第3回 米軍について~その2~ | 熱血講師 ショーン 近藤 Leadership & Language Boot Camp

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第3回 米軍について~その2~


昔から軍隊は、一つの小さな社会、つまり社会の縮図という風に言われています。


なぜなら、軍という組織だけであらゆることに関し、完結できるという性質を持っているからです。


軍は、教育・訓練、人事、情報、作戦行動、補給(兵站)、通信、戦略などあらゆることに通じています。


社会で起きている問題も軍では必ずといっていいほど起きます。


自衛隊でも同様です。


皆さんもネットで、「自衛隊」、「不祥事」で検索すれば自衛官が起こした事件を閲覧することができます。


自衛隊でもそれらの問題を解決するために、精神教育や普及教育等を実施し、問題の再発防止に努めているところです。


薬物問題、破廉恥行為、交通違反、暴力行為、いじめ等々、社会の問題が自衛隊内でも起きているということです。


これらを解決するために組織一丸となって日々奮闘しているのです。


では、一方米軍ではどうでしょうか?


アメリカは様々な人種で構成された国です。


軍人も様々な人種がいます。


その昔、第2次世界大戦のころ、アメリカでは、ジム・クロウ法という法律がありました。


これは、人種差別を規定する法律です。


黒人を含む有色人種は一般の公共施設を使ってはいけないというものでした。


この法律は軍でも適用されていました。


ですから、白人部隊と黒人部隊は違う施設を使用していましたし、黒人部隊は、公然と差別を受けていましたが、それでもアメリカ兵として戦場に向っていったのです。


また、歩兵なら黒人はなれるが、パイロットにはなれないなどの制約も多くありました。


しかし、優秀な黒人兵士らから「パイロットとして戦わせろ。」という運動が沸き起こり、最終的にはパイロットとして黒人兵士も運用されます。


しかし、白人の下位の兵士たちは黒人の言うことを聞こうとはしませんでした。


この頃から、軍は、人種差別撤廃の動きを見せます。


このような社会問題も軍では、当然のように起きます。


軍は命を賭して戦う組織ですから、そのような問題で組織内に不協和音を出すわけにはいきません。


一致団結し、事に臨まなければ戦死という結果が待っているだけです。


この Equal Opportunity (機会平等)の考えは、人種間だけでなく性別間にも波及していきます。


現在では、ほとんどの職種は、女性兵士に門戸を開けています。


戦闘機のパイロットにもなれます。


私も実際、三沢から飛行してきた女性戦闘機パイロットが操縦する航空機を管制した経験があります。


また、最近では、海兵隊では歩兵士官の道を女性に対して開きましたし、陸軍でもレンジャー訓練を女性に対して実施しています。


実際、2人の女性兵士が合格しました。


陸軍は、「これを機に、あらゆる有能な兵士がこのような訓練を受けられるようにならなければいけない。」と述べています。


また、私が米陸軍に留学していたとき大きな問題となっていたのが、Don’t Ask Don’t Tell Policy でした。


これは、同性愛の兵士に対する方針です。


たとえば、部隊の人間は、「この兵士はゲイだろうか。」と思っても面と向って聞いてはいけないし、同性愛の兵士はそのような質問をされても答える必要はないという方針です。


この方針のおかげで、現場(一般部隊)ではものすごい混乱が起きていました。


私は、現役時代は「曹長」という階級でしたが、米軍ではこの「曹長」という階級は非常に大事で、指揮官の方針を、もれなく部隊全部に行き渡らせる任務と兵士の面倒を見、部隊の健全な雰囲気を保つという大きな任務を持っています。


曹長は、指揮官の右腕として動かなければなりません。


また、部隊内の雰囲気について指揮官に報告して、部隊の精強化を図っていく必要があります。


そこで、部隊に明らかにゲイと思われる兵士がいるとその他の兵士から不平・不満が出てきます。


そこを諫めるのが非常に困難だったわけです。


大統領の方針としては、「兵士として有能であれば、性的嗜好が通常と異なっても兵士として任務に就かせなさい。」というものです。


当時は、イラクとアフガニスタンという大きな問題を抱えていた時期ですので兵士の需要が非常に高く、多くの若者を戦場に送り込まなければならないという背景もあったのかもしれません。


オバマ大統領は、民主党でリベラル派ですので、このようなソフト路線の思考があったと思われます。


実際に、現在、連邦政府は、同性婚を法律的に認める見解を出しております。


このように社会問題として大きく取り上げられているものは、軍でも少なからず起こっており、軍は、その対処を常に先頭に立ってやってきているという現実があります。


その他に対処している問題と言えば、新兵教育です。


アメリカも日本同様、若者の体力低下が顕著です。


米軍では、X-Box Generation と言って「テレビゲーム」ばかりしている世代のため、新兵教育では多くの問題が生起します。


人間同士のコミュニケーションが希薄であるため、チームとして動けない、人の心情を理解できない、訓練中の集中力欠如などが挙げられます。


体力面、精神面を強化するため「曹長」以下教官は工夫しながら兵士を教育し訓練しているのが現状です。


また、自殺というのも大きな問題です。


多くの兵士は、戦場で凄惨な現場を幾度となく経験してきます。


これが頭から離れず、自分の取った行動について罪の意識に苛むわけです。


そして自ら命を絶ってしまうという深刻な状況が生起しています。


自衛隊でも東日本大震災の後、多くの自衛官がPTSDに病み、自殺者も出ました(数に関しては公表できません)。


米軍では、この自殺を防止するためのプログラムを躍起になって展開しています。


その総計は、戦死者訳6,800名を超える数字となっているようです。


軍も人間あっての組織です。


このような自殺が蔓延すると、部隊では重苦しい空気が漂い精強な部隊を作り上げるのは難しくなります。


また、軍における性的犯罪も大きな問題です。


性的嫌がらせやパワハラに関する問題も多くあり、これらの問題に対し様々なプログラムを準備し、実行しています。


映画等でご存知の方も多いかと思いますが、アメリカには軍事法廷があります。


事件等があれば、憲兵(Military Police - MP)が捜査、逮捕し法廷で裁かれます。


弁護士も検察も陪審員も裁判官も全て軍人です。


そして米軍には、軍刑務所があります。


そこで罪を償うのです。


今まで法廷で事件として扱われたセクハラ等の事件は氷山の一角と言われております。


やはり、被害者の兵士は事の一部始終 ( the ins and outs) を法廷で話さなければなりません。


それを出来ない被害者が多くいるということです。


軍隊という組織上、規律、士気が重視されます。


心無い兵士によって国家・国民を護るという崇高な任務に就く兵士を傷つけるようなことがあってはならないと思います。


ほとんどの兵士は、組織内で起きている問題に対処しながら、与えられた命にかかわる任務をこなし、国を護っているわけですから。


次回は、海兵隊について少しお話ししていきたいと思います。