洗顔料のスクラブ剤や化粧品のプラスチック微粒子はマイクロプラスチックビーズ(以下「マイクロビーズ」と言う)と呼ばれ、下水処理では回収できず海に流れ出てしまいます。

このマイクロビーズを動物プランクトンが誤飲して、食物連鎖によって上位捕食者(最上位は人間)に蓄積されてしまう恐れも指摘されています。

近年、プラスチック微粒子による海洋汚染が問題となっており、マイクロビーズに関して、諸外国では下表に見る法規制によって使用を禁止するか、流出を止める手立てを構じています。

 

日本はこの問題にどのように対処していくのでしょうか? 

マイクロビーズの製造・流通・販売を禁止する法規制は、政府のプラスチック資源循環戦略でも手つかずのままで、依然として化粧品メーカーなど業界団体や個別企業の自主規制に委ねられています。

このようなことでは、「2050年までに海洋プラスチックごみによる追加的な汚染をゼロにするというG20大阪サミットで共有されたブルー・オーシャン・ビションの実現が見果てぬ夢に終わるのか?」と先行きが懸念されていましたが、CLOMA(*注記1)の構成会員であるレンゴー(株)と(株)ダイセルは化粧品などに使われているマイクロビーズの代替素材としてマイクロセルロースビーズを開発したことを発表しました。

■   レンゴー(株)の発表

 

 紙と同じ木材パルプを使用した原料を使って、今まで樹脂フィルムで製造していたものを生分解するセロファンや紙などのセルロースで代替する研究をし、ビーズ状のプラスチック製品に対しては、セルロースをミクロサイズに加工したセルロースビーズ(商品名:ビスコパール)を開発。任意に大きさ (3μm~4mm) を変えることもでき、マイクロプラスチックの代替素材になるという。「セルロースビーズ」は海洋生分解性があり人体にも影響がない素材で、洗顔や歯磨き粉のスクラブ剤としても安心して利用でき、下水を通って河川や海に流出しても最終的には水と二酸化炭素に分解されます。

 

■   (株)ダイセルの発表

天然物由来の酢酸セルロースを微細な粒子状(直径7μm)に加工し、マイクロプラスチックによる海洋汚染が問題となるファンデーションなどの化粧品が含む微細なプラスチック粒子の代替素材として開発されました。

この酢酸セルロース(商品名:BELLOCEA)は、天然に存在する酢酸と植物由来のセルロースを合成した素材で、土壌やコンポスト、海中で微生物により分解される特性があり、分解速度は環境にもよりますが数か月から数年と言われています。

 

【まとめ】

冒頭で、プラスチック微粒子による海洋汚染の問題について、洗顔料のスクラブ剤や化粧品などに使用されているプラスチック微粒子が下水処理では回収が困難で海に流れ出て行くと記しました。

また、このプラスチック微粒子を含む海洋プラスチックごみは、海中で分解するのに数十年~数百年を要し、海中の有害化学物質を付着させ、食物連鎖により人体へ悪影響の懸念があることに言及しました。更に、マイクロビーズについて、海外での法規制による使用や流通の禁止例を表示しました。

ここに紹介した環境負荷の低い代替素材のセルロースビーズが、プラスチックごみ問題がクローズアップされる中、欧州を中心に世界的に需要が高まる素材として、海洋マイクロプラスチックごみ低減への貢献が期待されます。

by 海士人