レキサルティ変更後の体重減少と精神症状の改善
僕の患者さんで、ジプレキサ(オランザピン)からレキサルティに変更後、体重が10㎏以上減少した女性患者が2名いる。この2名とも悪化時には幻覚妄想が生じるが狭義の統合失調症ではない人たちである。
過去ログにもあるが、ジプレキサとレキサルティは似ておらず変更が順調にいく確率はそう高くない。しかし、この変更がうまくいけばほとんど100%と言ってよいほど体重は減少する。
これはエビリファイ(アリピプラゾール)からレキサルティへの変更とは大違いである。エビリファイからレキサルティへの変更はむしろ体重が増加することの方が多い印象である。ただしごく少数だが、エビリファイよりレキサルティの方が体重減少する人もいる。
今回はこの2つについて思うことなど。
上に挙げたジプレキサからレキサルティへ変更し10㎏以上減量した人の1名は過去ログに紹介している。
「レキサルティ変更後の体重減少の軌跡(2019年1月)」を参照してほしいが、この記事では、73.4㎏から65.7㎏まで減量したとある。彼女はその後も緩やかに体重減少し現在63㎏ほどである。
彼女の精神症状、減量の特徴。
○精神面について、ジプレキサとレキサルティの効果は大差がない。(より良くなっているわけではない)
○本来、本人に体重への関心がない。
○したがってダイエットの努力もない。
○次第に体重減少のペースは落ちているが、もう少し減りそうである。
こんな風でも、いざ体重が減ると、一度着られなくなった洋服が着られるようになり喜んでいる。
もう1人の女性患者さんは、主治医の僕が積極的に変更を勧めている。その理由は、ひとめレキサルティが良さそうだったからである。
しかし、彼女は入院歴がある上、過去に外来通院中に悪化したこともあるので、変更に難色を示した。そのような理由でジプレキサからレキサルティへの変更が遅れたのである。
彼女は上の女性より半分の期間(半年未満)で10㎏以上減量している。最初に挙げた患者さんとの違いは、
○陽性症状(幻覚妄想)は全く診られないこと。(ほぼ寛解状態で変更している)
○回復時のレベルが高い。(家事は問題なくこなし、パートで仕事も可能)
○ジプレキサからレキサルティに変更後、断然体が動くようになった。
○ダイエットへの意識の高さ。
○変更前の体重がそこまで増えていなかったことも大きい。(10㎏減量して標準体重に戻った。最初の女性は10㎏減っても肥満している)。
これらから思うことだが、その抗精神病薬のスペックは重要である。ここで言うスペックとは薬理作用を指す。つまり、ダイエットせず放置していてもジプレキサからレキサルティであれば、それだけで体重減少するスペックである。
先日の記事にあるが、ダイエットは頑張る要素があるので、それができるほどの精神面の改善がないと難しい。つまり、精神科的に健康な部分が大きくなることである。2番目の女性は精神面も改善していたため、相乗効果でダイエットが進んだ面がある。
なお、エビリファイからレキサルティに変更した際になぜ体重が増えることが多いかだが、レキサルティはH1親和性がリスペリドンと同程度あることなどが挙げられる。
もちろん、H1親和性が抗精神病作用に貢献することがあるので、レキサルティの欠点とまでは言えない。レキサルティは激太りまでない上、受容体の体重増加の影響力の個人差もあるので、レキサルティを避けるほどの欠点ではないと思う。
単にレセプター的な議論だけで済まない点は、「体が動くようになる」などの精神症状の改善(陰性症状の改善)が、体重減少に相乗的に作用することだと思われる。
参考