思考がまとまらないこと | kyupinの日記 気が向けば更新

思考がまとまらないこと

統合失調症の古い患者には喋ることができるのに、全く会話が成立しない人たちがいる。これは断片的には答えているように見えるが、なぜそのように答えたのか意図が不明で、しかもそれが全てのやりとりでそうなのである。

したがって、今、本人が気分が良いのか不愉快なのか、あるいは、昨日よく眠れたかどうかすら不明である。

日本語のわからない外国人であれば会話しているように見えると思う。(会話が成立していると勘違いする)

ある時、ある男性患者が薬を吐き出した。なぜ吐き出したかと聴くと、即座に、

歯磨き粉がなかった。

と答えた。(苦かったというなら話は分かるが。また歯ブラシがなかったという答えなら、かなり苦しいが意味が通じないでもない。しかし、「歯磨き粉がなかった」は意味不明)

これだけだと、偶然そう答えただけと思うかもしれないが、全ての質問でそうなのである。このような状態を精神科では、

Zerfahrenheit

と呼ぶ。(重い統合失調症の主要な所見の1つ)

激しい幻聴のある強迫神経症 」という過去ログの最後の部分に以下のような記事がある。

このタイプの人は強迫や一時的な幻覚(特に幻視に特徴付けられる)があったとしても、長い時間を経て荒廃状態に至らない。これを我々精神科医は、

幻覚妄想があっても、「Zerfahrenheitがない」などと言う(本当か?)

ドイツ語のZerfahrenheitは、英語ではincoherence of thoughtのことである。(滅裂思考)


参考
激しい幻聴のある強迫神経症
保護室で便だらけになる人
どくとるマンボウ医局記の「便だらけになる女性」
アンリ・エーの精神医学マニュエル