前回、運送会社に依頼できない納品先が意外とあるという話を書いた。今回はつい10年ほど前、すなわち2010年代前半まで日本に実在した納品先の実例を挙げてみる。
1.人力でしか到達不可能な納品場所。
⇒これが一番多いケース。工場の2階・3階まで荷揚げを要求されるが、その工場は古く、昇降機設備が一切ない。ところが製造機械の構造上、原料の投入口が建屋の最上部にあることが多いので、納品業者に投入口のフロアまで原料を搬入するように指示する。そうすると、20kg入の紙袋や25kgから30kgある一斗缶を持って階段を往復しなくてはいけない。厄介なことに装置の大きさと搬入量は比例するから、工場の3階まで20kg袋を2つずつ肩に担いで工場の3階まで往復する…という過酷な作業が待っている。しかも、構内ルールで片手は常に空けておき、手摺を掴んで階段を上らなくてはいけないから1ケースずつしか持てない。当然、空調なんかないから夏は室温40℃、湿度95%…なんて環境下で1時間以上階段を昇降するのはトレーニングの域を超越している。
2.発注が直前。
⇒かつては零細企業が多かったが、2000年代に入ると大企業でも在庫を最小限しか持たなくなり、さらに省人化でベテランの発注担当者がいなくなった結果、前日の夕方になって原料が足りない!という事態が頻発。当然、原料メーカーも当日出荷などできない。やむなくかつての『御用聞き』スタイルへ戻り、地場の問屋が在庫して即納する…というケースが散見される。社内ではどうにかならないのか!と批判が巻き起こるものの、
「人を配置しても定着しないし、基幹システムの全面更新・運用コストと比較したら原料の納入単価が上がってもやむを得ない」
というのと、さらにコロナ禍以降はインフレーションが進行しているので社内調整がしやすくなったという事情が大きいようだ。
つまり、1.2共に日本の製造業がこの30年余り先送りしてきた製造部門の極端な省人化・外注化と投資抑制の結果、現場では解決できなくなった象徴である。