アナフラニール点滴マニュアル
アナフラニールは現在、唯一の点滴可能な抗うつ剤である。
アナフラニールは点滴のアンプルだけでなく錠剤があるが、普通、内服の錠剤はともかく、点滴はそれほど処方されていない。その理由だが、点滴なので手がかかるからである(看護師さんに)。
また、アナフラニールの点滴はなぜかあまり効かないと思われていることもある。
種々の抗うつ剤を服薬しているのに、極端に悪化しているうつ状態を持ち上げる方法は、ECT以外ではアナフラニールの点滴が有望である。逆に言えば、アナフラニール点滴ですら浮上しないうつ状態はECTも考慮すべきだ。過去ログでは、ラミクタールの追加も良いと記載している。
アナフラニールの点滴は、初回は半アンプルか3分の1アンプルを5%ブドウ糖か生食250mlで点滴する方法が無難である。これを最初の頃は1時間半から2時間以上かけて実施する。5%ブドウ糖と生食の選択だが、摂食障害の患者さんでブドウ糖に過剰反応し、ヤンヤン言う人は生食を勧める。
施行する前に心電図を取り、QT延長があるかどうかを調べておく。ごく稀に先天性のQT延長症候群の人がいるからである。先天性QT延長症候群の人にアナフラニールの点滴を実施した場合、3環系抗うつ剤はQT延長を来たしうる薬物なので、心停止もありうる。
山のように抗うつ剤を服薬している人では、いくらかQTが長いと感じる人がいるが、危険域の人は極めて稀である。
アナフラニールの点滴がなぜ効くかというと、点滴の場合、門脈を通過せず直接脳に至ることが大きい。錠剤とのパワーの差を考えるに、そういう理由しか思いつかない。ただ、脳に行く前に心臓を通過するのである。
抗うつ剤を長期に服薬しているが、アナフラニールの点滴だけはしたことがない、という患者さんが意外に多い。こういう人はいくら患っていても、難治性とは言わない。なぜなら、あらゆる手を尽くしてはいないからである。(そういう人は普通、ECTもしていないことが多い)。
精神科、あるいは心療内科のクリニックで、小さい規模の場合、看護師さんすらいない場合も多く、このような医療機関ではアナフラニールの点滴は難しい。心電図すら取れない場合もある。またアナフラニールの点滴に限らず、リーマスやデパケンの血中濃度も測定できないクリニックもある。これはクリニックには制約があり、病院とは治療のできる範囲に相違があることを患者さんも理解しておくべきだと思う。
何らかの抗うつ剤を服薬している人でさえ、1回目のアナフラニール点滴中に、嘔気を訴えたり、あるいは気分不良、体の一部の熱感など種々の違和感が生じることがある。これはその症状の程度を見て、どう処置するか決める方が良い。本人の不快感が強ければその日は途中で中止してもかまわないと思う。
不思議なことに、実施中に嘔気などを生じた人でさえ、家に帰った後に少し気分が良かったと言う感想は稀ではない。
アナフラニールは入院中は毎日点滴可能だが、外来では毎日来院して実施するのはやや難しいので隔日くらいで実施する。
嘔気などの自律神経症状だが、デプロメールなどと同じく継続してるうちに徐々に弱まるか消失する。初回0.5アンプル実施し嘔気が強かった場合、2回目は4分の1アンプル程度を点滴する。そのくらい薬に弱い人は4分の1アンプルでも嘘のように効く。ジェイゾロフト100mgより遥かに効いたという人もいるほどで、つまりは薬効の方向性が異なるからであろう。
当初4分の1ほどしか点滴できなかった人でも時間が経つと、0.5アンプル程度は点滴可能である。なぜ0.5アンプルから増やさないかというと、その量で十分効いていることが大きい。(薬に弱い人の場合)
長く治療してる人で、あらゆる抗うつ剤を服薬していた人では、最初0.5A点滴を実施しても、これといった初期効果がなく、数日続けても効果も副作用もない人は少し量を増やす方針で臨む。
アナフラニールの初期効果とは実施した日に「気分が楽になった」とか「体が楽になった」とかそのようなプラスの実感である。このタイプの初期効果は、抗うつ剤、気分安定化薬系では、ラミクタールとブプロピオンくらいにしか見られない。アナフラニールの錠剤ではもちろん生じない。その他では、リタリンやデパスにも同じような初期効果が見られる。
アナフラニールで気分が持ち上がり、安定した後、アナフラニールの錠剤で治療すべきかというとそうでもない。アナフラニールの錠剤とアナフラニールの点滴は別な薬といって良いほどの差があるからである。
またこれは重要なことだが、なかなか持ち上がらないうつ病は、浮上するまでが大変なわけで、良い状態を維持するのは、浮上させるより遥かに簡単である。
その視点では、サッカーに似ている。サッカーは1点取るまでが大変で、1点を守ことは遥かにやさしい。弱小チームがジャイアントキリングを起こすのはこれが大きな理由である。
過去ログで、「先生、なんか盛ったでしょ?」というエントリがある。彼はアナフラニールの点滴を開始後「3日目に突然、霧が晴れたように実感が良くなった」が、このような不連続な浮上はそう珍しくない。
最近も、サインバルタ60mg、ジェイゾロフト100mg、パキシル20mgを投与されており、全然良くなっていない患者さんが初診した。正直、これは無能な医師のする処方である。1年以上悪くて、薬を変更せず放置しているのが信じられない。彼はアナフラニールの点滴で目が醒めるような鮮やかさで回復した。職場復帰もすぐにできそうである。彼は今はアモキサンをメインに治療している。
「先生、なんか盛ったでしょ?」の過去ログでは、アナフラニールの点滴後、アナフラニールの錠剤で治療したとは記載していない。アンプリットやアモキサンで治療していると書いているが、今はなぜかトフラニール100mgになっており経過も良い。トフラニールはこれといった特徴がないが、優れた古典的3環系抗うつ剤である。
過去ログで、「アナフラニールの効かないような精神科医はまだ未熟なので、クリニックを開業しようなんて思わないでほしい」という過激な記載がある。
参考
QT時間延長
先生、なんか盛ったでしょ?
アナフラニールの点滴と器質性幻聴
アナフラニールは点滴のアンプルだけでなく錠剤があるが、普通、内服の錠剤はともかく、点滴はそれほど処方されていない。その理由だが、点滴なので手がかかるからである(看護師さんに)。
また、アナフラニールの点滴はなぜかあまり効かないと思われていることもある。
種々の抗うつ剤を服薬しているのに、極端に悪化しているうつ状態を持ち上げる方法は、ECT以外ではアナフラニールの点滴が有望である。逆に言えば、アナフラニール点滴ですら浮上しないうつ状態はECTも考慮すべきだ。過去ログでは、ラミクタールの追加も良いと記載している。
アナフラニールの点滴は、初回は半アンプルか3分の1アンプルを5%ブドウ糖か生食250mlで点滴する方法が無難である。これを最初の頃は1時間半から2時間以上かけて実施する。5%ブドウ糖と生食の選択だが、摂食障害の患者さんでブドウ糖に過剰反応し、ヤンヤン言う人は生食を勧める。
施行する前に心電図を取り、QT延長があるかどうかを調べておく。ごく稀に先天性のQT延長症候群の人がいるからである。先天性QT延長症候群の人にアナフラニールの点滴を実施した場合、3環系抗うつ剤はQT延長を来たしうる薬物なので、心停止もありうる。
山のように抗うつ剤を服薬している人では、いくらかQTが長いと感じる人がいるが、危険域の人は極めて稀である。
アナフラニールの点滴がなぜ効くかというと、点滴の場合、門脈を通過せず直接脳に至ることが大きい。錠剤とのパワーの差を考えるに、そういう理由しか思いつかない。ただ、脳に行く前に心臓を通過するのである。
抗うつ剤を長期に服薬しているが、アナフラニールの点滴だけはしたことがない、という患者さんが意外に多い。こういう人はいくら患っていても、難治性とは言わない。なぜなら、あらゆる手を尽くしてはいないからである。(そういう人は普通、ECTもしていないことが多い)。
精神科、あるいは心療内科のクリニックで、小さい規模の場合、看護師さんすらいない場合も多く、このような医療機関ではアナフラニールの点滴は難しい。心電図すら取れない場合もある。またアナフラニールの点滴に限らず、リーマスやデパケンの血中濃度も測定できないクリニックもある。これはクリニックには制約があり、病院とは治療のできる範囲に相違があることを患者さんも理解しておくべきだと思う。
何らかの抗うつ剤を服薬している人でさえ、1回目のアナフラニール点滴中に、嘔気を訴えたり、あるいは気分不良、体の一部の熱感など種々の違和感が生じることがある。これはその症状の程度を見て、どう処置するか決める方が良い。本人の不快感が強ければその日は途中で中止してもかまわないと思う。
不思議なことに、実施中に嘔気などを生じた人でさえ、家に帰った後に少し気分が良かったと言う感想は稀ではない。
アナフラニールは入院中は毎日点滴可能だが、外来では毎日来院して実施するのはやや難しいので隔日くらいで実施する。
嘔気などの自律神経症状だが、デプロメールなどと同じく継続してるうちに徐々に弱まるか消失する。初回0.5アンプル実施し嘔気が強かった場合、2回目は4分の1アンプル程度を点滴する。そのくらい薬に弱い人は4分の1アンプルでも嘘のように効く。ジェイゾロフト100mgより遥かに効いたという人もいるほどで、つまりは薬効の方向性が異なるからであろう。
当初4分の1ほどしか点滴できなかった人でも時間が経つと、0.5アンプル程度は点滴可能である。なぜ0.5アンプルから増やさないかというと、その量で十分効いていることが大きい。(薬に弱い人の場合)
長く治療してる人で、あらゆる抗うつ剤を服薬していた人では、最初0.5A点滴を実施しても、これといった初期効果がなく、数日続けても効果も副作用もない人は少し量を増やす方針で臨む。
アナフラニールの初期効果とは実施した日に「気分が楽になった」とか「体が楽になった」とかそのようなプラスの実感である。このタイプの初期効果は、抗うつ剤、気分安定化薬系では、ラミクタールとブプロピオンくらいにしか見られない。アナフラニールの錠剤ではもちろん生じない。その他では、リタリンやデパスにも同じような初期効果が見られる。
アナフラニールで気分が持ち上がり、安定した後、アナフラニールの錠剤で治療すべきかというとそうでもない。アナフラニールの錠剤とアナフラニールの点滴は別な薬といって良いほどの差があるからである。
またこれは重要なことだが、なかなか持ち上がらないうつ病は、浮上するまでが大変なわけで、良い状態を維持するのは、浮上させるより遥かに簡単である。
その視点では、サッカーに似ている。サッカーは1点取るまでが大変で、1点を守ことは遥かにやさしい。弱小チームがジャイアントキリングを起こすのはこれが大きな理由である。
過去ログで、「先生、なんか盛ったでしょ?」というエントリがある。彼はアナフラニールの点滴を開始後「3日目に突然、霧が晴れたように実感が良くなった」が、このような不連続な浮上はそう珍しくない。
最近も、サインバルタ60mg、ジェイゾロフト100mg、パキシル20mgを投与されており、全然良くなっていない患者さんが初診した。正直、これは無能な医師のする処方である。1年以上悪くて、薬を変更せず放置しているのが信じられない。彼はアナフラニールの点滴で目が醒めるような鮮やかさで回復した。職場復帰もすぐにできそうである。彼は今はアモキサンをメインに治療している。
「先生、なんか盛ったでしょ?」の過去ログでは、アナフラニールの点滴後、アナフラニールの錠剤で治療したとは記載していない。アンプリットやアモキサンで治療していると書いているが、今はなぜかトフラニール100mgになっており経過も良い。トフラニールはこれといった特徴がないが、優れた古典的3環系抗うつ剤である。
過去ログで、「アナフラニールの効かないような精神科医はまだ未熟なので、クリニックを開業しようなんて思わないでほしい」という過激な記載がある。
参考
QT時間延長
先生、なんか盛ったでしょ?
アナフラニールの点滴と器質性幻聴