その2 トレスについて | 一本のネジ(アナログからデジタルへ〜手描き動画部)

一本のネジ(アナログからデジタルへ〜手描き動画部)

どの作品にも共通してる「動画作業において気をつけて欲しいこと」を書いてます。
動画をきちんと教えてもらってない人も増えてるようなので、参考にして頂けたらと思ってます。
今は、iPad版クリスタを使った動画作業の流れについて書き加えてるところです。

★原トレ(原画トレス=原画清書)は、ただ、線をなぞるのではなく、質感など、原画のニュアンスを残して清書します。
 
★原トレ後は、すぐに中割り作業に入るのではなく、まずは原画だけを重ねて動きの流れを見るとともに、部品の形や大きさが著しく変わってないかチェックしましょう。
 例えば、服のボタンの位置や大きさ、大きな動きがないのに突然消えるシワ、鼻やあごの形や目の大きさ等々。
 全体の流れを見て不自然に変わってるところがあれば、そのまま中割りせず、前後の原画に合わせて修正してから中割り作業に入ってください。
 原画や作監の絵をいじるのに抵抗があるかもしれませんが、明らかに変な時は動画の権限で直してください。
 不明な時は、動検や作監、演出などに問い合わせてください。
 
★キャラ表を見ながら描くのはもちろんですが、可能であれば、色見本も合わせて参考にしましょう。
原画では線が繋がっていなくても、色見本を見れば、服と袖の色が違っている、という事もあります。
小さいサイズの絵を描く時、目立つ色が何かによって、省略の仕方も変わってきます。
動きはもちろん、きちんと色を塗れるように描く事も、動画の重要な仕事です。
 
★色トレス部分の色は、影色ならトレス部分を含めて影色に、ハイライトや白目などは、トレス部分を含め、その色になります。
 ですから、白目の色トレスが太すぎると、白目が膨張して見えてしまうので、トレス線の外側がマブタからはみ出ないように描きましょう。
 
★原画にはフレーム内の絵しか描かれてないことが多いですが、色を塗る際は一回り外側までスキャンします。
 スキャンフレームを参考に、仕上げさんが色を塗れるよう、フレームの一回り外側まで線を繋いでください。
スキャンフレームがわからない時は、縦 1センチ、横 1.5センチを目安として、多めに描いてください。
 
★30枚のカットなら清書用30枚+下書き用の紙を揃えてから作業に入ってください。
 途中で紙が足りなくなって、サイズが違ったり、タップ穴のずれてる紙を使うことのないよう、お願いします。
 止め等は違っていても構いませんが、同じセルは同じ紙を使うようにしてください。
 チェックしづらいだけでなく、絵柄が小さい時はタップ割りが上手くいかず、ブレてしまう事があるので。
 
★大判のカットであっても、絵がスタンダードで収まってる場合は、スタンダードの紙を使ってもかまいません。
 
★手元に大判の紙がないからと言って、絵の途中で紙を継ぎ足すのはNGです。
 また、紙を継ぎ足すとき、セロハンテープを使ってはいけません。
 
★煙や水など、全てが色トレスのものは、実線で描いて、「仕上げ時 色トレス」とすることも出来ますが、実線のものと描き込みの場合や、途中から別セルになる場合は、そのカット内は色トレスで統一します。
 
★「全カゲ」「スーパー」「ダブラシ」「クミ線」「仕上げ時 色トレス」など、仕上げ、撮影など次の工程の方への申し送りは、忘れずに書いてください。
クミ線の場合は動画用紙の裏(絵の近く)、他はタップ穴の横(表側)が良いかと思いますが、出来れば、表裏、両方に。
 同じ状態が続く場合は、1枚目だけで良いですが、セルクミなど、元になる絵が変わる場合は、1枚ごと書き込みます。
 
★動画用紙の裏に参考の絵や申し送りを書く場合、実線用の鉛筆を使うのは避けてください。
 色鉛筆に比べると、鉛筆の粉で下の動画用紙が汚れる可能性が高いので。
 
★基本的にはシャープペンは使えません。
 「シャープペンの方が描きやすいのに」という意見も聞きますが、どうやら、シャープペンの場合、深く掘れてしまい、消しゴムで消した跡に描いた線が途切れる事があるとのこと。
 
★動画番号はタップ穴の右側に書きます。
 下タップの場合も同様。
 理由:タップ横なら絶対に「フレームばれ」しないから。
 
★定規を使う場合、フリーハンドで描いた線と濃さや太さが変わらないよう、気を付けましょう。
 
★太いか細いかは作品の絵柄によりますが、いずれの作品も、線ははっきりくっきり描いてください。(『かぐや姫の物語』のような作風は別でしょうが…)
 線が薄いと、スキャンする時にしっかり線が出るように数値設定を調整しますが、そうすると細くあるべき線が太くなってしまう所が出てくるし、仕上げ時に線を整える手間が増えてしまうので。
 画面に出る線は、動画が描いた線ではなく、スキャンして二値化された物を仕上げが整え、撮影が背景と馴染ませた物です。
 でも、スキャン時にきちんと出る線は画面にも活きてきます。
 というわけで、全体的に均一な濃さでくっきりと描きましょう。
 
 あくまでも、均一な「濃さ」であって、「太さ」ではありません。
 
★うちの場合、赤系なら硬質赤か軟質赤or朱、青系なら硬質水色か軟質青、緑系は軟質エメラルドか軟質黄緑を使ってます。
赤系、青系、緑系、それぞれ使えるのは1色ずつです。
特に、緑系において、エメラルドと黄緑を同時に使うことはできません。
「出にくい部分」に数値を合わせてスキャンするので、同じ系統に違う種類の色鉛筆を使うと、太さが変わってしまうので。
 
★色鉛筆として使っていいといわれている3色目の色(えめらるど等)の使用は特に気を使ってください。
 出来れば、赤系&青系だけで済むように。
 
 
★セルクミなどがあって線の途中まで描く場合、クミ線からはみ出さないように気を遣うあまり、線の端の方がかすれてしまう傾向があります。
 そうなると仕上げ時に補正しなくてはならないので、そのまま線が伸びてるのと同じような太さで描いてください。
 (はみ出しても足りなくてもダメ、と言われますが、足りないよりははみ出してる方が良いようです。書き足すよりは、消す方が楽なので。実際、クミ線より多めに書くように、という作品もあるようですし。うちでも、クミ線より多めに描くようにしようかと思いましたが、完成した絵が分かりづらくなり、事故が起こりそうなので、セル組に関しては、クミ線ピッタリまで、としてます。)
 
★タッチは、鉛筆のタッチを活かして使います。実線と書き込みの場合は色トレス(赤)、別セルの場合は黒でも赤でも、描きやすい色でどうぞ。
 
★ブラシは、実線や色トレスで囲んだものを撮影時にぼかしてもらいます。
 なので、動画は輪郭線を描くのみです。(会社によっては、タッチと同じように作ることもあるようですが。)
 
★複雑な色トレスの模様に影が入ってるような場合、模様は別の紙に実線で描いて合成させる、という手もあります。
 動いている場合は色トレスで書き込みにした方が作業しやすかったりしますが、止めセルの場合は、模様を実線で書いた方が綺麗にスキャンされるので、そういうカットの場合は、動検や色指定などにご相談ください。