ロゼレムはなぜ夜間頻尿に効くのか? | kyupinの日記 気が向けば更新

ロゼレムはなぜ夜間頻尿に効くのか?

過去ログにロゼレムは夜間頻尿に効くと言う記載がある。

 

 

このリンクカードから抜粋。

 

また、高齢者の頻尿に対しロゼレムは治療的に働く。アリセプトを服用していて酷い頻尿になっている女性に対し、アリセプトを中止し、メマリー、ロゼレム、ルーランの1mgでかなり頻尿が改善した患者さんがいる。ルーランはこだわり、強迫にも効く上、少量だと副作用もほとんどないので便利である。

 

元々、高齢者でなくても夜間に何度も起きると頻尿の原因になる。寝ている時より、起きている方が尿の量が増えるからである。不眠と夜間頻尿にはニワトリと卵のように相互に関係が深い。

 

高齢者ではさまざまな理由で夜間頻尿になりやすい。これらの理由として、高齢者では眠りが浅くなること、過活動性膀胱、男性では前立腺肥大症などが挙げられる。これらは膀胱に十分な畜尿ができなくなることと関係している。

 

なぜロゼレムが夜間頻尿に有効かと言うと、まず、睡眠の質を改善することが治療的に作用する。

 

元々、メラトニン血中濃度と抗利尿ホルモンは関係が深い。高齢者は加齢に伴い血中メラトニン濃度が低下し、ひいては夜間の抗利尿ホルモンが低下している。その結果、夜間の尿産生量が増加し頻尿になる。

 

元々、ロゼレムはメラトニン以上にメラトニン的である。ロゼレムはメラトニンにブーストがかかった薬である。以下は上のエントリから抜粋。

 

ロゼレムはメラトニン受容体のアゴニストだが、厳密にはMT1アゴニスト作用と MT2アゴニスト作用に分けられる。MT1アゴニスト作用は視交叉上核神経活動の抑制や睡眠のプロモーションの効果を持ち、結果的に睡眠の質を改善し深くする。一方、MT2アゴニスト作用は、位相変動作用を持ち、後方にずれた睡眠位相を前方に移動させる(睡眠の後退などを改善)

 

このMT1およびMT2受容体だが、ロゼレムのMT1受容体への親和性はメラトニンの6倍、MT2受容体への親和性は3倍に及ぶと言われている。

 

ロゼレムのこれらの夜間頻尿への効果だが、処方したその日にはあまり効かない。次第に効果が発現するといった印象である。たいてい1週間目には多少は良いと言った感じである。また機序はよくわからないが、時間が経つと上記の夜間尿量の減少に加えて、膀胱容量の有意な増加がみられると言われている。

 

高齢者の夜間頻尿に伴う転倒による怪我、および介護者(主に妻)の介護疲れのため自宅での生活が立ち行かなくなることは近年良く見られる。

 

高齢者へのベンゾジアゼピン系の眠剤はこれらを悪化させる(特に筋弛緩作用)ため、ロゼレムに変更することで非常に良い経過になることがある。例えば、夜間数えきれないほどトイレに行っていたのが、ロゼレムに変更することで2回ほどになるなどである。2回と言うのは定義的にはまだ夜間頻尿だが、5回以上行っていた高齢者からみると大違いである。

 

ロゼレムと言う薬には謎が多い。ロゼレムは半減期が極めて短く(約1時間)、作用している時間はあまり長くない。意外に翌朝に眠さが残る人がいるし、あの短い半減期でこのような夜間頻尿の改善効果が診られるのは、何らかの複雑な作用から来ると想像する。

 

近年、高齢者にはデエビゴが処方されることが多くなったが、これは入眠作用がマイスリー並みに強いためである。しかし今なおロゼレムは有用性が高い薬だと思う。

 

参考