妄想性障害の人に統合失調症らしい表情がみられないこと | kyupinの日記 気が向けば更新

妄想性障害の人に統合失調症らしい表情がみられないこと

過去ログで、妄想性障害と統合失調症の相違についていくつか記事をアップしている。今回は妄想性障害の患者に、「これは統合失調症だ!」と思うような表情がみられない話。

一般に、妄想性障害の人は病識が完全に欠如しており、もちろんその妄想も訂正不能である。

これはその訂正不能さが「多い」とか「ほとんどである」といったレベルではなく、完全に欠如している。それでもなお、抗精神病薬を処方することで、それらの妄想を言わなくなるのは驚異だと思う。いつもその変化に驚く。

妄想性障害には、ジプレキサが非常に有効だが、もちろんセレネースやリスパダールも有効である。全く病識がないため外来患者だと、本人が服薬しないため、家族がこっそり服薬させていることも稀にある。この際、その利便性からセレネース液が選ばれることが多い。少量でも確実に効果があるし、このタイプの患者にはそのために副作用が出ることも少ない。

家族が到底服薬させられない患者さんでは、持続性抗精神病薬が使えないこともないが、本人が病院まで来ない場合、こちらから出かけないといけない(往診)。近年は、精神科医が毎回、往診するのは難しくなっているので、稀な対処法だと思う。

妄想性障害の人には、それらしい統合失調症っぽさがない。それはいつも日常生活でいろいろなことができていることも関係しているのかもしれないが、それを考慮しても、統合失調症っぽくなさすぎる。

妄想性障害では、たとえ治療を続けていたとしても、表情が自然なのは重要なことだと思われる。つまり妄想性障害には、統合失調症のような独特な表情の硬さ、鈍さ、プレコックス感がない。

プレコックス感には薬物療法の影響があるのではないか?と語られることがあるが、上の所見を考慮すると、重要な点にまで関与してないように見える。

おそらくだが、統合失調症に比べ、妄想性障害は脳内の「障害の座」がまだ限局しているのであろう。


そういう風に考えると、なんとなく辻褄が合う。

参考
妄想性障害の周囲に信じさせる力
想像力の低下と妄想性障害
嫉妬妄想の話
統合失調症っぽくない妄想