現在の外来の高齢統合失調症の話 | kyupinの日記 気が向けば更新

現在の外来の高齢統合失調症の話

30年くらい前と現在の統合失調症の外来患者さんの精神症状の違いについて。特に高齢者の人。

 

今は統合失調症の様々な精神症状が残遺し、昔であれば長期入院治療をしていた患者さんも外来で治療していることが多くなった。

 

外来治療で対応できるようになった要因は、グループホームなどの療養環境の整備が大きい。また精神科病院やクリニックからの訪問看護やデイケアなども貢献している。

 

昔、多くの若い統合失調症の患者さんが単科精神科病院に入院していた時代は、彼らの受け皿になるような社会資源が乏しかったのも大きく関係している。

 

 

今は外来患者さんのうち相当に重い人も地域で生活している。ところが、最近気づいたことは、新規にこのタイプの患者さんが増えてはいないこと。

 

今の70~80歳代の統合失調症の外来患者さんたちは、退院後行き場がなく社会的入院だった人たちがグループホームやアパートに退院し外来患者さんになった。それ以外の人もいないわけではないが多くはなかった。

 

彼らが一巡してグループホームやアパートに退院した後、その少し下の世代は生活歴や現病歴の相違から、そういう流れになっていない。

 

少し若い世代、40歳代~50歳代の人は長期入院の経験がなく、自宅かアパートから通い、グループホームに入所した経験がない。また、その世代はグループホームに入所することを嫌うことが多い。

 

その大きな理由はグループホームはアパートでの独り住まいと異なり、プライベートの部分が損なわれることが大きい。彼らは実家かアパートに住んでいるが、しばしば家族との折り合いが悪いなどからアパートで単身生活している。

 

つまり他の人と共同で生活することに慣れていない。

 

今の患者さんは統合失調症の人に限らないが、4人部屋や2人部屋に入院することもストレスになるようで1人部屋を希望する人が多い。また入院後、皆と一緒に大浴場で入浴することを嫌う人もいる。

 

従って近い将来、統合失調症の人の精神症状の平均的な軽症化に伴い、昔風のグループホームは入所者が少なくなるか、入所者が変わっていく可能性がある。

 

 

今回のタイトルは年配のグループホームに入っている人たちの長期予後について触れようと思っていた。

 

昔は、統合失調症の人は高齢になると次第に症状が軽くなり、若い人のような劇的な悪化が少なくなると言われていた。ところが、今の統合失調症の人の平均寿命が延びてきているので、高齢ならではの問題が生じている。

 

まず、グループホームに退院する患者さんは、ずっと精神病院で生活する人より遥かに軽いレベルなわけで、そこそこ安定している人たちである。それでも全く陽性症状がないわけではなく、高齢化に伴い様々な問題が生じてくる。

 

僕は統合失調症の人でも脳による制御能力のようなものが衰えてきて、船で言えば大きく傾いたときに、それを正しい位置に揺り戻せる能力が乏しくなってきているのではと思う。

 

つまり、悪化した際に自己の脳で回復する能力がかなり衰えてきて、入院したとしても長期入院を要してしまうのである。

 

従って、統合失調症は高齢になると軽症化すると言うのは事実かもしれないが、現在、統合失調症の患者さんも平均寿命が延びてきて、昔とは異なる高齢に伴う精神病の悪化と身体状況の悪化の問題が起こってきているのである。

 

今回の話は続きがある。(統合失調症の患者さんの収容の話)

 

参考