ワイパックスやレキソタンとSSRI | kyupinの日記 気が向けば更新

ワイパックスやレキソタンとSSRI

時々、ワイパックスやレキソタンなど(ソラナックスやデパスも同様)を服用している人から質問が来る。その内容だが、

ベンゾジアゼピン系の薬はインターネットなどを見ると評判が悪いですが、SSRIにきりかえた方が良いでしょうか?

概ね、そのような内容のものが多い。

一応、不安障害にはベンゾジアゼピンは推奨されておらず、ほとんどの不安障害の第一選択はSSRIである。ベンゾジアゼピンは、救急の対処法としては認められているものもある(つまり連用を前提としていない)。

以下は最新のモーズレイの処方ガイドラインによる推奨薬である。(12版)

全般性不安障害(第一選択)
SSRI
リフレックス(レメロン)
ベンラファキシン
サインバルタ
リリカ

パニック障害(第一選択) 
SSRI

PTSD(第一選択)

SSRI

強迫性障害(第一選択)
SSRI
アナフラニール

社会不安障害(第一選択)
SSRI
リリカ
ガバペン

長期に使わないという条件(せいぜい2~4週間)で、緊急時のベンゾジアゼピンの処方に言及している疾患は、

全般性不安障害
パニック障害
社会不安障害


の3つであり、PTSDと強迫性障害では緊急時でさえ推奨されていない。なお、NICEはパニック障害でのベンゾジアゼピンは推奨していない。

PTSDと強迫性障害で、ベンゾジアゼピンが推奨されないのは、本来、この2つでは救急受診が必要な状況にならないためと記載されている。

一方、社会不安障害では、ベンゾジアゼピンの評価はいくらかトーンが異なり、救急では「効果が速く頓服として有用」とされている。

このようなことから、日本人のSSRIの忍容性の低さを考慮すると、ベンゾジアゼピンをたまに使うくらいであれば、SSRIを毎日服用するよりは良いと言う風に自分は考えている。

そのもっとも大きな理由は、SSRIはハードに切り込むタイプの薬だが、ベンゾジアゼピンはそうではないからである。

従って、元々ジェイゾロフトやパキシルを服用し続けた人が転院してきて、ワイパックスなどの抗不安薬に切りかえ、安定している患者さんが何人もいる。だいたい、ジェイゾロフトなどを処方されている人はソラナックスやデパスを併用されている人の方が遥かに多い。流れ的には、まずSSRIを整理しその後、抗不安薬を漸減した処方である。なぜSSRIに抗不安薬が併用されているかと言うと、最初にベンゾジアゼピンから治療を始められたからだと思う。

つまり日本人であれば、1つだけ残すならSSRIよりベンゾジアゼピンの方が、自然に近い生活ができるという臨床感覚から来る。

例えばこのような処方、

ジェイゾロフト 50㎎
ソラナックス  2.4㎎


くらいで転院した来た人は、今はワイパックスをたまに1㎎だけ服薬している。その人の話によると、ワイパックスを飲むのは、2週間に1~2回なんだそうだ。したがって病院には最近は滅多に来ない。

このようなSSRIの処方だが、パキシルよりジェイゾロフトをベースに処方されている人の方が断然、薬を整理しやすい。ジェイゾロフトはパキシルより扱いやすい印象である。

ここで、よくあるQ&Aに答えておくが、たまにしかワイパックスやレキソタンなどの抗不安薬を飲まない人が、評判が悪いからと言って、わざわざSSRIに切り替えるのはナンセンスである。(日本人的には)

ただし、どんどん抗不安薬が増えてしまう人は、SSRIなど他の薬に切り替えるしかないし、その方が望ましいと考えられる。

もしSSRIが服用できないほどに忍容性の低い人は、他の薬(例えば抗てんかん薬)で良いことがある(過去ログも参照)。

参考
精神科での処方変更の話
向精神薬のスティグマと離脱症状について
ペスト