『アーマード 生還不能』

マーク・グリーニー 著 ハヤカワ文庫

 

 

ベイルートの任務で片脚を失った民間軍事会社の傭兵ジョシュは、メキシコ麻薬紛争での危険なオペレーションに、再び身を投じる!

 

 

【内容(本の裏表紙あらすじより)】

上巻

民間軍事会社の警護員ジョシュ・ダフィーは、ベイルートでの任務で左脚を失い、鬱屈した日々を送っていた。そんなある日、かつての同僚との再会から民間軍事会社アーマード・聖闘士の一員として復帰。与えられた任務は、メキシコ西シエラマドレ山脈で麻薬カルテル「黒い騎士」と和平交渉を行う代表団の警護だった。ジョシュはハンディキャップのある身ながら、ひとくせあるメンバーばかりのチームを率いて出発する!

 

下巻

西シエラマドレ山脈は麻薬カルテルが勢力争いを続ける無法地帯だった。さらに、麻薬カルテルの仲介カルドーサが和平交渉を利用し策謀をめぐらしていた。道中、アーマード・セイントの車列は、何度も予期せぬ襲撃を受ける。果たして、ジョシュらチームは交渉の地にたどり着けるのか?そして、無事生還することができるのか?現代冒険アクション小説の最高峰、グレイマン・シリーズの著者による衝撃の新シリーズ開幕!

 

アーマード

 

 

マーク・グリーニーの『グレイマン』シリーズは最高に面白い小説だ。

映画にもなっているので知っている人も多いと思う。

その彼の新シリーズがスタートした。

『アーマード 生還不能』のタイトルでだけでも、ぞくぞくするほど面白そう。

 

主人公は民間軍事会社に籍を置く、ジョシュ・ダフィー

まず冒頭は、レバノン・ベイルートでの任務から始まる。

レバノン大統領の選挙運動で候補者パンサー(暗号名)を警護する任務。

このつかみのシーンがいつもの著者の得意とする臨場感あふれるシーンとなる。

選挙演説が終わって候補者と妻をホテルまで送る途中襲撃される。

そして生き残ったのは彼とパンサーの妻のみ。

味方の救助場所までたどり着くが、左脚を失い膝下の義足となる

というわけで、義足になったダフィーの物語が始まる

 

この著者のグレイマンもこんな調子でプロローグはいきなり戦闘シーンから始まるのだ。

まあ、つかみ はうまいよね。

 

そして今はショッピングモールの警備員。

経済的にも恵まれず辛い毎日の中、かつての同僚の口利きで民間軍事会社 アーマード・セイント の仕事を、義足であることを秘密にして受けた。

妻は軍隊大尉のキャリアを捨て、今は清掃会社を起ち上げ家族を支えている。

アーマードはかなり危険な仕事を請け負う悪い噂のある会社だ。

うけた仕事は3つのチームのうちの一つのチーム・リーダーとして3週間の約束で3万5千ドルの報酬。

3つのうち2つのチームはそれぞれ8人の人員、ダフィーのチームは6人、計22人

麻薬カルテルとの和平交渉を行う政府関係者国連職員計4人の危険な紛争地帯での警護が仕事で、生きて帰れるかどうかわからないという危険な仕事だ。

 

ウクライナの戦争で、プリコジン民間軍事会社【PMC(Private military company)】ワグネルで知られるところとなったが、正規軍ではないため死亡時のお金も出ないし怪我しても治療費も出ない。

ダフィーも脚切断、そして義足の費用も自前。その借金もあってこの悪名高いアーマードに雇われることにしたのだ。

いきなりチーム・リーダーで、本人は3年間のブランクもあり自信がなかったがお金が欲しかった。愛する妻と子どものため彼は受ける決心をした。

メキシコで各チームと集合。

ダフィーの部下5人は、なんと一癖も二癖もある面々。

グリーンベレー、陸軍特殊部隊、SEAL、SWATの前歴のある輩で、義足であることを知られると甘くみられるので何としても隠し通さなければならない。

ダフィーは、チーム・リーダーとして彼らをまとめることができるか。

メキシコの山岳地帯での任務の詳細を聞くと、危険すぎて生きて帰還できないのではと思うほど過酷を極めるものであった。

 

そして、このメインストーリーが始まり、手に汗握るアクションシーンの連続で読者を喜ばせてくれる。

 

この小説の一番の特徴は、戦闘方法や武器の詳細が専門的で臨場感抜群であるということ。

作家自身が高度な戦闘技術の訓練を受けているのでリアルだ。

上巻では、まだ彼らの任務がどういうものなのかが読者にはあまり伝わらないので、ちょっとイライラする。

下巻に入ると、襲撃が続き、それがどの組織からの攻撃なのかが分からない。

複数の麻薬カルテル、汚職にまみれた軍隊警察、そしてカルテルの暴力から身を守ろうと武器を持つ地元民

いったいそのどれからの攻撃なのか。

そして22人のアーマード警護員は次々と命を落としていく。

ある時から、どうも自分たちの情報が洩れているらしいと内部スパイを疑う。

読者は大体そのスパイが誰なのか想像はつく。

伏線がありすぎるからだ。

でもそんなことは物語には取るに足らないことだと思う。

ダフィーは義足であることがバレる羽目になる。

何かあった時の即応部隊(QRF)は通常はあるはずなのだが今回はなぜかない。

そして事態は絶体絶命

 

彼らを救う人間はいるのか。

 

というわけで、結末に向けての展開は スピード感 緊迫感 漂うものとなる。

 

上巻までは彼らの敵が誰なのかがぼんやりしていているので面白さがまだ出てこなかった。

下巻からは戦闘シーンがウクライナやイスラエルの戦いなどで、平和ボケの日本人でも武器などの知識が増えているので、リアルな世界を想像できる展開となった。

 

どうしても、この作家の『グレイマン』と比較してしまい、こっちも面白かったけれど、やっぱり『グレイマン』の方が私的には好みだと思った。

本作もシリーズ化しているらしいので、次作が出たら読みたくなると思う。