チェーンセーン
ランナータイ王国の古い都。
遺跡の残る国境の街。
「あんたら今日、どこに泊まるねん。」
メースワイのリス族の村をチェンマイに向けて出発した会長から連絡が入る。
「チェーンセーン。」
「チェーンセーン?昨日も泊まってたやん。何もないやろ。」
「何もない事ないで、メコン川は流れてるし、遺跡はあるし。」
「遊ぶ所ないやん。若い子が好きそうな。」
「確かに、そう言うのはないけど、そう言うのが無いからええねん。」
チェーンセーンには、タイの若者が好きなショッピングモールは無いし、オシャレなカフェも無い、遊園地なんかは勿論無い。
チェーンセーンの北、車で30分位の所にあるゴールデントライアングルに比べて、このチェーンセーンは、昔から訪れる人は少ない。
侘び寂びの精神など無く、古い物をことさらありがたがらないタイの人々には、街中に残る遺跡が世界遺産にでも認定されない限りは、遺跡目当ての観光客は、当面、増えなさそうである。
それが、自分達にはいい。
自分達と言うのは、自分と東京から来られた空手家Kさんである。
チェーンセーンの魅力を上げるとすると、
何と言っても、チェーンセーンの良い所は、早朝のメコン川。
もし、チェーンセーンを訪れる方がおられるなら、メコン川越しにラオスの森から昇る太陽を眺めて欲しい。
これは、ここでしか見れない物で、その空気感を肌で感じて欲しい。
そして、街のあちこちにある遺跡。
ホテルやゲストハウスでは、自転車を貸してくれる所がある。
自転車でブラブラ遺跡巡りも楽しい。
街は、チェンマイなどに比べて車が少ないし、小さな街なので、自転車でブラブラするのは、オススメである。
そして、夕方からメコン河沿いに現れる歩道にゴザを敷いただけのにわかレストラン。
チェーンセーンの人々の楽しみは、このゴザに座って料理を食べながらビール🍺と言うものが一番の楽しみではないか、と思ってしまう。
自分達は、結局、チェーンセーンに3泊したけど、夕方、毎日、河沿いのレストランで、チムチョムと言う素焼きの土鍋をつついていた。
そして、チェーンセーンに住む人々。
タイの首都バンコクから遥か離れ、北部第一の都市チェンマイからも遥かに離れた国境の街チェーンセーンには、お金にガツガツして生活する人は少ない。
お金儲けがしたければ、人口も少なく、観光客も少ないこの街より、大都会に出る。
だから、この街に住んでいる人は、昔から住んでいるか、この街が好きなのである。
昔ながらのタイの風景が残る街と言うのだろうか。
だから、チェーンセーンを訪れたら、現地の人に触れて欲しい。
最初は、外国人観光客に慣れてない彼らは、警戒してとっつきにくく感じるかも知れないが、こちらが構えなければ、彼らは、直ぐにフレンドリーになってくれる。
この謎のカフェ、実は大人気のカフェで、自分達がゆっくりしている間にも客が引っ切りなしに来ていた。席に長時間座る人は少なく、甘いコーヒーを飲んで、直ぐ立ち去る人が多い。中でも驚いたのは、生卵を飲んで、直ぐ立ち去る人が何人もいた事だった。生卵を飲む人を見て、映画『ロッキー』を思い出した。
自分のチェーンセーンでの定宿は、パク ピン リム コンと言う道を渡ったら直ぐメコン河と言う立地のホテルである。
そこの受付のお姉さんとは、もう知り合ってから5年位になるだろうか。
このホテルは、家族経営のホテルなのだが、お客さんに対しても、いつも笑顔でフレンドリーに迎えてくれる。
夜明け前、部屋からの眺め。
そして、武道修行者である我々には、普通の人には何とも無いけど、特別な場所がある。
隠れ修行場所と言うか、秘密のジムと言うか。
ホテル、パク ピン リム コンの前の道を渡って、メコン河の所に行くと、メコン河を見ながらトレーニングする事が出来るジムがある。
ランニングマシーン、エアロバイク、ウエイトトレーニング器具以外に、サンドバッグやムエタイ練習用具まである。
今回は、このトレーニングルームは使えなかった。年末年始の臨時休業。2日まで休みと張り紙があった。営業時間は朝9時から。使用料1人20bt。3日の朝9時に行ったけど、鍵がかかっていて入れなかった。近くに居た地元の人に聞くと、
「朝は、客が居ないから、そこの奴、別の所で働いてるで、夕方なら居るとおもうわ。」と言われた。
タイ、あるあるである。
メコン河の朝日が醸し出す何とも言えない氣。遺跡のある落ち着いた街並み。金にガツガツしない、ちょっとシャイだけど優しい人々。メコンを眺めながらのトレーニング。
何もない(?)と言われても、それ以外何もいらない、と自分達に思えてくる街、チェーンセーン。
次は、内弟子とトレーニングキャンプに行きたいな。