Pre-Raphaelite Brotherhood

 

著:荒川 裕子

 

2019年3月 初版第1刷発行

株式会社東京美術

 

読了しました。

一昨年、あべのハルカスミュージアムで

ラファエル前派の展覧会を見に行った時に入手した本です。

 

本のサイズがA4で掲載されている絵を綺麗に楽しめます。

 

ラファエル前派の歴史をその始まり(1848-1853)、

兄弟団の崩壊とその後(1953-1860)、

第二世代の出現(1860-1882)、

第三世代への継承(1882-1930)の

4つの時代に章を分け、

その時代毎の作品と動きを説明しています。

 

ラファエル前派は宗教を題材にした絵を描いていますが、

その作品では

イコノグラフィー(図像学)やタイポロジー(予型論)を

使用すると同時に、

歴史的また科学的事実に基づいた

精密な描写を行う近代性の両立が見られます(p.24)

 

この近代性と中世趣味の混合は宗教画以外でも見られ

ラファエル前派の特徴です。

 

各画家の紹介と時代毎の変遷、

各作品の説明が中心の書です。

初めて知る作品も多くあり、勉強になりました。

 

本書を読んで改めてラファエル前派兄弟団の結成の時期が

1848年であることの必然性を感じました。

この年にはパリでは二月革命が起き、

マルクスとエンゲルスが「共産党宣言」を出版します。

そしてその前から始まっていた

チャーティスト運動のデモが起こった年でもあります。

まさしく起こるべくして起こった

英国美術界の革命だと思われます。

 

今までは各作家や各作品を個別に捉えてきましたが、

本書を読んでその歴史の流れに着目しました。

解説も分かりやすいので入門書としてお薦めです。

よくを言えば私が好きな「シャロットの姫」を

取り扱っている作品が

もっと掲載されているとなお良しですが。

 

 

 

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