クラーク勧告 | kyupinの日記 気が向けば更新

クラーク勧告

今回は昨日の記事と関係がある。これらのエントリは精神保健的なものなので、興味のない人は面白くないと思う。

1967年、日本政府はWHOに対し日本の地域精神衛生についての調査を要請している。1967年11月から翌2月まで、デービド・H・クラーク博士が来日し、報告書をまとめている。以下はその報告書の要旨である。(50年近く前の調査であることに注意)

精神病院
患者の生活条件が寒々としており、超満員のように思われたが、数人の患者の家庭訪問をした後になって、病院の方が患者の住み慣れた家庭の生活条件に比べて良好であった。給食は良好であるように思えたし、患者たちも身体的には健康に思えた。老人はごくわずかしかいなかった。(60歳以上は4%)

高比率の医師と適当数の正看護婦で十分整備されていた。職員と患者の関係は、温かく友好的でユーモアがあり、西欧の著しく貧弱な精神病院にみられるような距離をおいた冷たさや軽蔑は少しもないように思われた。

ここ15年間に新しく建てられた多くの精神病院は分裂病患者に利用され満床になっている。訪問した病院では、既に慢性患者が増加していく傾向にあった。5年以上在院している患者数は増加し、しかもこれらの患者は25歳から35歳の若い人であった。普通に寿命をまっとうすればこの患者はあと30年間も病院に在院する可能性がある。

日本には現在800を超える精神病院があり、そのうち80%が1945年以降に創設された。精神病院病床は、1955年には公立病院10,982床、私立病院29,254床で計49,236床。1966年には公立病院30,796床、私立病院150,940床で計181,709床である。

日本と西洋の精神病院の顕著な差は日本では老人の患者が少ないことである。精神病院のたった4%が60歳以上であるのに対し、英国では50%である。

現在のように慢性患者が累積し続け現代医療で生かされていれば、1980年から1990年代において日本の精神病院でも老人患者数の数は非常に増加するだろう。このことは遠い先の問題に見えるだろうが、何らかの対策をすぐに行わないと大変なことになるだろう。

精神薄弱を含む精神病質、精神障害の早期発見と適切なリハビリテーションを促進するための地域精神衛生計画は日本が当面する緊急の社会的、公衆衛生的課題のひとつである。

参考
県精神病院協会の運動会
日本の精神疾患の患者数
死にゆく精神病院
統合失調症の発病と再発
リスパダールコンスタとネオペリドール&フルデカシン