大体ビバリーヒルズにおいしい店なんてないのである。というのはもちろんいいすぎだが、ビバリーヒルズという名前からとてもうまいものがあるんじゃないかと期待しすぎていると、肩透かしをくらうことが多い。客層が観光客と地元のコンサバな人たちで成り立っているせいか、Urasawaなどの超ハイエンドの店を除けば、意外と洗練されていない料理を出す店が多いのだ(ここで念頭にあるのは、いくつかの凡庸なイタリアンの店、そうおまえだよおまえ、XXXXX(伏字))。


あのセレブシェフのスコット・コナンがNY,マイアミ、トロントに続いて4店目になるスカルペッタ(Scarpetta)をビバリーヒルズに開いたという話は聞いてはいた。聞いてはいたが、そういうビバリーヒルズのイメージのせいもあってなかなか行く気が起きなかった。しかしいろいろといい評判が耳に入ってくるので、ついに今回重い腰をあげてとりあえずランチに出かけることになった次第。

$ロサンゼルスにだっておいしいものはある-Scarpetta


ビバリーヒルズの街中のホテルでは、プリティー・ウーマンに出てきたあのホテル・ウィルシャーが昔から比較的よく知られている。しかし、ビバリーヒルズ最高級のホテルの称号は、最近できたここホテル・モンタージュに与えられることはまず間違いないだろう。スカルペッタはそのモンタージュの一階、内庭に面した場所に店を構えている。


あかるい庭園から店の中に入ると、ダークな色調の内装に囲まれて急にあたりが暗くなった。時間はランチにしては少し遅めだったが、店はそこそこ混んでいる。地味だが趣味のいい服装をしたコンサバティブな感じの30代ほどの女性と、爬虫類の皮の細いパンツにラメつきのジャケットを着たミュージシャン/プロデューサーみたいな長髪の男性が一緒に食事をしているのが目に入る。いかにもビバリーヒルズらしいなと思う。この二人の共通項には金持ちであることぐらいしか想像できない。

$ロサンゼルスにだっておいしいものはある


といううちに、フォカッチャとパンが来た。ディッピングは向こうからマスカルポーネ&バター、Eggplant Caponata(なすとトマトのシシリー風煮込み)、そしてオリーブオイル。Caponataがとてもおいしい。ぺろりと平らげてしまうと、すぐにお代わりを持ってきてくれた。なかなかサービスは悪くない。


$28でリストから何でも2皿頼めるということなので、連れとばらばらのものを頼むことにする。まずはパスタ2皿だ。ひとつはスコット・コナンがその名を知られている”Spaghetti”(トマトとバジルのスパゲッティ)。

$ロサンゼルスにだっておいしいものはある-スパゲッティ


とてもクリーミーな舌触りなのに、トマトとバジルの鮮烈な香りが残っていて面白い。パスタは生パスタ、最近流行の太目のパスタ(Spaghetti)で、しっかりとした歯ごたえがありソースに良くあっている。評判ほどは驚かなかったが、これはたしかにおいしい。

$ロサンゼルスにだっておいしいものはある-Spelt Pasta


もうひとつのパスタは”Spelt Pasta alla Chitarra”、スペルト小麦のパスタだ。かぼちゃのキューブとポルチーニ茸、そして、アジアゴチーズがかかっている。そばのような風味のあるパスタなので、その風味を生かすため味のきつくないソースにしたのは正解だろう。しかしこれを食べていると日本のうまいそばを思い出してしまい、それと比べるとちょっと見劣りするかな、と無駄に損した気分になってしまう。

$ロサンゼルスにだっておいしいものはある-ポレンタ2


次が今回の最大の収穫、”Creamy Polenta”(ポレンタwithトリュフソース)。これもスカルペッタの人気メニューだということだが、このトリュフのソースがやばい。ちょっと舌がくどくなる系のうまみがある。Scarpettaというのはイタリア語のスラングで、皿に残ったソースなどをパンでふき取ることを意味しているらしいが、このソースは一滴も残さずいただいた。ポレンタ自体も、なかなかいけている。ポレンタはコーンで作ったそばがきのようなもので、今まであまりおいしいと感じたことはなかったんだが、これはクリーミーでかなりおいしい。
$ロサンゼルスにだっておいしいものはある-Scallop


最後の料理は、"Roasted Sea Scallops"(帆立のロースト)だった。これはいい材料をそのまま素直に料理しましたという感じで普通においしい。

さて、全体の感想としては、これで一人$28という値段設定はなかなか悪くないんじゃないかと思う。少なくとも次はディナーに来てみようかという気にはさせられた。ビバリーヒルズで食事をする予定なら、ここはおすすめ。

評価:$ロサンゼルスにだっておいしいものはある


追記:この店はもう閉店してしまいました。ちょっと遠いけど、ローリング・ハイツ店はまだあいています。

最初の記念すべきエントリーは、Shufeng Yuan (a.k.a.Shufeng Garden)にしよう。もちろんこれは名前のとおり四川料理のお店だ(成都は四川省の省都)。

$ロサンゼルスにだっておいしいものはある-Shufeng Yuan (成都蜀風園)

LAにはおいしい四川料理の店が多いのだけど、ここはその中でもベストのうちの一つだろう。そういえば、あのピュリッツァー賞をフードライターとして初めて受賞したジョナサン・ゴールドが2009年のベストの一皿としてあげたのが、Rowland Heightsにあるこの店の本店(Shufeng Garden)の坦々面だったっけ。

$ロサンゼルスにだっておいしいものはある-冷菜

この店では入り口のすぐそばに冷菜のカウンターがあるので、まずそこでいくつか前菜を頼んでみた。3品で5ドル弱ぐらいなのだが、2品にして1品ずつを少し多めに盛ってもらう。一品は紅油耳片(Sliced Pork Ear with Red Spicy Sauce)、ラー油などで和えた豚の耳のスライスである。もう一品は鴨らしいのだがこれがよくわからないので何なのかと聞いてみると、どうやら店員さんは英語がよくわからない様子。すると奥で働いていた小学生くらいの英語ネイティブの女の子が来てくれたが、今度は彼女は料理のことをあまり知らないようだ。ふたりで少し中国語でペラペラとやりとりした後に教えてもらったところによると、どうやら鴨の首と手羽の肉ということらしい。しかし食べてみるとそれに加えてレバーなど内臓も入っていた。まあ、とにかくどっちの前菜もしっかりうまい。ビールを一杯いきたいところだったが、運転しなきゃいけないのでここはじっと我慢。

$ロサンゼルスにだっておいしいものはある-香辣羊排

メインでは 香辣羊排(Lamb Steak in Hot Sauce)をとった。運んできた瞬間むっという羊の匂いが鼻をつく。これは羊が嫌いな人にはだめだろうな、と思う。しかし僕にいわせれば、羊臭さがないというのは必ずしもほめ言葉ではない。逆にこの匂いが食欲を刺激するのである。もしも羊がどうしても苦手ならば、この店には香辣子鶏(Spring Chiken with Hot Sauce)というこの羊を鶏肉に変えただけの料理があるようなので、そちらを頼むといいかもしれない。

さて、まず一口羊のリブのフライを頬張ると、まるでスナックみたいなそのクリスピーさに驚く。そしてこの香ばしさ。羊の骨付きリブをキューブ状に細かくぶつ切りにして塩とクミンなどのスパイスで下味をつけ、カリッカリのフライにした後、丸のままの唐辛子と玉ねぎなどと強火でガッといためたというところだろう。いやこれもうまいよ、本当に。油通しした後に炒めるというのは中華の基本だけど、フライにした後さらに炒めるというんだからすごい。日本料理にはない発想だね。そしてやっぱりこの料理にもビールがあうのです。この時にはビールを頼まなかったのを本当に後悔していたが、もう遅い。

今回の料理だけなら星4つというところだけど、いままでの経験を綜合してこのお店には5つ星をつけることにしよう。というわけで、このブログ、幸先よく5つ星からスタートすることにする。つぎは打って変わって話題のイタリアンのお店を取り上げる予定。

評価:$ロサンゼルスにだっておいしいものはある

どうもはじめまして。これからロサンゼルスのおいしいものを淡々と紹介していきたいと思います。

ブログの題名は「ロサンゼルスにだっておいしいものはある」と控えめですが、ロサンゼルスには、日本はもちろんアメリカのほかのどの都市でも(NYは除くかな...)なかなか食べられないようなおいしいものがいっぱいあるのです。

ロサンゼルスが食に関してアメリカの中でも特別なのは、そのインターナショナルさです。しかもいろいろな国の料理が楽しめるだけではなく、それぞれの国の特定の地域のオーセンティックな料理すら楽しめるのがLAスタイルなのです。

これにはもちろん移民の数とバラエティーが圧倒的に多いことがありますが、それにくわえて広大なエリアを利用して同じ地域からの移民が集住しているということがあります。日本人街(Little Tokyo)はその古い一例ですが、それ以外にもタイタウン、コリアンタウン、アルメニア人街など地域別のコミュニティーが数えきれないほどあります。このような場所では移民の客が大半なため料理がアメリカナイズされず、オーセンティックな味が生き残るわけです。

もちろんオーセンティックな各国料理のみがロサンゼルスの売りなわけではありません。いろいろな料理が影響しあってアメリカなりのものが生まれてくるところもとても面白いところです(最近では韓国BBQタコスとか)。さまざまな料理のスタイルの影響を受けて進化したいわゆるカリフォルニア料理の中心もやはりロサンゼルスでした。

ロサンゼルスを訪れる人にぜひ時間をかけてでもいってほしいようなお店をたくさん紹介するのが僕の目標です。きっとガイドブックに載っているような店に行っても得られない経験ができると思います。僕の記事を見てそのお店に実際に行ってみた、という方が一人でもいらっしゃれば本望です。そのときは一言コメントくださるとうれしく思います。