光がまぶしいと音が響くという症状 | kyupinの日記 気が向けば更新

光がまぶしいと音が響くという症状

「光がまぶしい」という症状は、以前より光がまぶしく感じられる時に言われる。まぶしくない環境でそう訴える時、感覚の変化が起こったことを意味している。

 

この症状は若い人はあまり言わない。40歳代以降に診られることが多い。この症状が出ると、パソコンやスマホがまぶしいため、輝度を落としたりブルーライトカットフィルターを購入したりする。一方、若い人は高い輝度のスマホ画面をあまり苦にしないことが多い。

 

若い人で光がまぶしく感じる人は、発達障害ないしそのグレーゾーンで感覚過敏を持つ人くらいだと思う。

 

光がまぶしいという所見は、若い世代の精神病、例えば統合失調症の発病時に診られることはまずない。統合失調症の人の幻覚は聴覚に多く、視覚的なものはほとんどないことも関係している。

 

視覚的幻覚を見る若い精神病状態にある人は非定型病像であることが多い。例えば、統合失調症の人が保護室に隔離されていて、「海鳥が歩いている」と言う訴えである。

 

美しい景色が見えると言う訴えもあるが、ある種の恍惚状態を呈していて、大量のドパミンが溢れ出ているような状況だと思う。同じような異常体験は幻覚を惹起する違法薬物でも見られる。

 

いずれにせよ、視覚的幻覚は統合失調症ではなくはないが典型的とは言えない。

 

40歳代以降の人でスマホや室内の照明が異常にまぶしく感じられるようになった際は、まず眼科に行くべきである。眼科で、例えば「白内障」などの診断を受けることがある。

 

白内障では初期に光がまぶしく感じられるが、次第にまぶしさに慣れてくる。もちろん白内障以外の眼科疾患も考えられる。以下の記事では白内障について触れている。

 

 

普通、光がまぶしい以外の精神症状がない時、たいていの人は眼科に受診するか、放置すると思われる。従ってこの症状だけで精神科に受診する人はいない。

 

精神科医が光がまぶしいと言う症状を聴く機会はリエゾンのことが多い。(頻度は稀)

 

過去ログでは「光がまぶしい」という症状がSSRIの離脱の際に診られたと言う記事がある。

 

 

ほとんどのケースで、急性ないし亜急性に出現した光がまぶしいと言う症状は精神疾患との関連が薄い。

 

一方、「音が響く」と言う症状はさまざまな精神疾患で診られることがあるが、必ずしも内因性疾患と深い関係があるとは言えない。現代風に言えば、発達障害や神経症の人の感覚過敏として語られることの方が多い。

 

そもそも「音が響く」と言う症状は、「幻聴」体験のスペクトラム上にあるのか怪しいものだと思う。

 

一般にヒトは眠り際に音がキンキン響くように感じるし、単に疲れているだけで音が響くように感じる。疲れると感覚は鈍くなるわけではなく、むしろ大きな音に耐えるだけのエネルギーが枯渇して音が響いて感じるのかもしれない。

 

高齢になると、大きな音が非常にストレスに感じられることがある。高齢者の近所との騒音トラブルも、「大きな音に耐えるだけのエネルギーが枯渇」しているイメージである。

 

これらは高齢者の脳動脈硬化などに由来する性格の先鋭化も関係している。性格の先鋭化とは、細かいことにうるさい人がよりうるさくなるとか、癇癪持ちの人がより些細なことで癇癪を起すなどを言う。(だからこそ近所とトラブルになる)

 

一方、精神的あるいは身体的ストレスのためにある精神疾患が発症する経過だと、その途上に「音が響く」と言う症状がみられてもおかしくない。

 

音が響くと言う所見は生理的にも起こりうるし、実際に精神疾患が重くなる過程で出現することもある。

 

つまり、音が響く症状は、非特異的所見なんだと思う。

 

このように見ていくと、同じような感覚所見の「光がまぶしい」と「音が響く」はかなり異なる症状であることがわかる。