『グレイマンの正義』

マーク・グリーニー 著 ハヤカワ文庫

 

『グレイマン』シリーズの2作目『グレイマンの正義』

 

 

【内容(「BOOK」データベースより)】

“グレイマン(人目につかない男)”と呼ばれる暗殺者ジェントリーは、ロシア・マフィアから、悪名高いスーダンの大統領の暗殺を依頼された。

だがCIA時代の上官が現われ、意外な提案をする。

大統領を暗殺するふりをして拉致せよ。

成功すれば、今後命を狙うことはないというのだ。彼はロシア・マフィアの依頼を受けたように見せかけてスーダンに赴くが、次々と思わぬ事態が!『暗殺者グレイマン』に続く傑作冒険アクション。

 

暗殺者の正義

 

 

 

ジェントリーは瀕死の重傷を負って数か月が経った。

痛みは、1週間ごとに和らいだ。彼の治癒力は信じられないほど強かった。

だが精神力はそれよりも弱く、薬と注射の依存症になっていた。

 

いま彼はやむを得ない事情があって、ロシアマフィアのシドに雇われている。

仕事を依頼されたため、軽い鎮痛剤だけで強い薬は絶つことにした。

 

アイルランド、ダブリンで殺しの仕事を片付けたジェントリーは、シドに次の仕事を依頼された。

スーダン大統領のバクリ・アブブードの抹殺だ。報酬は400万ドル。

暗殺はロシア政府の依頼だという。

ロシアとスーダンは良好な関係であるはずなのに…

 

そのあと、CIA時代の上官ザックに拉致され暴行を受けた。

そしてスーダン大統領の暗殺に関して、ある提案をされた。

 

シドの仕事を受けるふりをつづけ、土壇場で拉致する。

 

どうやら、政治がらみの思惑があるらしい。

 

その仕事を成功させたら、“目撃しだい射殺” 指令を解いてやる。

そして、CIAにお前を復帰させ仕事を続けさせてやる。下請けをしてもらうということだ。

ただし、CIAは “グレイマン” を使っていることは認めない。

 

ジェントリーは訊いた「いったいオレがどんな悪いことをやったというんだ」

 

ザックは「上層部からの抹殺指令で自分にはわからない」と…

 

ノクターン・サファイア作戦と名付けられたこの任務を彼は受けることにした。

 

彼の暗号名は、「シエラ・シックス」、これは前のCIAウィスキー・シエラの時と同じだ。

ウィスキー・シエラは6名のチーム。

上官のザックは「シエラ・ワン」。

それぞれが、数字で呼ばれ、ジェントリーは当時一番若く28歳だったため最後の6であった。

 

そして、計画会議が始まる。

 

 

ジェントリーはスーダンに潜入しようとしていた。

 

が、しかし、次から次へと思ってもみない事態に遭遇してジェントリーは一つ一つ解決しなくてはならなくなる。

計画があってなきが如く崩れていく。

 

敵地に行くまでに、手に汗握る連続。

この作家は読者を喜ばせる天才だな~

 

ジェントリーは冷徹な暗殺者のはずだが、人情と優しさも持ち合わせているので、そこが彼の弱点のように思える。

そのために窮地に陥ることも多い。だから話が面白くなるんだけどね…

 

前作と同じで会話がすごく粋でかっこいい。

 

スーダンのダルフールで脱出途上中ジェントリーたちはジャンジャウィードに襲われた。

武器もなく、ジェントリーは手製の時限爆弾で何とか殺されずに生き延びた。

 

この地から一刻も早く脱出しないとまた、敵が襲ってくる。

敵の二人の負傷者を見て、かかわった国際刑事裁判所の特別捜査官の女に言われる。

負傷者を見殺しにはできないと。

女の目の前で、グレイマンは負傷した敵の男ふたりの胸にそれぞれ1発ずつライフルの弾を撃ち込んだ。

「問題はなくなった。行くぞ」と、彼は平然と言う。

「ひとでなし!」と彼女はわめいた。

女は、襲われ殺されそうになったところを助けてもらって感謝してもいいはずなのに、かわいくない女だな~

彼は言う「おれの稼業は人を殺すことだ」と…

ニヒルな男はかっこいいね~

そんな会話が随所にあって、思わずニヤリとしてしまう。

 

グレイマンは、ある人には温情をかけ、ある人には冷徹になる。

その女には、その違いが解らない。

グレイマンの職業的正義感があるのだ。

この小説の『暗殺者の正義』だな~ それがまたカッコいいのである。

 

 

ジェントリーは、スーダン大統領アブブードを、大けがをしながらも拉致した。

そして、その地から脱出の船に乗るところまでこぎつけた。

 

ところが思いがけない事態になり、中国との悶着でCIAは窮地に立たされ、今度はアブブードを殺せと命令が下った。

 

ジェントリーは上官ザックに、その命令はのめないといい、アブブードは生きたままICCに引き渡し一つの戦争を終わらせ、次の戦争を回避するのだと…

 

船も飛行機も軍隊も持たないで何ができるのかとザックに言われたが、グレイマンは正義のためにたった一人で立ち上がった。

 

あーぁ、またもや ‟目撃しだい射殺” 指令が戻ってしまった。

 

そして、ここから状況が二転三転とんでもない方向に行き、ジェントリーは味方もなく、強力な武器もなく、策略にかかって命が脅かされていく。

 

 

この作家はすごいわ。

面白過ぎるストーリー。

読者を喜ばせるツボを知っている。

 

スーダンの飛行場に着陸するはずが、管制塔から今は着陸不可能と言われ、目的地とは離れた場所に着陸させられたり、余計な事態に巻き込まれ3日間の浪費をさせられたり・・・

 

直接飛行機から暗闇の中をパラシュートで降りたり、冒険アクション満載。

 

最高だ~

 

数ページごとに事態が急変して、今度は何が起きるのかと期待が膨らむ。

 

結末に向けては、またもや怒涛の如くの展開で息もつかせず一気読み。

 

あー、面白かった。

 

この小説は9作出版しているから、まだまだ楽しみは続く。