を書いてます。
動画をきちんと教えてもらってない人も増えてるようなので、参考にして頂けたらと思ってます。
今は、iPad版クリスタを使った動画作業の流れについて書き加えてるところです。

クミ線(組線=組み合わせ線)について
 
背景や下のセルに描かれてるものより奥にあるが、隠れている部分を描かずに、背景などより手前に絵を乗せる場合に使います。
 
★セルクミ、BG(背景)クミ、BOOKクミ、いずれも、色トレスで書きます。
(大抵は裏から。 稀に、セルクミは表から、という作品もあります。)
 セルクミの場合は、セル番号も書いてください。
「Aセルクミ」ではなく、「A1クミ」というように。
 
 複数のセルと組になる場合などは、別の色を使用します。
 (例) Aセル組は赤、Bセル組はきみどり、など。
 
★止めセルや背景など、止まってる物とのクミは、1枚目に何とクミになるのか「動画用紙の裏(クミ線の近く)」か「タップの横」に書きます。
会社によって違うので、両方に書く方が良いです。
 指示は1枚目だけで良いです。
 
★テーブル(BG or BOOK)の上に乗った腕など、部分的にクミ線より上になる物がある場合は、仕上げ時に「上セル」を作ってもらうことになります。
 スキャンデータのみが仕上げに送られる場合は動画の裏のクミ線は見えないので、シートのメモ欄に「A5~10 クミ線あり」というように書いておくといいでしょう。
 セルクミの場合も、「Aセル(下になるセル)の一部がBセル(上になるセル)より上になる」ような時は、同様に。
 
★動いてる物とのクミ線は、1枚ずつ明記します。
(例)B1の動画に、「A1クミ」、B2に「A2クミ」など。
 
★複数の番号のセルとクミになる場合、多重(複数)クミにならないよう気を付けましょう。
 複数の番号であっても、合成親で共通している部分であれば問題ありません。
 「A1~3とクミ(合成1で共通)」というように書きます。
 
 けれど、クミ線にあたるセルと、上に乗るセルのタイミングが違ったり、違う絵と組む場合は、「クミ線」を切ることが出来ません。
 例えば、2コマ打ちのAセルに3コマ打ちのBセルが乗るとか、横顔口パクに髪の毛が別セルで乗る場合、口パクの向こうに見え隠れする髪は、クミ線を切ることが出来ないので、仕上げ段階で奥の髪だけ「下セル」を作ってもらうことになります。
 そのような「多重クミ」の状態を発見したら、そのまま作業せず、制作やメインスタッフに問い合わせてください。
 ( 本来は、原画段階でそうならないように設計すべきものです。)
 
★「準クミ」はトレス不要です。階段に落ちる影など、どのように影が曲がるかの参考に使いますが、動画にクミ線を書く必要はありません。
 
★クミ線がある動画の書き方は、会社や作品によって違うと思いますが、うちでは、セルクミの場合はクミ線ぴったりの所まで描き、BGクミやbookクミなど、撮影さんに処理してもらうクミ線がある場合は、基本的にクミ線より多めに絵を描いて、色を塗れるよう、実線で繋いでおきます。
 
正確に言うと、「クミ線」とは違うかな。
クミ線は、「この部分は背景(book)で隠れますよ」という参考として使うだけで、実際は、キャラの上にbook等が乗るから、自動的に不要な部分が見えなくなるだけです。
 
ですから、「クミ線」というよりは「アタリ」と考えた方が良いかもしれません。
レイヤーの事をセルというのと同様、アナログ時代の名残りですね。
 
 
例えば、テーブルで隠れる足や体。
 
アナログ(セル画)時代、テーブルが背景に書き込まれている場合は、レイアウト時に描かれたクミ線に合わせて背景と作画(仕上げ含む)がそれぞれ同時進行で絵を作り、撮影で初めて合体します。
テーブルがBOOKの場合は、クミ線より多く描く、というデジタルのスタイルと同じです。
 
アナログ時代、クミ線を書いた紙は2枚作られ、1枚は美術に、もう1枚は作画→仕上げに回されてましたが、デジタルになった今は、クミ線が入ってない事も多く、レイアウトから拾う事も多くなりました。
結果的に撮影時に合わせるとしても、デジタル背景なら作画用に1枚(美術にはスキャンデータで)、手描き背景なら美術と作画に1枚ずつ必要だと思うのですが。
 
作品によっては、bookクミとBGクミの処理が違う場合がありますが、これは、背景が1枚にすべて描き込まれてるか、細かくレイヤー分けして描かれてるかで違ってるのかも知れません。

また、仕上げ(彩色)に使ってるソフトの違いもあるかと思われます。

 
うちの会社では、床、テーブル、椅子など、ほとんど全ての部品が別々のレイヤーに描かれてるので、bookの塊が一つの背景になります。
レイヤー分けせずに1枚の絵で描かれてる場合は、bookとして必要な部分をデジタル的に抜き出すので、作業方法が違うのでしょう。
 
セルクミは、動画の線(をスキャンしたもの)がそのままクミ線になるので、仕上げさんはその線を確定したものとして使えますが、bookやBGのクミは、背景と合わせて、初めて位置が確定するので、多めに描いておいて、撮影段階で組を切ってもらうのです。
紙の表側で線を繋いでおかないと、仕上げさんが色を塗れないのです。
 
前述のクミ線を書いた紙に合わせて、仕上げ段階でクミを切る場合もあるようですが、背景と合わせた時にずれていると修正しなくてはならないので、大きめに描いておいて、撮影時にクミの処理を行うケースが多くなってるようです。
 
 
<追記>画像付きで説明を加えました。
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