障害者雇用率制度 | kyupinの日記 気が向けば更新

障害者雇用率制度

国は身体及び、知的障害者の雇用を促進するため、「障害者雇用率制度」という制度を設けている。

これは、事業主等に障害者雇用率を達成するように義務付けるもので、民間企業や国及び地方公共団体にそれぞれ具体的数字(%)を挙げ、目標としている。

これは従来、民間企業は1.8%以上であったが、平成25年4月に改定され、現在は2.0%以上とされている(常用労働者数が200名を超える大企業を対象とする)。公的機関では目標値が少し高くなっている。

現行の障害者雇用率
(一般の民間企業)
民間企業
法定雇用率2.0%

特殊法人等
法定雇用率2.3%

(国、地方公共団体)
国及び地方公共団体
法定雇用率2.3%

都道府県等の教育委員会
法定雇用率2.2%


この雇用目標を達成できない企業はペナルティが与えられ、1名不足に対し、月額5万円(納付金)を納めなくてはならない。また、雇用目標以上を達成している企業には報奨金(調整金)が支給され、その額は超過1名に対し月額27000円である。また、多くの障害者を雇用している中小企業雇用主には、月額21000円が支給されている。

ここで言う大企業に満たない「中小企業」とは、常用労働者数が200名以下の企業を言うが、この数が平成27年4月以降には100名以下となるようである。

この制度には、精神障害者は入っていないのでは?と思うかもしれないが、一応、

精神障害者については、雇用義務の対象ではないが、各企業の実雇用率の算定時には障害者数に算入することができる。

とアナウンスされているので、精神障害者もこの制度による雇用対象になる。

何を持って障害者とみなされるかと言うと、障害者手帳である。身体障害者では、手帳の等級が1級~7級まで区分されており、一般に1~6級までが障害者雇用率の対象となり、7級の障害を1つしか持たない人は算定対象とならない。(7級を2つ以上持っている人は対象となる)

障害者雇用率には、「重度障害者」という重い障害を持つケースも想定している。これは、1級、2級及び3級に該当する障害を2つ以上重複して持つ人を言う。この場合、1名の障害者でも雇用率では2名としてカウントできる。

その他、短時間労働者の場合、2名の雇用を1名とカウントする。ただし、重度障害者の場合は短時間労働者でも1名とされるらしい。

いわゆる知的障害者(知的発達障害者)では、一般には療育手帳により判断されるが、児童相談所、知的障害者更生相談所、精神保健福祉センター、精神保健指定医による判定書や地域障害者職業センターの判定書でも良い。手帳の等級は、A(重度)、B1(中度)、B2(軽度)に区分されていることが多い。

知的障害における重度障害者とは、療育手帳Aと地域障害者職業センターで重度知的障害者と判定された人である。

精神障害者の場合、精神福祉手帳の等級(1~3級)が根拠となる。逆に言えば、精神障害者では、精神障害者保健福祉手帳を所持していなければ障害者雇用率の算定対象とはならない。また、てんかんはこの制度上では精神障害に扱われている。(つまり対象となる)

なお、精神障害者については重度障害の取り扱いそのものがない。

これらの障害者雇用率制度の達成率についてだが、平成24年(この年は1.8%)では、

雇用障害者数は 38万2,363.5人と前年より4.4%(16,164.5人)増加。また、実雇用率は 1.69%(前年比0.04ポイント上昇)。→いずれも過去最高を更新

法定雇用率達成企業の割合は 46.8%(前年比1.5ポイント上昇)


と達成率は民間企業でも半数近い。これを低いと見るか、長期にわたる不景気下、頑張っている方だと見るかは微妙と言うか判断がわかれるような気がする。

その理由だが、大企業では長いデフレのため大規模なリストラを行ってきたからである。健康なまだ働ける人をリストラしているのに、国の施政とは言え、相対的に働けない人を会社に残している面はある。(つまり、公平を目指すことがかえって不公平ではないか?という議論)

しかし、この制度はパーセントなので、企業の常用雇用数が減少すれば、相対的に目標とする障害者雇用数が下がる。(リストラすればするほど、目標達成が比較的易しくなると言う皮肉)

公的な機関では(法的雇用率2.1%、都道府県などの教育委員会は2.0%)、

国:雇用障害者数 7105人、実雇用率 2.31%
都道府県:雇用障害者数 7882人、実雇用率 2.43%
市 町 村:雇用障害者数 23730.5人、実雇用率 2.25%
教育委員会:雇用障害者数 12677.5人、実雇用率 1.88%


雇用障害者数及び実雇用率のいずれも前年を上回っている。

独立行政法人など(同2.1%)
雇用障害者数 7,647人、実雇用率 2.13%

となっている。

今回、このようなエントリをアップしたのはあるきっかけがある。過去ログの「双極2型の激鬱とECT」に出てくる人と診察時に話していたところ、「この制度のために会社がとても助かっている」と言う話が出てきたからである。

それはそうだと思う。彼は、元々いたハードな部署は無理としても、ほかの部署で十分に働けているので、会社にとって馴染みがない障害者を雇用するよりは遥かに良いといえる。雇用の苦労やコストが彼のために減少しているのは間違いないからである。

参考
深刻な不景気とdepression
精神症状と株価暴落が連動している人