第4回 海兵隊について | 熱血講師 ショーン 近藤 Leadership & Language Boot Camp

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4回 海兵隊について



昨日は、米軍が抱えている様々な問題について紹介させていただきました。


今日は、海兵隊に特化してお話ししていきたいと思います。


皆さんは、米海兵隊と言えばどんなイメージをお持ちでしょうか?


沖縄で悪さする困った米兵でしょうか?


はたまた、戦場では泣く子も黙る海兵隊でしょうか?


皆さんの思うそれぞれのイメージは海兵隊の一面です。


そういう面もあれば、こういう面もあると言った方が正しいでしょう。


ほとんどの海兵隊は、真摯に教育・訓練に取り組み、任務完遂に向け必死に努力しています。


前々回お話ししましたように、海兵隊は常に任務に就いています。


MEU(海兵遠征部隊)は36524時間世界中の海に展開しています。


これはこれでものすごいストレスがかかっていると思います。


では、海兵隊の概要に関して復習していきましょう。


海兵隊は、陸軍、海軍、空軍と比してその規模は最小です。


軍全体の1/6で25万人前後です。これでも全自衛隊の人数より若干多いですね。


大まかな編成については前々回お話ししたのでそちらを参照してください。


また、海兵隊は、全国防予算の6%しか使えないため、昔から買い物上手な部隊としても有名です。


ですから、日本におけるオスプレーに関する報道は微妙です。


オスプレーは優秀な航空機という評価がなされている航空機だからです。


海兵隊が使用している他の航空機と比較して10万時間における事故の割合から比較してもオスプレーは低い数値ですし、モロッコやフロリダでの事故、また最近の事故はハワイでの着陸失敗ですが、いずれもパイロットの操縦ミスに起因していることが分っているため、航空機の機体の欠陥という指摘や批評は簡単に退けられるでしょう。


このようなデータや統計からも日本政府は、陸上自衛隊にオスプレー導入を決心したのだと思います。


また、この航空機の最大の特徴は、航続距離が長いということです。


今までの航空機(回転翼)では、チヌークCH47で約2250キロ飛行できましたが、オスプレーは、約3600キロ飛行できるのです。


この航続距離ですとグアムまでノンストップで飛行可能です。素晴らしいですね。


グアムと言えば、日米政府が海兵隊を沖縄からグアムに一部移転することで合意に至っております。


では、現在日本には、第3海兵遠征軍が駐屯しております。


つまりMEFですね。前々回出てきたMEFとかMEBとかMUEとかありましたが、これらは基本的に海兵空地任務部隊なんです。


その規模によって呼称が変わります。

この任務部隊、英語では、Marine Air Ground Task Force と言って、略してMAGTF(マグダフ)と呼びます。


このMAGTFの構成は、本部機能、陸上部隊、航空部隊、兵站部隊(後方支援)で構成されています。


それぞれの構成部隊の大きさ、規模でMEFになったりMEBになったりします。


因みにMEUMAGTFの中でも最小のもので、これが常に海上に展開している部隊です。


山口県岩国市には、海兵隊の航空基地があります。


この航空部隊と沖縄の地上部隊、兵站部隊と本部機能が有機的に組み合わせ、MAGTFを編成します。


これは、任務の規模によって変更されます。


では、統合任務部隊とMAGTFの関係はどうなんだ?という疑問が出てきますが、これ以上の話だと軍事学レベル程度に複雑になっていきますので、ブログではこの辺でご容赦下さい。


個人的に質問がある方は、メールを頂ければ返答いたします。


これ以上のお話になると一般の自衛官(1部幹部、ほぼ全陸曹陸士)もほぼ知らない分野となります。


話は、元に戻りまして、現在、日本に駐屯している米海兵隊は、約15千人と言われており、そのうち8千名の海兵隊とその家族9千名をグアムに移転するということで合意に至っています。


以前、「第1回のアメリカってどんな国?」でお話ししましたが、彼らは非常にうまい外交をし、自国の利益を追求するといったことを述べました。


アメリカは何故、地政学的に緊要な地形である沖縄に大きな勢力の海兵隊を駐屯させてきた歴史があるのにあっさりと身を引いてグアム移転に応じたのでしょうか?


ここから説明しますが、ここにアメリカの外交の妙というのが見えてくるのです。


アメリカも当然、沖縄問題について承知しています。


県民感情がどうなっているか、政府と知事はどのようなやり取りをしているか、当然情報(情報収集が国力の1つを形成)を重視していますので承知しています。


ここまで多くの犯罪が米兵によって犯されてきましたが、ここまで沖縄県民の感情が悪化する理由は、ベトナム戦争時の米兵の素行の悪さと犯罪件数でしょう。


現在は、海兵隊も教育をしっかりとし、年間50件前後の事件はありますが、大きく減少しています。


しかしながら、県民感情からすれば、1件でも事件が発生すれば、「またか」ということになると思います。


また,犯罪ではないのですが、訓練中の事故や訓練に起因する火事等様々な事象が沖縄県民の感情を悪化させている原因ではあると思います。


ここで、普天間基地返還→基地跡地の有効活用プラス安全環境の構築といった展開になるのであれば沖縄県民の感情もよくなるでしょう、との政府の思惑があって然りです。


また多くの海兵隊及びその家族をグアムに移転させることによって沖縄での犯罪件数も減り、県民の負担軽減につながるのではないかという考えに至ると思います。


では、アメリカは地政学的に非常に重要な拠点である沖縄から海兵隊をグアムに移転させることに同意したのでしょうか。


ここで、沖縄海兵隊の意味を考えていきます。


先ず合衆国政府は、以前正式に沖縄駐留海兵隊は日本防衛のために駐留しているのではない、という公式な見解を出しております。


要するに、中国と北朝鮮に対する抑止の意味合いが大きいということ、更に戦場に展開する前の最終訓練地としての意味合いが非常に強いわけです。


現在では、アジアでの不測事態対処が大きな任務となっていると思います。


そのことを考えても、インドネシアでの地震・津波な際の沖縄のMEUがすぐ急行しHADR (Humanitarian Assistance and Disaster Relief ) Ops (Operation) ヘイダ―オップス(人道的支援及び災害派遣)を実施してきた経緯からも理解できます。


何かあったら率先急行するのが海兵隊です。


ですから、海兵隊は槍の先部隊 (Spear Head Troop ) というニックネームを持っています。


このことから言えるのは、アジアで何か不測事態が起きた場合は、テロ然り、自然災害然り、戦争行為然り、当初対処するのは海兵隊です。


その他の軍は議会の承認を得たり、手続きを踏む必要があります。


つまり、他軍種は展開するまでに時間がかかるわけです。


First Responder として海兵隊がすべきことは何でしょうか?


それは、多くの外国の軍隊と共同訓練を実施し、相互運用性を高める必要があるということです。


ですから、海兵隊は、韓国、モンゴル、フィリピン、タイ、インドネシア、オーストラリア等の国々の軍隊と共同訓練をかなりタイトなスケジュールで行っているのです。


これらの訓練を通してお互いの国を知り、民族性を知り、文化・風習を知り、相互理解を深め、相互運用性を高めているのです。


在日海兵隊にとって難しい部分とは彼らがそれぞれの国に展開してアウェイの形だけで訓練をしなければならないということです。


勿論、それらの国の特色や地域を知るためには出張ることは重要です。


しかし、海兵隊は本来沖縄にも諸国が来ていただき共同訓練できればと更に効果は上がると考えていたのです。


しかし、沖縄は日本ですから、日本の主権を侵し他国の軍隊を日本に招待し訓練することは出来ません。


よって、グアムに移転することは海兵隊の軍の特性から言って様々な国と自ら主導性を持って訓練した方が、海兵隊の練度向上にもつながるというわけです。


グアムにはもともと米空軍が基地を持っていますので軍にとっては海兵隊移転によって更にグアムの防衛力アップにもつながります。


また、移転先のグアムでは、海兵隊の基地のためのインフラを整備しなければなりませんが、そのお金は日本政府が支出することになっています。


これでアメリカは懐を傷めず、更には海兵隊の強化が図れると考え、グアム移転に同意したわけです。


ここで、日本の議員の一部が懸念を表明しました。


それは、海兵隊が沖縄から8千人もいなくなってしまっては、「いざ鎌倉」という事態の時、米軍は日本を守ってくれるのだろうか?というものでした。


ここでの米政府の説明は、高速艇を海兵隊のために準備し、不測事態が発生したときはグアムから日本に3~4時間で展開できるようにしたい、と言ったものでした。


そこから、オスプレーを配備し沖縄・グアム間を飛ばし迅速に海兵隊を日本に展開させると言ったものに変わりました。


ここまでで言えることは、アメリカは、「沖縄の人たちの負担を軽減するために我々は海兵隊をグアムに移転させます。多くの沖縄の人々は安心するでしょう。また不測事態が生起してもオスプレーで展開できます。よってオスプレーは沖縄に展開させます。よろしいですね。」といった感じになっています。


外交的には100点ではないでしょうか。日本政府は、ぐうの音も「出なかった可能性があります。


このような裏話があるわけです。


この話は、政府間レベルの外交的な部分で、多くの駐留している海兵隊員にとってはあまり関係のない話かもしれません。


彼らは、日々の任務に愚直に取り組んでいるわけですから。


終わり