ロゼレム | kyupinの日記 気が向けば更新
2013-02-17 22:45:46

ロゼレム

テーマ:ロゼレム
一般名;ラメルテオン(Ramelteon)

ロゼレムは2010年7月に武田薬品から発売された、従来にはなかったタイプの傑出した不眠症治療薬である。

武田薬品は世界的にも薬品会社としては巨大企業(世界12位。売上高1兆5000億、連結営業利益2600億)であるが、精神科薬に限れば、古い抗不安薬、例えばセルシンやコンスタン(=ソラナックス)程度で、これといった目玉商品がなく、精神科病院にMRさんが訪れることはあまりなかった。

そのようなこともあり、ロゼレムが発売された際も、MRさんのプロモーションのテンションは相当に低かった。また営業の仕方もあまり上手いとは言えなかった。そのようなことや、ロゼレムは服用初期に効く印象が乏しいため、当初は売り上げが伸びなかったと想像する。

ロゼレムは従来のベンゾジアゼピン系の眠剤に比べ、本質的な睡眠の質を改善するタイプの眠剤である。薬の作用機序は、メラトニン受容体アゴニスト。過去ログにサプリメントとしての、メラトニンの記事があるので参照してほしい。

元々、不眠に関しては年齢や精神疾患により特徴がある。一般に女性の方が男性より不眠の人が若干多いが、これは男性は寝酒をする人がいることも関係がありそうである(女性もいると思うが)。

実は、アルコールは寝つきがよくなるだけで、睡眠の質を改善せず、依存性や耐性、肝臓への影響も大きいため、ベンゾジアゼピンに比べても全く優れていない。イギリスの発表する世界の悪い薬物のランキングは、アルコールの方がより上位に位置する。(イギリスは向精神薬にかなり辛口)

うつ病は教科書的には早朝覚醒が出現する。また、高齢になると睡眠時間が短縮する。

近年の若い人では、昼夜逆転状態により朝起きられないため、不登校や出社できない人がいる。これは生活習慣の変化、つまり、光源を見つめるような生活(テレビ、パソコン、テレビゲーム、携帯電話・スマートフォン)は無関係ではない。

昔は衛星放送やケーブルテレビはなく、テレビは深夜になると日本国国歌と国旗がはためく映像に変わり、1日の放映が終了していた。今は地上波以外はほとんどが24時間営業しているが、かつてはテレビでさえ、昼と夜のメリハリがあったのである。

現代社会の不眠は、生活習慣の不規則さからも来ている。つまり体内時計の乱れに由来する部分が大きい。

大昔のヒトは時計を持たなかったので、この生体リズムで自然に生活していたと思われる。一般に、光を浴びると日中のメラトニンは抑制される。夜間に明るすぎる環境にいると、大昔の人のようにメラトニンが上昇して来ない。そのために睡眠のリズムがおかしくなるのである。

普通、起きている時間が長くなると、体内に睡眠を引き起こす物質が蓄積してくる。(例えばプロスタグランジンD2など)また、夕方から深夜にかけて松果体から分泌されるメラトニンにより睡眠が引き起こされる。一般的には深夜2時頃、メラトニンはピークになると言われる。過去ログの「野茂英雄」の記事で、Xファイルに出てきた「全く眠らない人」について触れている。以下は抜粋である。

そういえば、Xファイルで、「まったく眠らない人」というテーマのドラマがある。この眠らないオッサンは普通の人より蛋白質を始め、とにかく良く食べているという内容であった。これはそういう人が実在するかどうかはともかく、おそらくソースがあるのだろうと思うし、これまでの考察から僕はもっともらしいと思った。

過去ログには麻雀のデスマッチの話が出てくるが、徹夜の後、昼間に寝るとどうしても深くは眠れず、疲れきっているわりに熟睡できない。これはサーカディアン・リズムが乱れた状況なのと、部屋が完全には暗くないことも関係している。48時間以上起きているというような限界状態では、死んだように眠れるのは良いとして、翌日はまだ気分が良いが、2~3日後ぐらいに異常な疲れが出る。なぜ翌日は良いかと言うと、ある種の断眠療法になっているからだと思う。「断眠」はうつに効くからである。

余談だが、このデスマッチに出てくる「2度死んだ先生」は、米寿(88歳)に近かったのに30時間以上のデスマッチに耐えた。おまけに、他のメンツの先生の奥さんが心配して電話してくることに対し、「最近の若いドクターは(奥さんへの)躾が悪すぎる」と苦情を言っていた。実際、その雀荘のマスターが、その死なない先生のことを「奇跡のような人」と呼んだほどである(その年齢のわりに元気すぎるという意味)。その年齢で、仕事もされていたのもある。

話を戻すが、高齢になると内因性のメラトニンが減少してくる。日中のメラトニン量は若い人の半分程度といわれる。

ロゼレムはメラトニン受容体のアゴニストだが、厳密にはMT1アゴニスト作用と MT2アゴニスト作用に分けられる。MT1アゴニスト作用は視交叉上核神経活動の抑制や睡眠のプロモーションの効果を持ち、結果的に睡眠の質を改善し深くする。一方、MT2アゴニスト作用は、位相変動作用を持ち、後方にずれた睡眠位相を前方に移動させる(睡眠の後退などを改善)

ロゼレムは8mgの剤型しかないが、MT2アゴニスト作用だけを期待するなら8mgも必要ない。4分の1か2分の1錠で十分である。また服薬の時間も夕方で良い。僕は夕方の6時~7時頃に4分の1か2分の1錠だけ服用するように薦めている。その理由の1つは必要ないこともあるが、ロゼレムは1錠80円くらいし、眠剤にしては高価だからである。無駄な量を飲む必要はない。

ロゼレムは服薬後、30分から1時間半後に血中濃度はピークに至るが、半減期は1時間くらいと極めて作用時間が短い。しかし、ロゼレムは翌朝~日中に眠いと言う感想が多いのである。これは驚くべき謎だが、そういう点を改善するためにも1錠も服用しない方法は上手い対処方である。少ない量を飲むと、その点が幾分改善される。

僕は試しに4分の1錠だけ飲んでみたが、翌日、1日中眠くて仕事に支障を来たした(というか、眠すぎるって)。この経験から、メラトニンアゴニストはまだよくわかっていない謎の作用を持ち合わせているような気がする。

ロゼレムはそれまでベンゾジアゼピン系眠剤を飲んでいる人には効果の実感が乏しいが、2週から4週後には本来の効果が現れて、中途覚醒が減ったり、起きた時の目覚めの良さを感じるようになる。僕の患者さんでは、「朝の目覚めが良い」という感想が多い。また、追加眠剤が全然必要なくなったとか、眠剤の個数を減らせるなどの好影響がある。

自分の場合、翌日にいきなり効果が出てかなり眠かったが、1日中なんだか気分が良かった。ロゼレムは急速な効果発現がないが、継続して服薬することで睡眠構成や質を改善するのである。

高齢者の特に女性では、夜間の頻尿のために不眠になる人がいる。この対処だが、まずアリセプトを飲んでいる人はこれを中止するのが良い。これはアリセプトの欠点の1つである。アリセプトをレミニールに変更すると頻尿が改善されるが、レミニールは胃腸障害が結構出るので、平凡にメマリーの方が5mgだけで劇的にBPSDを改善したりするのでコスト的にも優れている。

また、高齢者の頻尿に対しロゼレムは治療的に働く。アリセプトを服用していて酷い頻尿になっている女性に対し、アリセプトを中止し、メマリー、ロゼレム、ルーランの1mgでかなり頻尿が改善した患者さんがいる。ルーランはこだわり、強迫にも効く上、少量だと副作用もほとんどないので便利である。

ロゼレムの良い点は、ベンゾジアゼピンのように耐性、依存性や、例えばハルシオンに診られるように反跳不眠などが出ないことがある。また、ベンゾジアゼピンで禁忌ないし極めて好ましくないとされる急性狭隅角緑内障やCOPD(慢性閉塞性肺疾患)などの人にも使える点が良い。

また、従来まで使っていたベンゾジアゼピン系眠剤を減量できる可能性がある。ただし、ロゼレムは不安にはほとんど効果がないので、ロヒプノールのように日中の不安に間接的に効いているような人には、ロゼレムだけではトータルの効果が不足するであろう。

昔は一時、メラトニンは魔法の薬とか、万病に効くなどと言われていたが、サーカディアンリズムを改善することを通じて、治療的に働く精神疾患は多い。

また、一般にメラトニンは、脈拍、血圧、体温を低くする効果を持つ。これは副交感神経優位の方向に向かわせることであり、これが自然な睡眠を促す。結局、この作用が万病に効くという根拠の1つなんだと思う。

例えば、統合失調症ではメラトニン濃度とメラトニン・サーカディアンリズムが有意に減少すると言われている。その点で、統合失調症の人の眠剤にロゼレムを併用した場合、興奮や症状の揺れを抑え、抗精神病薬が効きやすいといった好影響を与える。(統合失調症の人の神経保護作用があると言われている)

このような効果は広汎性発達障害や双極性障害などさまざまな精神疾患でも同様である。なぜなら、広汎性発達障害や双極性障害の人たちは睡眠の質が悪いことが多いからである。

ロゼレムは最初は全然効いている実感がない人が多いので、「最初は全然効かないです」と説明して開始する。1ヶ月くらいすると、医師からでさえ何かしら良くなっていることに気付く。本人が気付かないままでも、いろいろ指摘すると本人から「その通りです」などと言われることが多いので、明らかに乳糖とは異なる。

ロゼレムの副作用の1つに頭痛がある(5%以内)。僕の患者さんではかなり処方しているが、未だ経験がない。これはロゼレムの血管拡張作用から来ると言われている。

ロゼレムは実によくわからない薬だが、一風変わった有用な薬であることは間違いない。

その他、ロゼレムの催奇形性は「C」になっている。向精神薬としてはそう悪くないと言える。

【C】
動物生殖試験では胎仔に催奇形性、胎仔毒性、その他の有害作用があることが証明されており、ヒトでの対照試験が実施されていないもの。あるいは、ヒト、動物ともに試験は実施されていないもの。注意が必要であるが投薬のベネフィットがリスクを上回る可能性はある(ここに分類される薬剤は、潜在的な利益が胎児への潜在的危険性よりも大きい場合にのみ使用すること)。


(今回、ロゼレムのテーマを作ったため、テトラミドのテーマを削除し、その記事は「向精神薬」のテーマに移動しています。)

参考
LED電球の種類と明るさについて
体内時計
光療法と睡眠相後退症候群


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