レキサルティ変更後の体重減少の軌跡 | kyupinの日記 気が向けば更新

レキサルティ変更後の体重減少の軌跡

今回は前回の記事の続きである。ジプレキサ5㎎に変更後、3年間くらい特に変化なく過ごしていた。入院するほどの悪化もなく、むしろほとんど症状の波のない患者さんだったと思う。

 

しかし、彼女にとってジプレキサは1つだけ欠点があった。次第に体重が増えていったのである。引き継ぎ時に65㎏だった体重が73㎏までになっていた。(+8㎏)。

 

これはジプレキサによる肥満だが、過去ログでは統合失調症ではない人では特に体重増加が生じやすいと言う記事がある。ただし、本人は体重増加について全く気にしていなかった。これは精神面が良くなっているからそれでも良いといった感覚ではなく、元々肥満していたし、そう大きな問題でもないと思っていたようである。家族の状況を聴くと、肥満しているのは彼女だけらしい。

 

彼女は、ずっと処方変更してきてやっとジプレキサで落ち着いているわけで、たいていの抗精神病薬変更は失敗に終わりそうであった。

 

ある日、体重増加のためと考えられる膝の痛みが生じ整形外科に通うようになった。これは体重増加の副作用から起こったもので、なんとかジプレキサから他の肥満がない抗精神病薬に変更すべき事件である。

 

当時、レキサルティ発売後、処方人数が増えていた頃で、ジプレキサからレキサルティに変更できるなら、体重増加はほぼ解決すると思われた。彼女の場合、エビリファイはいかにも失敗しそうだが、レキサルティは可能性があると思ったのである。(エビリファイはアカシジアが強く出て続きそうにない。エビリファイは下半身にEPSの副作用が出やすい)

 

当初、ジプレキサ5㎎をそのままにして平凡にレキサルティ1㎎を追加してみた(上乗せ)。なぜ0.5㎎ではないかというと、彼女に限れば1㎎の方が変薬が無難に思われたからである。(このレキサルティの処方感覚は重要。ただし、しばらく上乗せの手法なら同じ結果)。

 

彼女によるとレキサルティ1㎎追加2日目から、身体の緊張感が取れてなんとなく楽になったと言う。(この2日目に変化が起こったことも重要)。これは好感触である。

 

1週間目には断片的な幻聴がいくらか減っていると言い、これはジプレキサから切り替えられるのではないかと思った。ジプレキサはそのまま5㎎処方し続け1か月目に2.5㎎に減量している。その際に、レキサルティは1.5㎎に増量。振戦などのEPSは特に悪化がなく、見かけ上、処方前と変化がない。

 

そして処方1か月半目に、レキサルティ2㎎としジプレキサを中止している。ジプレキサ5㎎からレキサルティ2㎎は力価的に釣り合わないと思うかもしれないが、元々レキサルティは強力な薬ではないので、感覚的にはこのくらいのバランスである。これはエビリファイLAIのいかにも大雑把な用量もそんな風になっている。パーシャルに効く薬は力価表より用量を増やした方が良いケースも多い。エビリファイとかレキサルティはいわばスポンジみたいなものだからである。(意味不明)

レキサルティ2㎎以後の体重の状況。(前は73.4㎏)

 

1か月目(ジプレキサ中止後)

69.4㎏(-4㎏)

 

2か月半目

67.9㎏(-5.5㎏)

 

4か月半目

66.9㎏(-6.5kg

 

6か月半目

65.7kg-7.7kg

 

彼女はジプレキサからレキサルティへ変更後半年で、8㎏近い減量を達成している(本人は何も努力はしていない。ダイエットの努力をしていないと言う意味)。また今も体重が減り続けているのである。

 

現在、体重はジプレキサ処方前に戻っただけだが、当時と精神症状が段違いに改善しているため、同じように比較的できない。それは、あのような精神症状では体重は増えようがないからである。

 

彼女にとってレキサルティはジプレキサとほぼ同じ改善状況であり、同じパフォーマンスであればレキサルティの方が遥かに良い。(レキサルティの方がシンプルかつ軽い薬であるため)

 

一般的には、ジプレキサとレキサルティはあまりにもタイプが異なるため、順調に問題なく変薬できる人は多くはないと思われる。

 

なお、ジプレキサからレキサルティ、リスパダールからレキサルティは体重減少することがほとんどであるが、エビリファイ(アリピプラゾール)からレキサルティだといくらか体重が増える印象である(激増はない。変化がないか1~2㎏の体重増加)。

 

(おわり)

 

参考

統合失調症の患者さんの体重が増加する意味について

体重の減量のテクニック